近くても遠い距離   作:一昨日未明

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お久しぶりです。一昨日未明です。
今回はいよいよライブ‥‥の前にちょっとはさみます。


3話 あ、あぁ、そうだな‥‥?

「翔馬は将来、何になりたい?」

 

「え?将来?うーん‥‥サッカー選手でしょ、警察官でしょ‥‥あ、パイロットもいいよね!」

 

「ふふっ、翔馬はなりたいものがいっぱいあるなぁ」

 

「急に言われても決められないよ‥‥そっちこそ将来何になるか決めてるの?」

 

「決めてるよ。けど秘密」

 

「えー!教えてよー!」

 

「翔馬が大きくなったら教えてあげるよ」

 

「なんだよー、けちだなぁ」

 

 

これは過去の記憶。もう変えることも戻ることもできない事実。故に深く、根強く残るもの‥‥

 

 

――――――

 

 

ライブ当日――俺は一人、ライブハウスへと向かっていた。沙綾から聞いた住所は案外近所で、こんなところにあったのかと思ったくらいだ。今まで全く存在を知らなかったので自分なりに調べてみたところ、そのライブハウスはガールズバンドを応援することを主としているらしい。そんな場所に男の俺が行ったら浮くのではなかろうか。

そうこうしている間に店の前に到着してしまった。CiRCLE‥‥ここで間違いないようだ。少し中の様子を覗いてみたところ、やはり女性だらけで入りづらい。どうしようかと悩んでいると‥‥

 

 

「ちょっと、邪魔なんだけど?」

 

 

と、後ろから声をかけられた。入口の目の前に立ってたらそりゃあ邪魔だよな。

 

 

「っ‥‥悪い」

 

 

俺は振り向きながら入口から離れる。俺に声をかけた相手は短めの黒髪に赤のメッシュが入った、いかにも、と言った感じの女の子だった。

 

 

「‥‥アンタ、そこでなにしてたの?」

 

 

おっと、これは完全に不審者を見る目をしているな。ここは誤解を解いておかねば。

 

 

「あー‥‥俺はだな‥‥」

 

 

俺はここに来た経緯と現在の状況を説明した。その直後の彼女の反応が‥‥

 

 

「ふふっ、なにそれ」

 

 

笑顔だった。こないだもこんなことあったな。俺は初対面の女の子に笑われる運命なのか?

 

 

「‥‥笑うなよ‥‥」

 

「ごめん、つい。‥‥別に男子禁制じゃないし、入れば?スタッフの中に男の人もいるし」

 

 

もう一度店の中を確認してみると、確かにスタッフらしき男性の姿が見えた。

 

 

「本当だ‥‥ありがとう。少し気が楽になった」

 

「そ、よかった。‥‥じゃあね」

 

 

中へ入っていく彼女を見送る俺。話してみると思ったよりも優しい子だったな。あ、名前くらい聞いておけばよかったか?‥‥まあ、いいか。俺もそろそろ行くとしよう。

彼女のおかげで先ほどよりも一歩が軽くなった気がする。その勢いのまま俺は店内へと足を踏み入れた。

 

 

――――――

 

 

「うぅ‥‥緊張してきた‥‥」

 

 

ライブ開始前、私達は舞台裏でスタンバイして出番を待っていた。そこでりみりんがそんなことをつぶやいてたから私は声をかけてみた。

 

 

「りみりん、大丈夫?」

 

「う、うん‥大丈夫‥‥やっぱり緊張しちゃうなぁ」

 

「あはは‥‥なかなか慣れないよね‥‥」

 

 

そう言いながら私達は自然と同じ方向を見た。そこには‥‥

 

 

「うーん!ライブ、楽しみだなぁ!」

 

「だぁー!!もう!うるせぇ!少しは落ち着けって!」

 

「だってライブだよ!?これからライブするんだよ!?キラキラドキドキだよ!?」

 

「分かったから!だからちょっとじっとしてろ!」

 

 

うーん、さすがは香澄というか‥‥なんというか‥‥

 

 

「ふふっ、香澄ちゃんを見てると緊張なんて忘れちゃうね?」

 

「だねぇ。ホント、香澄はすごいよ」

 

 

香澄はやっぱり私達のリーダーだね。どんどん突き進んで、私達を引っ張ってくれて。こういうのがカリスマ性なんだろうね。

りみりんの表情がさっきよりも柔らかくなってる。これなら大丈夫そうかな。

 

 

「ったく、少しはおたえを見習えよな。さっきから静かに集中してるだろ?」

 

「‥‥うん、決めた」

 

「あ?何を決めたんだ?」

 

「今日はハンバーグがいい」

 

「晩飯のリクエスト考えてたのかよ‥‥ブレねぇな、おたえは‥‥」

 

「あ!私もハンバーグがいい!」

 

「お前は乗っからなくていいから!」

 

「待って、オムライスも捨てがたいかも」

 

「この話題広げるのか!?本番前だぞ!?」

 

 

おたえも相変わらずだね‥‥そろそろみたいだね

 

 

「ほーら、みんな。もうすぐ私達の出番だよ?」

 

「‥‥なんか、既に疲れたな‥‥」

 

「だ、大丈夫?有咲ちゃん?」

 

「でも、このやりとりは嫌いじゃないでしょ?」

 

「う、うっせーな!」

 

 

否定しないってことはやっぱりそう思ってるんだね。有咲ってば、ホントに素直じゃないなぁ、もう。そんなやり取りをしながら、私たちは舞台裏まで移動した。

 

 

「香澄。いつものよろしく」

 

「よぉーし!みんな、準備はいい!?」

 

 

5人で円陣を組んで、香澄が私達にそれぞれ視線を送る。私達もそれに視線で応える。

 

 

「いくよー!――」

 

『ポピパ!ピポパ!ポピパパピポパ~~!!』

 

 

――――――

 

 

ポピパのライブと聞いていたから、俺はてっきり単独ライブだと思っていたが、どうやら今日は複数のバンドが参加する合同ライブらしい。(会場の入口にプログラムが貼ってあった)しかもポピパは最後――トリを務めるようだ。それだけ認められているということだろう。

せっかくの機会なので他のバンドの演奏も聞くことにしたんだが‥‥このバンド、滅茶苦茶上手いな。演奏のレベルが他とは明らかに違う。ボーカルの子も俺と同い年くらいなのに、プロ顔負けの歌声で圧倒されるというか‥‥

 

 

「‥‥ありがとうございました。Roseliaでした」

 

 

彼女らの演奏が終わり、次はポピパの出番だ。なんだかこっちまで緊張してくる。そわそわしながら待っていると、ポピパがステージ上へと現れた。

 

 

「みなさん!こんにちはー!私たち――」

 

『Poppin'Partyです!』

 

「まずは一曲、聴いてください!」

 

 

彼女たちのライブを一言で表すなら――楽しい、だった。演奏するのが、みんなと一緒にいるのが、今この瞬間が、楽しい――自分たちの気持ちを全力で伝えてくる。観客たちもそれに応えるように歓声を上げ、まさに会場全体が一つになる、そんなライブだった。

沙綾も他のメンバーと同じように笑っている‥‥前のバンドを辞めて以来、どこか塞ぎ込んでいるように感じていたが、今の沙綾の表情を見る限りもう大丈夫そうだ。

俺は他の観客とは少し違う気持ちでライブを楽しんだ。

 

 

――――――

 

 

ライブが終わり、俺は帰ろうかと思っていたんだが、沙綾から「ちょっと待ってて」とメッセージが来たので、俺は一人で店の前に立っていた。何かまだ用事でもあるのだろうか?そのまましばらく待っていると‥‥

 

 

「翔馬。ごめんね、待たせちゃって」

 

「いや、大丈夫」

 

 

声が聞こえた方を向くと、店の中からポピパの5人が連れ立って出てくるところだった。そんな中、まだライブの余韻が残っているのか、戸山が落ち着かない様子で話しかけてきた。

 

 

「しょうくん!私たちのライブ、どうだった!?」

 

「あぁ、よかったぞ」

 

「ホント!?キラキラドキドキした!?」

 

「あ、あぁ、そうだな‥‥?」

 

「落ち着け、香澄。神崎が付いて行けてないから」

 

「あ、そっか‥‥じゃあそこから説明しないとね!えっとねー‥‥」

 

「だから落ち着けって!一から説明したらめちゃくちゃ長くなるだろうが!」

 

 

続きを話そうとする戸山を止める市ヶ谷。正直助かったけど、結局何なんだ?キラキラドキドキって。

 

 

「私たちこれから反省会兼打ち上げするんだけど、よかったら翔馬も来てくれない?感想とか聞きたいし。あ、時間大丈夫?」

 

「俺は大丈夫だが‥‥いいのか?」

 

「もちろん。ね、みんな?」

 

「うん!もっとお話ししたいし!」

 

「ま、別にいいんじゃねぇの?」

 

「そ、そうだね。お客さんから見たらどんな感じなのか気になるし‥‥」

 

「こういう機会は貴重だから」

 

 

どうやら満場一致らしいな。なら断る理由もない。

 

 

「そういうことなら、分かった」

 

「うん、ありがと♪」

 

 

そんなわけで反省会兼打ち上げとやらに参加することになった俺は楽しそうに話す5人の後について行く。()とか言ってる時点で反省会になるのか若干怪しい気もするが‥‥まあいいか。それもポピパらしさだろう。多分な。




読んでいただきありがとうございます。最初は反省会まで書いていたんですが長くなってしまい、やむなくここで切らせてもらいました。なので次回はその切った部分になりますね。ちなみに冒頭の回想シーンはああでもしないと伏線張れないからです。‥‥察してください‥‥
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