FE聖杯戦争   作:白波要

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なんか乗ってるのでこのまま更新します。
サイファでは青緑クロムでイナジルしてるので、ジルなのです。めっちゃお世話になってる。
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5話 暗殺者/Class change

 お昼休み。今日も今日とて、俺達三人は中庭で昼食をとっていた。昼休みにここで昼食を取りながら作戦会議するのが同盟二日目にして決まり事となりつつあった。

 

「笑顔のストラテジストさんは後にして、僕から報告しますね」

 

 あかりの言う通り、にこにこ笑顔のストラテジスト。本日の報告会は実体化しての参加なため、見てわかるレベルで機嫌がいい。

 

「僕たちは昨日、ランサーと遭遇しました。こげ茶色の髪の偉丈夫で、アーチャーと知り合いのようでしたが、公平じゃないからと真名は教えてもらえませんでした。ただ、ランサー陣営は前日にセイバーと戦っていたようで、少しだけ情報をいただきました」

「それって、黒馬の剣士じゃないの!?」

 

 あかりが報告しているところへ、明石さんが食い気味に割って入った。

 

「は、はい。黒馬に乗った騎士で、上から下まで真っ黒で手に持った剣だけが怪しく光っていたそうです」

「それよ!」

 

 あかりの報告と自身の遭遇したものの類似点の多さに明石さんのテンションは上がっていく。対してキャスターのそれは下がっていく。

 

「キャスター、よかったら飲む?」

 

 降下していくキャスターを見ていられず、俺は思わず声をかけてしまった。

 本日、水筒の中身はお茶にあらず。昨日のキャスターに触発されて豆腐の味噌汁が入っていた。みんなで分けられるようにと紙コップも持参している。

 まだ暖かく湯気の立てるそれを紙コップに注ぎ、キャスターに手渡した。

 

「昨日、図書館で読んでいたから気になったのかなと思って」

「あ、ありがとう」

 

 キャスターは目を白黒させつつも口を付けた。

 舌で転がしながら、ゆっくりと味わっているようで、作った側の人間としては嬉しくも気恥ずかしい。僕にも!と言わんばかりに無言で差し出されたアーチャーの手にも手渡し、俺にもくださいと無言で訴えるストラテジストにも、渡そうとして渡さなかったりと多少のイタズラはしたものの、最後には渡した。昨日令呪を切らされたお返しである。

 

「やさしい味だね。おいしい……」

「そうかな。口に合ったならよかった」

 

 俺ははみそ汁をすすりながらも、黒馬の剣士について耳を傾ける。

 得られた情報としては、黒い鎧に揃いの馬、怪しく光る剣を持った騎士だという。

 ランサーと会った時に「はじめまして」と言って襲い掛かってきたそうだ。凄まじい強さだったが、どこか力を試しているようで、撤退することは可能だったという話だった。

 そこに疑問符を付けたのは明石さんだった。

 

「私とキャスターの時は全力全開って感じでそんな暇なかったわよ……」

 

 切りたくなかった令呪だって切ったんだから。

 明石さんの手にあった令呪はその輝きを一つ失っている。一画使って退却しかできなかったのだから、悔しくもあるんだろう。

 

「私からの報告はさっきの黒馬の剣士と戦闘したことよ。令呪一画使って退却するので精いっぱい。マスターはこの街の管理者(セカンドマスター)清水暁(しみずあき)。この街で魔術師をやっている以上、知らないわけないよね」

 

 その場に沈黙が満ちた。明石さんの言う通り、この街で魔術師をやっている以上、知らないわけがないのだ。この街の魔術師を束ねている大地主で、清水暁に申請することで魔術師としてこの生きていける。

 俺だって両親が消えて、魔術を継いだ時に会っている。どこからその情報を手に入れたのかわからないが、唐突に現れて手続きをさせられた。あのすべてを見透かしたような瞳が苦手だった。

 最初に口を開いたのはストラテジストだった。

 

「その清水暁っていうのは、どんな人物なんだ?」

「食えない人よ。「おやおや、まぁまぁ……」が口癖で、この街のことぜーーんぶ知ってそうな」

「僕も不思議な印象をうけました。こちらのことをすべて見透かしたような行動をとりながら、あの人自身の情報は何一つ開示されない」

「俺、両親が消えたこと誰にも言ってなかったし、その翌日から普通に学校に行ってたんだ。なのにあの人はその調度一週間後に手続きで俺の前に現れた」

「つまり、情報らしい情報はない……」

「そういうことだ」

 

 マスター三人そろって魔術師で、清水暁と面識があるはずなのにこれである。

 

「あの清水暁に最優と呼ばれるセイバーとおぼしきサーヴァント。どこかで自滅か相打ちでもしてくれればいいのに」

「マスター、そんなこと願ったって意味はないだろうに」

 

 明石さんの言葉は願うだけなら容易い、この場のマスターの気持ちを代弁したものだった。しかし、キャスターのいうことももっともだった。

 そんな奇跡のようなこと、願ったところでどうにもならないし、願いを叶えることができるこの戦争に参加しているだけでも奇跡のようなものなのに。

 

「とりあえず、今はバーサーカーに集中しませんか?一哉くん達の報告もありますし」

 

 あかりの言葉に、待ってました!とばかりにストラテジストは指を鳴らした。

 

「俺達からの報告は一つだ。紹介したい人がいる」

 

 ストラテジストの声に合わせてソレはストラテジストの隣へ姿を現した。

 霊体化の解除とは違う現れ方に全員に動揺が走る。

 口元を覆う長いストールに小さい胸当ての軽装備の男だ。銀灰色の髪は手入れが行き届いており、見目を気にする人物のようだ。

 

「サーヴァント、暗殺者(アサシン)。よろしくお願いします」

 

 アサシンと名乗った男は立ち上がり、手を胸元にあてて優雅に一礼を取った。

 

「なんだか、胡散臭い」

「軽薄そうな方ですね」

「ナンパでサボったら許さないよ」

「アサシンだね。よろしく!」

 

 上から順に明石さん、あかり、キャスター、アーチャーだ。

 まったくもって酷い評価だが、俺は否定する材料を持ってなかった。昨日の出会いの時点でナンパしていたのだから。

 

「それに、どこかで見た顔だ」

「えーー人違いですよーー」

 

 キャスターの言葉にへらへらとアサシンは笑う。昨日の夜見せた冷たい顔とはまた違う。

 

「交渉してバーサーカー撃破までの間だけ、アサシンを借りてきた」

「借りてきたって……」

「僕の腕を買ってくれているのか、マスターは最後の一騎になるまで戦争を放置するみたいなんですよ」

 

 ストラテジストの言葉に唖然とする明石さんに、アサシンは補足する。

 

「僕としても、情報収集とか命じてくれた方がやりやすいんですけど、完全に放任されちゃって」

「それで日がな一日ナンパしてると」

「ちょっとかわいい女の子をお茶に誘っただけですよーー」

 

 明石さんもあかりも突然のアサシンに信用していいのか迷っている。俺は別にそれで構わない。利用できるものをその時に利用するだけでいい。

 俺だって、これで本当に良かったのかわからないのだから。

 

 

 

 

 結局、誰一人としてバーサーカーの居場所を知らないまま、再び夜になった。今晩は待ち合わせをして全員で探索をする。

 待ち合わせ場所は街を大きく二分する川の河川敷だ。ここで待ち合わせをし、学校のある東側を捜索する。

 待ち合わせ場所にいるのは俺とストラテジスト、アサシンの三人だけだ。手持無沙汰なアサシンは拍を取りながら踊りを披露してくれる。観客は俺一人で、手拍子で応えた。

 優美で流れるような踊りの中に男性特有の力強さも感じられるいい踊りだと思う。俺は踊りなんて嗜んだことがないから、よくわからないが綺麗だった。

 歌があればもっといいのに。

 俺がそう考えた時、隣から歌が聞こえてきた。低く、踊りに合わせた流れるような歌声。ストラテジストの歌だった。

 魔術師が跋扈し、戦争の行われている夜の河川敷で、男ばかり三人も集まって何してるんだか。でもその滑稽さもまた面白い。それになにより、アサシンの踊りもストラテジストの歌も素晴らしいのだ。

 

「夜中になにしてるの?」

 

 この素晴らしい時間も長くは続かず、明石さんの呆れたような声で打ち止めとなった。後ろにはキャスター、あかり、アーチャーの三人もいる。

 

「いやちょっと、アサシンの踊りが綺麗でつい、見入ってしまって」

「いやなに、アサシンの踊りが優美でな、つい歌を」

 

 上から順にマスターとサーヴァントの言葉。踊っていたアサシンはといえばーー

 

「は、恥ずかしいです……」

 

 俺やストラテジストだけではなく、ほかにも見られていたのが恥ずかしかったようで、顔を真っ赤にしている。

 そんなアサシンを冷たい目で見据えていたのがキャスターだ。赤褐色の瞳を細めている。どうかしたのかと聞けば、なんでもないとはぐらかされた。同盟を組んでいるものの、俺は彼のマスターではないのであまり深くは口を出せない。ただ、キャスターはアサシンのことを気にしているのは確かだった。

 

「さて、今日はバーサーカー探索の為、あわよくばそのまま撃破を見据えて全員で集まったわけだが、俺は別行動させてもらう」

「え!?なんで!!」

 

 ストラテジストの声に明石さんの抗議の声が飛ぶ。そして視線はもれなく俺に。

 

「悪いが俺は何も聞いてないぞ」

 

 弁明をすれば視線の種類が、大丈夫かこの陣営……といった生ぬるい心配の視線に変わった。

 まあま落ち着けとでもいうかのようにストラテジストは手を動かした。

 

「答えは俺一人でなら、()()()()()()()()からだ」

 

 ストラテジストは声高に宣言すると宝具を展開する。いくら宝具からその真名が分かりづらいとはいえ、いくら魔力消費が少なめだとはいえ、マスターとしてはそう頻繁に展開してほしくはないものだ。っていう俺の気持ちは一切伝わってないんだろうなこのサーヴァント。ましてや、同盟相手を目の前にして宝具名すら口にする。

 

数多の可能性(クラスチェンジ)!!」

 

 魔力が風を呼びストラテジストのコートを翻させる。コートはその裾からエーテルへと溶けていき鎧へと変わっていく。はいていたブーツは足甲へ、皮の軽鎧は鈍色の鎧へ。

 突然、影が差し頭上を見上げれば一匹のドラゴンがいた。

 ――ドラゴン。

 神代の幻想の中へと姿を隠したソレが、今目の前で月を遮っている。

 ドラゴンはふわりと羽をはばたかせ、優雅にストラテジストの傍に降りた。

 

「愛竜のジルだ。よろしくしてやってくれ」

「すごーい!ドラゴンだ!!」

 

 無邪気なアーチャーだけがドラゴンに駆け寄りストラテジストと会話を弾ませる。

 他の面々はと言えば、あかりは目を大きく見開き呆けて、キャスターは数多の可能性(クラスチェンジ)が気になるのか思案気な顔だ。アサシンは出会った時の様な冷たい顔で二人と一匹を見ている。それで、残った明石さんはーー

 

「はわわわわわわわわ」

 

 腰を抜かしていた。

 本当に大丈夫か彼女。

 今度は俺が彼女に生ぬるい心配の視線を送る番だった。

 手を貸して立ち上がらせてあげても未だ「はわわわ」しか言わない。右手でしっかりとドラゴンを指さしながらぶんぶんと振り回している。こちらを見つめる瞳は説明を求めていた。

 

数多の可能性(クラスチェンジ)。ストラテジストの宝具の一つで、自身の霊基を疑似的に一時だけ変えるんだ」

「ずずずずるくない!?」

「ずるいも何も、クラススキルの変更と見た目、ステータスが若干変更されるだけで、とくになにかあるわけじゃないし」

「いやそれでも、歩兵のストラテジストがドラゴンに乗ってるとか誰が考えるの?攪乱はできるでしょう!」

 

 逆にそれぐらいしか使い道がないともいう。どんな状況に陥っても決して諦めない道を探り続けるストラテジストらしい宝具といえばそうなんだが。

 ちなみに、七つの基本クラスにはなれるとは自己申告。なお、審議は定かではない。

 

「ほら、俺は宝具の一つを開示したんだから、お前たちもざっくり概要ぐらいは教えてくれないか?戦術に組み込みたいんだ」

 

 ストラテジストの拍手に全員が我に返った。

 夜は長いが短くもある。神秘に携わる魔術師として、ドラゴンの登場やストラテジストの宝具に呆けている場合ではないのだ。

 自身の宝具(切り札)を先に開示することで、他のメンバーにも開示を強要する。そういう作戦だったのだろうか。相談くらいしてくれてもいいものを。

 

「僕の宝具はこの魔術書を使ったものだ。足止めと攻撃系だと考えてもらえればいい」

 

 ストラテジストを軍師として認めたのか、先に開示したのはキャスターだった。

 

「ほかには?」

「馬もあるが、こちらは機動力のみと思ってほしい。攻撃に転用したりはできない」

「情報の開示に感謝する。それで、アーチャーは?」

 

 ストラテジストは優雅にキャスターに腰を折った。対するキャスターは目礼だけでそれを受け取った。まるで頭を下げられ慣れているかのような。人の上に立つものの気配がした。

 

「アーチャー?」

 

 アーチャーはストラテジストの言葉に座りが悪そうに笑っている。マスターは深刻そうに考えていた。深刻顔をしたあかりの顔に影が落ちる。

 少しの躊躇のあと重い口を開いた。

 

「実は、アーチャーは現在、宝具を開放できないんです……」

 




・ランサー
こげ茶色の髪の偉丈夫。
アーチャーと知り合い?

・清水暁
大地主でこの街の管理者。
「あらあらまあまあ」が口癖。
黒馬の剣士をサーヴァントとしている。

・セイバー?
黒馬の剣士。
「はじめまして」と最初に問うてくるらしい。

・アサシン
優男風のイケメンナンパ野郎。
ひとまず仲間にはなった。

・数多の可能性
ストラテジストの宝具の一つ。
自身の霊基を一時的に他のクラスへ変更する。
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