書いていてファンタジーっぽくならないとジレンマを感じています。
バイトを始めてからというもの、客はあまり来ない、正直、これで店は大丈夫なんだろうかと思ったが、店主である男性は、そんなことなど気にも求めない様子で店の本を整理したりしている。
もうすぐお昼だよ声に振り返ると店主の男性は店の奥へと引っ込んでいく、人付き合いに多少の難があるらしいと最初から聞いていたんで彼女は気にすることなく声をかけた。
「お弁当持ってきたんで、外で食べてきますーっ」
聞こえるように大きな声で呼びかけると返事も待たずに店の外へ出た。
すぐ近くに公園があり、ベンチで座って食べるのだが、これが結構楽しい。
今日はおにぎり、具は梅干しと鰹節、甘い卵焼きとほうれん草のおひたし、あまり手のかからないものばかり、ペットボトルのお茶を飲みながら食べていると、こんにちはと声をかけられた。
食べる手を止め、顔を上げる黒いサングラスをかけた男性がすぐそばに立っていた。
「 こ、こんにちは」
知らない人だ、一体何の用だろうかと不思議に思った、黒っぽいスーツを着た金髪、体格もしっかりとしている、外人だろう。
少し不安になってしまったのは今までよくないことが続いていたせいかもしれない。
隣いいですかと聞かれて、一緒に返事に困ったのも無理はない、いや、ベンチは誰のものでもないから座ってもいいのだが。
はあっ、少し間の抜けた声で返事をすると躊躇うことなく座り、自分の方を見て美味しそうとつ呟いた。
怖いと思ってしまった、黒いサングラスをかけた怪しい外国人のおっさんにいきなり弁当見られて美味しそうと言われて普通なら驚くだろう。
だが、次の瞬間、もっと驚いた、というのも相手がサングラスを取ったからだ。
その素顔に、彼女は突然立ち上がった。
人魚という生き物が本当に存在するのだろうか、疑問を抱いた男が数年かけて知った真実、だがそれは 予想もしない形で現実となった。
人魚の肉を食べると不老不死になる、人魚を手に入れると富を手に入れることができる、色々な噂があるが、それは小説や伝説の中の眉唾物のような話だ。
だが彼は見つけてしまった、そしてようやく人魚を手に入れた、家の中に巨大な水槽を作り、そこで人魚を飼うことにしたのだ。
最初のうちはうまくいった、いや問題はなかったのだ、ところが1ヶ月ほどすると変化が訪れた。
部屋の中にはテレビ、本、パソコンなどを置いてあったのだが、人魚はそれに興味を示したのだ、人魚にどれくらいの知能があるのか知りたくてそれに触れさせたのは良かった、意思疎通ができればと思ったが、なかなかうまくはいかない。
ある日のことだ水槽が空っぽになっていたどうやって外に出たのか、下半身は魚のようなお尻があるだけなんだ足があって歩いて行けるわけはない、まさか超能力者のように場所をテレポーテーションできる、そんなことがあるわけない、ところが、できたのだ。
それを知ったのは随分と後になってからだ。
人魚が何を好きで、何が嫌いか、男は、その時まで 知らなかった。
そして、男の元から人魚がいなくなって数年が過ぎた。
結婚するはずだった女性がいたが別れてしまった、理由、人魚を探す為だからなんて言えるわけがない、自分が家の中に何を飼っていたのか、秘密にしていたからだ、全て秘密にしていたからだ、近所にも友人にもだ。
だが男は見つけた、それも自分の家から随分と離れた外国で、日本という国でだ、見つけたら連れ帰るつもりだった、ところが予想もしないことが起きた、変態だ。
初めて見つけた時、人魚は男か女かわからない性別などないような美しい姿をしていた、ところが人魚の姿が変わった。
原因はわかっている、あの東洋人の女のせいだ。