FE聖杯戦争   作:白波要

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狂乱の瞳、通称バサタクミ編が今回で終了となります。

いつもいつも、閲覧、コメント、評価、ありがとうございます。
どうにか、狂乱の瞳を書ききることができました。
本当にありがとうございます。
引き続き、ゆったりとよろしくお願いします。


8話 I love you

 カムイ。カムイ。カムイ。カムイカムイカムイ。カムイ。

 どうしてあの《女》はあちらを選んだんだろう。

 あの女さえ来なければ母上は死ななかった。あの女がこちらを選べばこんな戦争なんて起こらなかったのに。戦争が起こらなければ、たくさんの民が死ななくてもよかったのに。たくさんの人が悲しまなくて済んだ。

 どうして、どうして、僕たちの味方をしてくれなかったんだ……

 

 「父上……!」

 

 戦を前にして背後から声をかけられた。《彼女》そっくりの青い髪を持つ異界で育った僕の大事な大事な息子。僕なんかよりずっと弓の腕がいい天才だ。

 時の流れの違う異界で育ったため、僕の数年年下の弟の様だ。例え僕がここで刺し違えても彼がこの弓を継いでくれる。僕なんかよりずっといい名手になる。

 傍にいた兵士に命じて彼を異界へと送り返した。

 

「いやだよ!!父上!!僕強くなったんだ!強くなるから!!僕が守るから!!お願いだよ!!死なないでよ!!父上!!僕も傍で!!戦わせてよ!!」

 

 聞いているこちらが痛くなるような悲痛な声をあげて彼は扉の向こうへ消えた。

 本当は《彼女》にも戦線を離れて彼にについていて欲しかったんだけれど、ここに残ると押し切られてしまった。臣下として僕を最後まで守りたいと、言われてしまった。

 そういえば、僕が意地っ張りなばっかりに彼をまともに褒めたことがなかったことに気が付いてしまった。ごめんね、キサラギ。

 スサノオ長城から見下ろしたあの女は敵国を表すような黒の鎧を着ていた。覚悟を抱えたまっすぐな赤い目に僕は落ち着かなくなる。

 カムイ。カムイ。カムイ。カムイカムイカムイ。カムイ。

 カムイ。カムイ。カムイ。カムイカムイカムイ。カムイ。

 お前は、お前は、お前は、お前だけは、僕が倒してみせる。

 たとえ、刺し違えたとしても絶対に僕が、この手で、殺してやる……!

 憎い、憎い、あの女と同じ白銀の髪の弓兵が僕を見上げていた。-()と揃いの琥珀色の瞳があの女と同じ覚悟を抱えてまっすぐにこちらを見ている。落ち着かない。落ち着かない。あの瞳で見つめられるのは、あの美しい白銀の髪が風になびくのは落ち着かない。見覚えのあるような顔つき、見覚えのあるような弓を持っているが、もう、思い出せないや。

 黒馬を駆る金髪の男は殺す。後ろにいる女も殺す。銀灰色の髪の暗殺者も殺す。敵国のやつは全部、僕が殺す。あの女と揃いの白銀髪の弓兵も殺す。弓兵の傍にいる女も殺す。向こうにいる黒髪の男も殺す。白い髪の(カムイ)も殺す。殺す。殺す。殺す。

 僕が僕が僕の手で殺す。絶対に殺す。

 

 

 

 

「あかり、走れるな?」

「はい。大丈夫です」

 

 ストラテジストさんは杖を握りしめ、僕のマスターに確認を取った。マスターも緊張しているのか、祓串を固く握りしめている。僕は頷くことで彼らに返事をした。

 大丈夫。僕がこの弓を信じていれば応えてくれる。これは本当は母上の役目なんだと思う。母上はここにはいないし、夜刀神だってない。だから、僕があの人を取り戻すんだ。僕にだって絶対できる。他の誰でもない、僕がやるんだ!!

 ストラテジストさんは走り出した。校庭の中ほどで手に持っていた杖を大きく掲げる。杖は光り輝き、隣にいたはずのマスターをストラテジストさんの隣へと連れて行く。

 

「アサシン!」

「はい!」

 

 マスターは屋上目指して走る。先ほどまでバーサーカーを抑えていたアサシンがマスターに付き添うように影に入った。

 運動が得意ではないマスター。いくらアサシンが横にいるとはいえ、屋上を目指す以上、危険であることに違いはない。

 僕が傍に入れればいいのに。でもそれはできない。

 僕に体は二つとない。僕がこの手であの人を止めたい。その願いをマスターは叶えようと頑張ってくれている。マスターの気持ちにも応えたいんだ。

 手に持っていた弓が輝きを増していく。物理的に張っていた弦は解け、青緑の光が弦を成す。ありがとう、風神弓。

 

「お願いします!アーチャー!」

 

 校舎の前、大地で作り上げられた階段の前でストラテジストと同じように、マスターが祓串を掲げた。

 

七つの大難疾く消滅せん(七難即滅)!!」

 

 今度は僕のが光に包まれる番だ。マスターの持つアーティファクトにより僕はマスターの頭上に転送される。

 きらきらと瞬く星が先ほどよりもうんと近い。吹き抜ける風も味方をしてくれている。

 泡のように浮かんでは消えていく儚い記憶の中で、いつかこんな風に対面したような。

 褒めて欲しかった。素直じゃないから手放しで褒めてはくれないかも。意地っ張りで捻くれていて素直じゃないけれど優しい人だって、僕も母上も弟だって知っているよ。だから、笑ってよ。

 くるり。空中で体制を整える。足場だってないけれど、この弓の前ではそんなこと関係ない。

 矢を構える。向こうでは真っ赤な濁った眼を向けてくる者がいる。僕の大切な人の姿をしたなにか。もう、あそこにいないことを僕は知っている。あれは形だけなんだって。

 落下していく僕の耳元で風がうなりをあげている。視界の端に母上と揃いの白銀の髪が揺れている。

 

「大好きだよ!!父上!!」

 

 矢を番えていた手を離した。

 矢が当たったのか涙でいっぱいの目ではよく見えない。倒せていなかったのだとしても関係ない。僕は弓を直して、両手を広げてバーサーカーに落下する。伝えたいことがたくさんあるんだ。褒めて褒めてとせがんで、飛びついていく僕をちゃんと受け止めてね、父上。

 

 どさりとバーサーカーの胸の中へ落ちた。ぎゅっと力強く抱きしめられた。その力強さに僕は息ができない。でも、殺意も憎しみも籠ってない抱擁はただただ、愛情にあふれて居る。

 舞い散る青緑色のエーテルの向こうに優し気な微笑みが見えた。大きな手で柔らかく頭を撫でられている。《琥珀》色の瞳を幸せそうに細めて彼は言った。

 

「よくやったね、キサラギ」

 

 彼の肉体は僕の当てたところから解けてエーテルが漏れ出ていく。彼は僕の持つ風神弓に目をやると殊更幸せそうに微笑んで掻き消えた。

 ふわり、ふわりと蛍のように浮かんでいく光を僕は見えなくなるまで見送った。

 

 

 

 

 一哉はストラテジストに強引に魔力を持っていかれ、五体を投げ打って校庭に寝転がっていた。屋上の様子は伺えないが、音もなく戦闘が終了したのだろうとは思うが確定ではない。

 

「蒼井くん、生きてる?」

「かろうじて」

 

 明石さんがキャスターを連れ立ってすぐ横まで来ていた。彼女は膝を折り、俺を小枝でつつく。つんつん。

 

「やめてくれ……さすがに魔力切れで起き上がる気力もないんだ」

「だからじゃない」

 

 つんつん。

 顔を動かしてストラテジストを探す。俺のサーヴァントはあかりを褒めるのに一生懸命でマスターを助けるつもりはないらしい。自分の味方はいつだって自分だけなのか。

 屋上ではアーチャーがこちらに向かって大きく手を振っている。アーチャーの晴れやかな顔に安堵する。どうにもバーサーカーとは因縁がありそうだったのだ。よかった。

 アーチャーは一度顔を隠したかと思えば、何かを抱えて飛び降り、こちらへと歩いてくる。彼の腕にいたのは一人の少女だった。無造作に束ねられた黒い髪に同じ高校の制服を着ている。魔術師らしき痕跡もなく、ごくごく一般的な少女だ。

 

「アーチャーのマスターだね」

 

 アサシンは痛ましいものでも見るかのように顔をしかめた。

 

「記憶消して、近くの交番にでも届けるのがいいだろう」

「そうだな」

 

 あかりを十分に褒め終わったのか、ストラテジストもこちらに来た。助け起こそうと差し出された右手に()()が重なって見える。

 よく晴れた青い空だった。雲も少なく、穏やかな気候だ。

 差し出された右手を掴んで立ち上がれば、青い髪の青年だった。髪と同色の瞳に呆けた自分の顔が見えた。初夏のように爽やかで運命を切り開くだけの力がある人だった。

 頭を振り、先ほどの()()を振り落とす。隣で肩を貸してくれているのは白い髪のいつものストラテジストだ。

 

「バーサーカーのマスターはこのままあかりたちにお願いするとして、ストラテジストは蒼井くんおんぶして帰るのよね」

「じゃあ、今日は解散!また明日中庭でね!」

 

 明石さんは強引に場をまとめ上げるとキャスターを伴って、そそくさと帰宅してしまった。

 

「一哉くん」

「どうした、あかり?」

「たぶん、同じこと考えてると思うんですけど」

「そうだな。多分、同じことだな」

「明日って、学校お休みですよね」

 

 明日は土曜日。公立高校である我らが白柳高校(はくりゅうこうこう)は休日である。明石さんったらこんな時までうっかりさんだ。

 

「僕から後で連絡しておきます」

「明石さんの連絡先知ってるんだな」

「はい。以前、同盟を持ちかけられた時に」

「じゃあ、俺とも交換してくれないか?」

「……はい!」

 

 あかりの綻ぶような笑顔に理由を尋ねれば、「僕、あまり同性の友人っていなかったので、とてもうれしいです」とのこと。これだけ可愛らしい服を着ていて、似合うっていうんだから同性ではなく異性の友達のほうが多かったのだろう。

 あまり社交的ではない魔術師の俺も似たようなものだった。

 この日、大事な友人が一人増えた。

 




・バーサーカー
真名タクミ
暗夜ルートカムイちゃん主人公、オボロ嫁でした。
宝具は暴風巻き上げ、傷つくるもの(スカディ)
ステータス大幅アップ、射程が伸び、代わりに理性を失っている。

・アーチャー
宝具は風神弓(ふうじんきゅう)
足場判定がなくなる扱いやすい弓。どんな体制でも打てるのはアーチャーの実力。
今回、ストラテジストの宝具をつかって白の血族へCC、星夜神社の主からもらった竜石で変身ってパターンもあったんですが、もはやアーチャーじゃねえなって思ったので、バケツリレーになりました。

FEが高さ判定のあるゲームだと、風神弓もっと強かったんじゃないかと思いました。
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