駅前は企業ビルや施設ばかりだけど本屋もあるんだ、並んでいる本は自己開発や英語が上達する本などが多い、家の近くにある本屋とは大違いだと思いながら珍しそうに眺めてしまうのは仕方ないだろう。
目にとまったのは有名なハリウッド俳優のリスニングで上達てきる英会話の本というのもおもしろそうだ、英会話か、今回コンサートで実感したのは英語ができれば聞き取りも少しはできるようになるんだろうか、一冊ぐらい試しに買ってみようかと思ったが、色々とありすぎて迷ってしまう、好きな映画を字幕で見ているほうが楽しいし、覚えられるのではないだろうかと思ったが、こういうのは基本が大切だと誰かが言ってなかっただろうか。
すると、あの映画で英語を勉強しようという本が目に止まった。
表紙は暗い顔つきの男性だ、思いだした瞬間、気分が少し暗くなったが、いや、そういうのは乗り越えなくてはねと思いながら本を手に取り、中身を開いてみた。
こういうのは教材用のCDつきだ、昔なら結構したが、今はそれほど値段も高くない、買ってみようかなあと思ったとき、どんと自分の右肩にぶつかった。
「ス、スま、マセン」
舌を噛みそうな勢いで謝ってくる、数冊の本を両手に抱えるようにして頭を下げてきたのは髭面の外人だ。
弾みで一冊の本が床に落ちている、拾い上げると「外国人が最初に覚える、優しい日本語」というタイトルが目に入った。
「大丈夫ですよ」
ゆっくりとした口調で返事をしながら本を渡そうとして、あれっと違和感を覚えた、見たことあるなんて思うのは気のせいだろうか。
「あ、アリガト、ございます」
礼の言葉にいえいえと軽く手を振り、ではと立ち去ろうとしたが、いきなり目の前が暗くなった、というより、何かが立ちはだかった。
「やっと見つけた」
男の声に視線を上げて見ると、噴水のそばで出会った陰気な顔の外国人のおっさんだった、そして」
「は、どこだ、人魚は」
といきなり両肩をぐわしっと掴んできた。
「い、痛いっ」
細い体と腕なのになんて怪力だと思った時、腕が肩から離れた、そして、自分の目の前にいた男は平積みにしていた本と一緒に床に尻餅をついていた、
「お客様、大丈夫ですか」
店員の声に焦ったのも無理はない、自分が悪いわけではないのだが、こんなときの対処は一つ、逃げるが勝ちだ。
彼女は慌てて本屋を飛び出したが、後から誰かが追いかけて来るなんて気づきもしなかった。
なんてことだ、本屋を出たまではいいが、何もないのに足がもつれて転んでしまったのだ、慌てていたせいてもあるが、これは瞬間
ううっ、情けないというか恥ずかしい、こんなところ、本屋をでずっこけるなんて、まるギャグ漫画だが、再び地面に尻餅をついた、ふと顔を上げると男が目の前に立っている。
さっきの本を抱えていた外人と思ったが、あっと声を漏らした。
今、外の太陽の光の舌で見て分かったのだ。
髭の生えた立派な中年のおじさんだ、だが、ハンサム、男前、いや、そうではない、顔を見たことがあるのだ。
「あなた、ミスター、そ、その、昨日、コンサート、よかった、です、感動しました」
コンクリの地面に座り転けたままの格好で何を言ってるんだと、
はっとした、だがその後だ、驚いたのは、本屋の動画開き、近づいてきたのは、目の前の外国人とそっくりの同じ顔ほした外国人なのだ。
この役者さんって双子、それともただのそっくりさん、スタントマン、いや、映画俳優ならまだしも、などと映画のような設定が頭の中に浮かんだが、考える事ができなかった、というか思考が止まってしまった。
三人目の青白い顔をした、男がふらつきながら、こっちへ向かって歩いてくるからだ。
ええっーっ、あんたが、アルバイト、しかも本屋って、もしかしてアダルト専門書店と友人に聞かれて古本屋だと説明すると友人は難しい顔になった。
大型の古本屋でも最近は経営が厳しくて潰れたりするのに大丈夫なの、ちゃんと給料は払ってもらえるのと不安そうな顔をするので母の知り合いが経営している古本屋なのと説明すると友人は一瞬、空を見上げた、その顔は少し難しい、いや複雑な表情だ。
「タケシさんの知り合いの古本屋さんって事でいいのかな」
「そうよ」
「その人、オカマなの」
友人はズバリと聞いてくる。
「いや、普通の男の人、若い頃、アダルトな俳優だったとか」
ゲイの俳優と付け足すと会話が途切れた、相手は詳しく聞いても楽しい話ではないと思ったのだろう。
「それより東京はどうだった、コンサート良かった」
「う、うん」
「サイン会とかあったんてしょう、外国の俳優さんならサービスよかったんじゃない、握手とか、ハグとか」
本屋で本人に遭遇したという事実は友人には話していない、どうやって説明すればいいのかわからないからだ。
バイト先まで一緒に行こうと友人と家を出ると、何故か無言になってしました、部屋の中で話し過ぎて疲れてしまった、話題がなくなったわけではない。
「ねえっ、何かあったんじゃない」
「ど、どうして」
「いつもと違う気がするんだけど、気のせいかな」
思わず足が止まった、話してしまおうか、もしかして黙って聞いた後なに、それと笑い話で終わらせてくれるかもしれない、そうしたら自分も笑ってやり過ごせる筈だ。
公園の噴水の中に裸の男、それも人魚なんて、どっかの変態、いたずらだよと笑い話にしてくれるるだう。
「あのね」
決心した、その瞬間。
「すみません、道を、お聞きしたいのですか」
振り返った二人の女は目が釘付けになった。
友人は某魔法学校の、ある教師の大ファンだった、しばらく前に本人は亡くなり、残念がっていた、なのに。
「は、はい、なんでしょうか」
目の前に現れたのはそっくりさんだ、しかも葬式でもあったのか、全身黒スーツなので多少というか怪しさまで漂っている様に感じるのは、気のせいではないはずだ。
だが、友人の目には怪しさよりも神々しく見えるのかもしれない、まるで女子高生が恋に落ちる瞬間、そのものだ。
(ああっ、○○イプ先生が、目の前に)
そして、彼女はというと。
「バイトの時間に遅れる、じゃ」
と、脱兎のごとく、その場から立ち去った。