こうやって小説を書くのは初めてなので、拙い文章だとは思いますが、楽しんで頂ければ幸いです。
その笑顔が嫌だった
押し殺したようなその笑顔が
その言葉が嫌だった
全てを悟ったようなその言葉が
だから俺は―――――――――――――――
─────
「んぅ‥‥まぶしい‥‥」
窓から差し込む日の光で目を覚ました俺はむくりと体を起こす。
時計を確認してみるといつも起きる時間よりも少し早いが、二度寝するほどの余裕はない。
なんだか損をした気分になった。
「‥‥起きるか」
寝起きで少しふらつきながらも台所へと向かい、冷蔵庫にあった炭酸飲料を飲み干す。
ようやく意識がはっきりしてきた俺は改めて辺りを見回した。
「母さんは‥‥寝てるみたいだな」
一応寝室まで行ってドアを少し開け確認したが、やはり寝ていたのでそのまま寝かせておいた。
と言ってもいつものことだから特に問題はない。
時間的余裕はあるので今から朝食を作ってもいいのだが、今日はどうしても作る気にはなれなかった。
「またあそこ行くか」
母さんに朝食が無いことを伝えるメモを残し、手早く支度を済ませた俺はそのまま家を出た。
─────
普段よりも少し早い時間帯の通学路はなんだか違って見える。
たまには早起きも悪くないかもしれない。
「おっと、そうだった」
登校前に立ち寄る場所があることを思い出した俺は足先を学校から商店街へと変えた。
自宅から数分の商店街の中に目的の店はある。「やまぶきベーカリー」近所でも美味しいと評判のパン屋さんで常連も多い。かくいう俺もその一人だけどな。そんなことを考えながら入店した俺を迎えたのは‥‥
「いらっしゃいませー‥って
この店の看板娘にして俺の幼馴染みの山吹沙綾の声だった。今日も朝から店の手伝いをしているようだ。制服の上にエプロンの姿もすっかり見慣れたな。
「あぁ、今日は朝飯作りたくなくてな。たまにはいいかと思って」
「あ、もしかして早く目が覚めちゃったとか?翔馬早起き苦手だもんね」
「‥‥‥‥なぜ分かった?」
まだ朝飯作りたくなかったとしか言ってないはず。
「そりゃあ、付き合い長いからね。それくらいは分かるようになるよ?」
「‥‥そういうものか」
「そういうもの♪」
もしそれが本当ならこの世はエスパーだらけになってしまうと思うが‥‥まあいいか、さっさとここに来た目的を果たすとしよう。買うものが決まっている俺はそれを持ってレジにいる沙綾の元へと向かう。
「会計頼む」
「はーい、ってまたメロンパン?飽きないねぇ。しかも2つ」
「別にいいだろ。もうひとつは昼飯用だ」
「まあダメとは言わないけどね。店側としては他のも食べて欲しいところだけど、320円になります」
「他のも食べた結果行き着いたのがこれなんだよ、はい1000円」
試作品を強制的に食べさせられたからな。なかにはとんでもないのもあって‥‥吐き気が‥‥
「翔馬は味見役でいろいろ食べたもんねぇ‥‥はい、どうぞ」
「あれは毒味って言うんだよ‥‥さんきゅ」
余計なトラウマが復活しそうになった俺は思い出すのをやめ、商品とお釣りを受け取った。
「そうだ翔馬、次の日曜って空いてる?」
「特に予定はないな。何かあるのか?」
「もしよかったらなんだけど‥‥」
ガチャリと、沙綾が何か言いかけたところで店の扉が開く音がした。
「おはよう、沙綾(ちゃん)」
扉の方を見てみると、沙綾と同じ花咲川女子学園の制服に身を包んだ女の子が二人立っていた。
「おはよう、りみりん、おたえ。今日は二人一緒なんだ?」
「うん、途中でたまたま会って‥‥ね、おたえちゃん?」
「朝からりみに会ったらわたしもチョココロネが食べたくなったから付いてきた」
「ふふ、おたえらしいね」
2人はどうやら沙綾と知り合いのようだ。仲良さげに話している。
ふと、りみりんと呼ばれたショートボブ女の子と目が合った。
「あ、ごめんなさい!お話し中でした‥‥よね?」
「いや、大丈夫」
「そういえば、りみりんとおたえは初対面だっけ?」
そう言いながら沙綾はレジを出て俺の隣へと移動してきた。
「この人は
「よろしく」
「ちょっとー、もう少しなにかないの?自己紹介とか」
「そっちこそもっとあるだろ、俺の紹介」
などと言い合っていると‥‥
「ふふ、仲良いんだね?」
「‥‥夫婦漫才?」
「「夫婦じゃない」」
と、2人同時言ったものだからまた笑われてしまった。
おたえと呼ばれたロングヘアーの子はなぜか納得したような顔で頷いてるし。
「わたしは牛込りみっていいます。沙綾ちゃんと同じバンドでベースやってるんだ」
「花園たえ。リードギター担当だよ」
「牛込と花園だな。よろしく」
そういえば、少し前に沙綾が
「あっ、そうだ。チョココロネ買わないと」
そう言いながら商品棚の方へと向かう牛込。最初にそんな話をしていたし、好きなんだろう。
「君もパン買ったの?どれ?」
俺が買ったものに興味を示す花園。‥‥随分唐突だな‥‥
「‥‥メロンパン2つだけど」
「メロンパンに目を付けるとは、君もなかなかやるね」
「あ、あぁ‥‥ありがとう‥?」
なんかよく分からんが、褒められたらしい。
「はい、りみりん。おまたせ」
「ありがとう、沙綾ちゃん」
そんな会話をしている間に牛込は買い物を済ませたようだ。
「そういえば、沙綾ちゃん。さっき神崎くんと何か話してたよね?」
「日曜がどうとか言ってたな。何か、」
用事でもあるのか。と言おうとした時、店の奥から声が聞こえてきた。
「沙綾~~‥‥ここにいたのね、ってあら?りみちゃんにたえちゃんに‥‥翔馬くん?久しぶりね!」
「お久しぶりです、おばさん。今日は体調大丈夫ですか?」
「えぇ、心配してくれてありがとう。最近は調子良いから、朝からもお店に出るようにしているの」
奥から出てきたのは沙綾の母親である千紘さんだった。
彼女は体が弱く、よく貧血を起こすのだが‥‥今は大丈夫そうだ。
「もう、あまり無理しないでって言ってるのに‥‥それよりお母さん、何か用事?」
「あら、そうだったわ。沙綾、時間大丈夫?そろそろ出ないと遅刻しちゃうんじゃない?」
「あ、ホントだ。みんな、少し待っててくれる?」
俺たちが賛同の意を示す。沙綾は一度奥へと消え、鞄を持ってすぐに出てきた。
「それじゃ、いってきます」
「いってらっしゃい、気をつけてね」
「‥‥あ、私なにも買ってないや」
一体何をしにきたんだ、この子は‥‥
――――――
「沙綾と翔馬くんはいつからの付き合いなの?」
店を出た後、花園のその一言から俺と沙綾の昔話に花が咲いた。(ちなみになぜか最初から名前呼びだった)
今は俺の若さゆえの過ちの一つを話している最中だ。おかげでさっきの続きが聞けていない。沙綾が言い出さないし、こっちから聞くのもな‥‥
「‥‥‥でね、その時翔馬が言ったのが‥‥」
「おい、それ以上はやめてくれ。恥ずかしいから」
「えー、ダメ?ここからが面白いのになー」
ニヤニヤしながら茶化すように言う沙綾。俺が引っ越してきてからだから‥‥小3からの付き合いか。お互い失敗談なんていくらでも知っている。‥‥そう、
「‥‥晴れた日の傘」
「っ!!」
「「‥‥??」」
俺の一言に凍りつく沙綾に対して、なにがなんだか分からないといった表情の牛込と花園。やっぱり話してないようだな?
「あれは小4の夏だったか。その日は朝から‥‥」
「分かったから!私もこれ以上話さないから!その話はやめて!ね!?」
「ならやめておこう」
誰だって隠したいことの一つや二つあるものだ。
「はぁ、‥‥からかう相手間違えたなぁ‥‥」
「沙綾ちゃんがあんな風になるなんて‥‥」
「私は今、UMA以上に珍しいものを見たかもしれない‥‥」
慌てる沙綾を見て、2人とも驚いてるようだ。確かにこんな沙綾は滅多に見られないだろうな。話題を変えようとしたのか、牛込が切り出してきた。
「そ、そういえば神崎くんはどこの学校に通ってるの?」
「ん?あぁ、村志野高校だよ」
俺が通っている学校‥‥村志野高校は、5年ほど前に出来たばかりの男子校だ。
生徒数は全校で約1000人ほど。部活動に力を入れていて、その数は100を超えているらしい。
「へぇ、そうなんだ。‥‥男子校かぁ‥‥」
「りみ、男子校に興味あるの?」
「へ!?ち、違うよ?変な意味じゃなくって!‥‥男子校ってどんな感じなのかなぁって‥‥」
「どんな感じと言われると‥‥普通?」
「いや、それじゃ伝わらないでしょ。もっと具体的に何か無いの?」
具体的に、ねぇ‥‥‥
「‥‥‥うるさい?」
「それは女子校も変わらないよ‥‥」
「急に言われても思いつかん」
「もう、翔馬はもう少し会話術を覚えた方がいいよ?」
「今のままでも充分だと思うが」
「ダメだよ。だいたい翔馬はねぇ‥‥」
また小言が始まりそうだと思ったとき、後ろから声が聞こえてきた。
「さ~~~~や~~~~!!!!!」
振り返ると、女の子が走ってきているのが見えた。その子はその勢いのまま、沙綾の背に抱きついた。
「おわっ!?‥‥朝から元気だね‥‥おはよう、香澄」
「「おはよう、香澄(ちゃん)」」
まさに元気ハツラツ!といった雰囲気の女の子だ。この子もバンドのメンバーなのだろうか。そして、なんだろうあの猫耳みたいなの。髪?
「うん!おはよう!さーや、りみりん、おたえ!‥‥と、誰!?」
「香澄も初めましてだね。この人は‥‥」
沙綾が紹介しようとしたとき、同じ方向からもう一人女の子が走ってきた。
「はぁ‥‥はぁ‥‥か、香澄‥‥いきなり走り出すなよな‥‥」
「あ、ゴメン‥‥さーやの背中が見えたから、つい」
「はぁ~、全く‥‥毎度毎度、香澄はこれだから‥‥‥」
「ゴメンってば~、あ~り~さ~」
「うぜぇ!引っ付くな!‥‥‥‥‥あっ‥ご、ご機嫌よう?」
後からきた二つ結びの女の子は猫耳の子と仲睦まじく(?)話していたが、途中でこちらに気づいたようで、恭しく挨拶してきた。
「有咲にも紹介しておくね。この人は神崎翔馬くん、私の幼馴染みだよ」
「よろしくな」
「で、こっちの2人は私と同じバンドで‥‥」
「戸山香澄!ギターボーカルやってるんだ!よろしくね!」
最初のイメージ通り、元気に自己紹介する戸山。そういえば、ボーカルの子に誘われてバンド入ったって言ってたな。この子がそうか。
「私は市ヶ谷有咲と申します。キーボード担当です。よろしくお願いしますね?」
戸山とは対称的に上品に挨拶する市ヶ谷。お嬢さまなのだろうか、と思っていたが‥‥
「あ~!よそ行きの有咲だ~~!」
「有咲、猫被ってるねぇ」
「ふふ、そんな有咲ちゃんもかわいいよ?」
「‥‥ニセ有咲」
「うるせぇぞ、お前ら!好き勝手に言い過ぎだ!そしておたえ!ニセはやめろ!‥‥‥はっ!?」
先程の挨拶はどこへやら。思いっきりツッコミを入れている。多分、こっちが素なんだろうな。
「えっと、これは‥‥アハハ‥‥」
「有咲、諦めよう?」
「くっ‥‥おたえに言われるなんて‥‥」
「まあまあ。これからたまに会うだろうから、無理しない方がいいって」
「俺もそっちがいいと思うぞ」
「まあ、そこまで言うなら‥‥」
俺と沙綾にも言われて市ヶ谷は諦めたようだ。何事も自然体が一番だ。
「にしても、通学路でみんなと会えるなんて思わなかったなぁ~。ポピパ全員集合だね!」
「ポピパ?」
「あぁ、そういえば翔馬には言ってなかったね。"Poppin'Party"略してポピパ、私たちのバンド名だよ」
「へぇ、なんか可愛い名前だな」
「よかったね、有咲」
「そ、そこで私に振るな!」
「‥‥?」
頭に疑問符を浮かべていると、牛込が近づいてきて小さめの声で教えてくれた。
「Poppin'Partyって名前は有咲ちゃんが考えたんだよ?」
「なるほど、それで」
「でも、有咲は素直じゃないからねぇ。褒めてもすぐ照れ隠ししちゃうんだよ」
市ヶ谷の方に目を向けると、まだ戸山たちと何か言い合っていた。
「もう、有咲ってば照れちゃって~。このこの~」
「このこの~」
「うぜぇ!果てしなくうぜぇ!」
あれはホントに照れ隠しなのか?その割には突き放しが強いような‥‥。
「そうだ、しょうくん!」
「ん?それ、俺のことか?」
「うん!翔馬くんだから、しょうくん!ダメかな?」
「いや、構わないよ」
「よかった~。それでね、今度の日曜日って空いてない?よかったら‥‥」
「ごめん、香澄。それは私に言わせてくれないかな?」
「う、うん。いいけど‥‥」
戸惑っている様子の戸山。確かに沙綾がこんなことを言うのは珍しい。
少し間を置いて、意を決したような表情で沙綾は言う。
「次の日曜日に私たちのライブがあるんだけど、よかったら見に来てくれないかな?ううん、見に来て欲しい」
沙綾なりに相応の覚悟を持って言ったのだろう。よく見ると、少し手が震えている。
それなら、俺の答えは決まっている。
「分かった。必ず見に行く」
「うん‥‥‥ありがとう、翔馬」
沙綾の肩から力が抜けていくのが見て取れる。
「よかったね、沙綾ちゃん?」
「うん。りみりんも、ありがとう」
「よーし!じゃあ尚更ライブ頑張らないとね!」
「香澄はいつも気合入れすぎなんだよ‥‥でもまあ、失敗は出来ねぇな」
「じゃあ今からアレ、やっとく?」
アレとはなんだろうか。何か気合を入れる方法でもあるのか?
「いいねそれ!やろうよ!」
「却下」
「え~~?ダメ?」
「こんな道の真ん中でやったら邪魔だろ?」
「それもそっか~‥‥残念」
一体、何をするつもりだったのだろう。なんだかすごく気になるが‥‥‥
と、そこで俺たちは十字路に差し掛かった。学校が違う彼女たちとはここでお別れとなる。
「じゃあ俺、こっちだから」
「あ、うん。またね、翔馬」
「バイバイ!しょうくん!絶対ライブ見に来てね!」
「あぁ、分かってる」
騒がしくも楽しそうな彼女たちと別れ、俺は一人で自分の学校へと向かう。
「ライブか‥‥‥‥」
そういえば、沙綾のライブには一度も行った事が無い。
沙綾はどんな演奏をするのだろうか、そんなことを考えながら俺は歩を進めた。
お読みいただきありがとうございます。
ご感想・アドバイスなどあればご遠慮なくお願いします。
次回は主人公の友達が出る予定です。オリキャラ増えるの早ぇ‥‥
書くのが滅茶苦茶遅いのでいつ更新できるか分かりません。二週間くらいで行ければいいなぁ‥‥
そんな感じでゆるく活動していきますので、よろしくお願いします。