ブラック指揮官は痛みを求めている 作:ブラック指揮官
私は痛みを求めている。
昔、まだ一兵卒だったときの話。私はとある戦場で、敵の鉄血人形に撃ち抜かれて瀕死に陥った。すぐさま救護班に拾われて治療を受けたが、出血がひどかったことに加えて、十二箇所の弾痕にはさすがの戦場の天使も匙を投げた。
だが、捨てる者が居れば、死にゆく者を拾う稀有な神もいた。いや、神なんて大層なものではない。あれは狂った科学者だ。どうせ散る命ならば実験に付き合えと、死に体の私を拾った科学者は、好き勝手に私の身体を弄った。「エッチング理論」と「烙印システム」を人間にも適用できるのか、という実験だとは後で聞いた話だ。
結果は言うまでもない。私が今生きていることが、全てを物語っている。
しかし、狂った科学者は厄介なものと私をエッチング処理したようだった。それが、戦術人形たちに着用される「防弾ベスト」である。
そもそも「エッチング理論」とは、物質にある特殊な「エッチング処理」を施すと物質同士が「場」によって特殊な繋がりを持つことができるという理論のことだ。
そして「烙印システム」とは本来、戦術人形と銃火器などの武器をエッチングして繋げることにより人間や従来の戦術人形を遥かに超える戦闘力が付与させるためのものだ。更に、戦術人形は出荷時に「烙印システム」を通して、特定の武器(銃など)とペアになって独立した特殊な関係を構築する。このシステムの最も顕著な特徴は、ペアとなるそれぞれの武器の特色によって戦術人形の素体が自動で決定される点にある。その武器に関する文献及びカタログデータの数値を元に、戦術人形はその武器に最適と思われる造形や性格が決定づけられる。そういうモノである。
つまり、本来であれば戦術人形でない私に対して「エッチング処理」を行い「烙印システム」を適用したところで、何も起きない。「烙印システム」が機能するのは戦術人形の出荷時であり、組み立ての段階での処理で適用される。既に組み上がっている人間に対して、効果が発揮されないのは当然なのだ。
だが、あの狂った科学者はやってしまった。この私の肉体を解体(バラ)して大半を生体部品と入れ替えることで「エッチング処理」と「烙印システム」を私に適用させてしまった。
ところで、「防弾ベスト」の特徴とは何だと思う?
私はその耐久力にあると考えている。つまり壁や鎧としての役割である。ゲーム風に言えばメインタンクだ。攻撃を率先して自ら引き受け、その全てを受けきることが必要になる。どんなことにも壊れず、どんなことにも耐えうるだけの「忍ぶ」力が必要であると。
さて、思い出してほしい。「烙印システム」の最もたる特徴は、その武器に関する文献及びカタログデータの数値を元に、戦術人形はその武器に「最適」と思われる「造形」や「性格」が決定づけられる
あっ、と察した者は大嫌いだ。だが、それもイイとだけ言っておく。
「というわけで、9A-91くん。今日も日課の貧乏ラン100周に出向くとしようか。もちろん、快速修復契約など使わないし、そもそも修復など以ての外だ。それが必要になったら回収分解してくれて構わない」
作戦司令部の中、私の宣言に「またか」とあきらめたような、うんざりとしたような侮蔑と軽蔑の視線が私の身体中に突き刺さる。そう、針の筵のような精神にジワジワと焦がす様な痛み。これこそが、私の求めていたものである。むしろもっと向けてほしい! ウェルカムペイン!
「はい。指揮官の勇姿、この9A-91がしっかりと見届けさせていただきます!」
しかし、9A-91くんはそのキラキラと期待するような視線をやめたまえ。私の求めている視線はそうではない。蔑んで、見下ろして、侮蔑するような、私自身を貶める様なモノなのだ。だから、そのヒーローを見る様な視線はやめたまえ。むず痒いし私はそんな目を向けられる人間ではないと自覚しているのだから!
「うむ。いつも一人で攻撃させてすまない。しかし、私が前に居る限り、君たちには傷一つ付けさせはしない。大船に乗ったつもりでいたまえ」
「指揮官……!」
自分の両手で頬を包んで「にへら」と綻ぶ彼女の顔は、見ているとこちらも心が落ち着いてくる不思議な力がある。今の私には本物の苦痛でしかない癒しというものが、本来の意味で心に染み込むようだ。
「えーっと、指揮官さま?」
困惑気味の声、責める様な視線。淑女らしい落ち着きながらも高いソプラノボイスは、守銭奴のカリーナくんのものだった。
「おお、カリーナくん。これから9A-91くんの訓練のためにも貧乏ランに同伴するよ。留守の番はよろしく頼むよ」
「はい、それはお任せください! ……ではありませんわ! 何度も言わせないでください! 指揮官さまには、まだやってもらわなければいけない書類が山になって……あれ?」
私の後ろ、執務机を見たカリーナくんの目が点になる。はて、何かおかしなことでもあっただろうか、と首を傾げていると。
「あのー、指揮官さま? 報告書や書類はどちらに?」
なるほど。普段なら執務机にある書類がないことに、彼女は驚いていたらしい。ならば話は早いと、私は執務机の椅子の上に置いていたリュックサックを手に取った。
「あぁ、それなら心配いらないとも。全てこの中に入っている! なに、貧乏ランのついでだ。書類仕事をしながらでも問題ないだろう?」
「問題大ありですわ!? 紛失、盗難、破損、そんな危険を伴って、ながら作業なんてしないでください!」
「はっはっは! それは今更だカリーナくん。貧乏ランの時はいつも書類仕事片手にやっていたよ」
なぁ、と私がこの部屋に居た戦術人形……スコーピオン、スプリングフィールド、ステン、M4A1に視線を向けると流すように逸らされた。なるほど、放置プレイとはなかなかレベルの高いことを。あぁまずい、背中からゾクゾクと快感が奔ってきてしまう。自制しなければ醜態をさらしてしまいそうだ!
しかし、9A-91は相変わらず、尊敬の眼差しをまっすぐ私に向けて忠犬のごとく何度も頷いている。それを見て、私の頭は即座に冷やされた。そうだ、ここで賢者になるわけにはいかない。まだ貧乏ラン100周という最高のステージが待っているのだから――!
「あたしは反対したんだけどさ。指揮官がどうしても、って……」
「……スコーピオンさんは後でお話ですわ」
「えっ、ちょなんであたしだけ!?」
「この前、書類がどうして焼けているのかと思いましたが、スコーピオンさんの焼夷手榴弾が原因だと確信しましたわ」
「理不尽だぁ――!」
スコーピオンとカリーナのじゃれ合いを尻目に、私はリュックサックを背負って「それじゃあ」と言葉を一つ据え置いて。9A-91の手を取り、喜びの貧乏ラン100周の旅へと繰り出した。
「あっ、指揮官さま……後で絶対にお話しですわよ!」
「それは期待しておこう!」
目先の上に、帰った後もご褒美とは……カリーナも粋なことをしてくれるものだ。
だから私は、今日も張り切って貧乏ランをするとしよう。
「さぁ、メインタンクの私を痛めつけるがいい、鉄血!」
「指揮官の敵は、この9A-91が殲滅します!」
さぁ、楽しい貧乏ランの始まりだ――!
ドルフロ語録
貧乏ラン:
基本的には4-3eにて行う省資源レベリングのこと。アタッカーのAR一体、盾のSMG一体、他三体は育成したい子を入れて行う。ドルフロには一人だけ補給という手段がないため、最低でもアタッカー二人を用意して、レベリング部隊と弾薬補給のアタッカーだけの部隊に分けて、この二つを初期配置。アタッカー交代を繰り返し行ってレベリングを行う。通常の5分の1の資源で一周できるため、基本的に指揮官はこれでドールを育成する。尚、ドールのみんなに休みは無い。
防弾ベスト:
ARの人形枠かSGなどに装着できる。装着すると固定でダメージを減らせるため、0-2を貧乏ランするために必須。尚、日本鯖は未実装。大型建造と共に実装されると予想される。
快速修復契約:
艦これでいうバケツ。つまり修復を即座に終了させるもの。
回収分解:
艦これでいうところの解体。ドールを資源へ還元すること。尚、☆3以上を分解すると代用コアという貴重なモノが貰える。
AR:アサルトライフルの略。
SG:ショットガンの略。
SMG:サブマシンガンの略。
RF:ライフルの略。
カリーナ:
守銭奴。緑の悪魔や、みさきちゃのような人。
スコーピオン:
焼夷手榴弾スキルもちのSMG。尚、SMGはドルフロにおいては通常はメインタンクである。この話において焼夷手榴弾はスコーピオンちゃんがくしゃみをして指揮官に誤爆した模様。
指揮官;
狂った科学者の手により、防弾ベストと「エッチング処理」され「烙印システム」を適用されたことにより、強靭・無敵・最強なターミネーター的な存在になった。ボスでもない限りダメージ2以上は通らない。尚、防弾ベストの特性を最適化するために、盾となっても精神が壊れないように、「痛みに快感を覚える」ように変態。ドMとなってしまった。もとはノーマル。
以上。