救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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原初の灯り火

――もし、この世界に『ヒーロー』が存在するとすれば、『彼ら』の事を言うんだろう。

 

どんな逆境でも、決して諦めずに立ち向かい……悪を挫き、正義を成す。

 

そんな『ヒーロー』たちに、僕たちは守られている。

 

それが、今の世界の常識であり、真実だ。

 

 

 

「―――ならば、正義とはなんなのか問うぜ。ヒーロー諸君、正義とは何を持って正義となんだよ?」

 

「正義っつうのは、大衆が許容し独善的に善と認定され、都合が良いものじゃねぇのかよ?」

 

「大衆にとって自らを守る盾であり、自らの害となる物を穿つ矛である。それが、世界の共通の正義だろ」

 

「どうなんだよ、答えてみろや。「正義の味方(ヒーロー)」諸君?」

 

 

それに答えられた「ヒーロー」がどれだけいるのだろうか。

 

それを大声でNOと強く否定出来た「ヒーロー」がどれだけいるのだろうか。

 

 

世界総人口の八割が"個性"と呼ばれる不思議な特殊能力である力を持つ超人社会。この社会には明確な光と闇がある。個性を悪用し犯罪を起こし人々を苦しめる闇、即ち「ヴィラン」。その「ヴィラン」の脅威から守る為に"個性"を用いてその闇を払い人々の笑顔と平和を守り続ける者、即ち「ヒーロー」の存在である。この二つが絶えずぶつかり続ける世界において明確な正義とは「ヒーロー」であり、悪とは「ヴィラン」とされている。それは行いから見ても当然だろう、人の役に立つ、人に迷惑を掛けている。この二つを同じ舞台に置いてアンケートをとったとしてもどちらが正義で悪かなんて問うまでもない―――。

 

 

―――本当に、そうだろうか?世界に「ヒーロー」が誕生して往く歳月が経過しただろうか。「ヒーロー」は「ヴィラン」を追い詰め続ける、警察と見事な連携を深めながら敵を追い詰め、倒す。それが当たり前になっているのになんで「悪の芽」を摘み取れないのだろうか。手温いから?それもあるだろう、「ヒーロー」とは人々にとって希望であり光だ、そんな光が徹底的に相手を叩きのめす姿など見せたら、全ての敵を潰した時、追い詰められるのは「ヒーロー」だ。そんな裏方(ダークサイド)は見せなくて良いんだ、民衆が望むのは勧善懲悪の輝かしい光の物語だけだ。

 

 

―――ならばなんで悪は消え去らないんだ。では聞こう、倒すべき「(ヴィラン)」がいなくなって一番困るのは誰だ?少し考えれば分かる事だ、それが答えだ、あらゆるモノにも癒着や汚職は存在するんだ。それを理解するんだ、だったら―――

 

「―――俺は絶対的、完全な、強大な最強の悪となろう。名前を聞けば誰もが恐怖して泣き叫ぶそんな悪になってやろう!!それならば「正義の味方(ヒーロー)」達は俺を全力で叩き潰しに来るだろうよ!!!ははははっこりゃ最高だ!!!俺はこれから史上最悪最低最高の「(ヴィラン)」になる、いやそれだけじゃすまねぇ、俺がなるのは人類の天敵。そう人類に牙を向け続ける最悪の悪―――「人類悪(ビースト)」だ!!!」

 

 

 

「―――正義、それを人に投げ掛けるなんてナンセンスだろ」

 

「人には善性と悪性、等しくそれを持ってる。そんな人類に正義が何かなんて聞く事自体が可笑しい」

 

「俺の中に正義なんてモノはないんだよ」

 

「俺は―――ただ、自分がそうしたいって欲望を満たす為だけに人を救い続ける流離いの、救いのヒーローだ!!」

 

 

何処にでもいる男が、答えた。正義とは何かという問いに、男は言った―――くだらない問いだな。と

 

人間自体が善も悪も持ち合わせていて、結局「ヒーロー」も「ヴィラン」も同じ穴の狢。そんな奴らの争いに正義も悪も無い、同じ生き物が争っているだけに過ぎないのだから。曰く、正義なんて物は大衆が求める偶像であり自己満足の為に存在している。曰く、悪というモノはこの世に存在しない。悪と言われているモノは正義が変質したモノ、あるいは全く別の形の正義なのだと語った。それは「ヒーロー」の否定にも繋がる言葉なのに然も当たり前のように語った。

 

だが男は気にしない、理由は簡単。彼は「ヒーロー」が心底嫌いなのだから。「ヒーロー」の全てがそうとは言わないが大多数は「ヒーロー」に与えられる名誉や金に地位を求めている、それを真の「ヒーロー」と言っていいのだろうか、子供の頃からずっと疑問だった。目の前に敵がいるのに全力で向かわない、自分の力では倒せないからと言って応援が来るまで何もせずに自分の力で出来る範囲の事もしない。助けを求めている人に、手を伸ばそうともしなかった。ただ、言葉を送るだけ……。そんな姿に、心から失望した。

 

歳を取って成長した今なら分かる、あれは合理的な判断で確実性をとるならばあの判断は正しいのだと。分かっている、だが、幼い自分には希望であり光である「ヒーロー」が諦めているように見えたのだ。自分の手では負えないから誰か他の誰かに任せようと、役目を放棄しているかのように見えてしまった。そんな「ヒーロー」が大嫌いだった。

 

周りが「ヒーロー」に夢中になる中で自分は冷えた視線を向け続けていた、同調しなければ虐められると思い表面上は同じように繕いながら。そんな日々に嫌気が差して自殺を考えてながら屋上から空を見上げている時、ある人に出会った。その人からみれば自分は屋上から飛び降りようとしているように見えたから止めたらしい。自分を見てそう感じたから身体が動いた、本能に近い行動だったらしい。この事からこの人は本当に良い人だと思い、自分の思いを告げた。糾弾されても良かった。

 

「そうか……確かにそう見えてしまってもしょうがないだろうな。君の言う通り、今の「ヒーロー」は人を救う職業となり、その職業が得られる利益を目的にしている人達も多いだろう」

 

「だから、私が君の希望となろう。君に誓おう、私はどんな時でも人を救い続ける「ヒーロー」になろう。どんな時でも全力で人を助ける、それが君と私の約束だ!」

 

出会って間もない自分に、その人はそう言ってくれた。心から嬉しかった、自分の意見を尊重してくれただけではなくそれに対する誓いを立ててくれた事が酷く嬉しかった。だけどそれだけでは駄目だといった、自分だって何か誓わないと駄目だと必死に立ち去ろうとしているその人に言った。するとその人は浮かべ続けている笑顔を更に大きくしながら頭を撫でてくれた。

 

「ならばこうしよう、君も「ヒーロー」になるんだ。正義の味方という意味ではなく、人を救う、救いのヒーローだ!!」

 

それが、あの人が俺にくれた希望()だった。

 

 

「俺はあの日、新しい()を貰った。正義なんて俺の性には合わない、誰かを救う存在になる。それが、あの日俺を救ってくれた人と誓った約束だからな!!俺は絶対になる―――救いのヒーローに!!!行くぜ―――変身!!!」




なんか書いて見て欲しいという要望があって、初めだけ書きました。

個性とかは……というよりも私、ヒーローアカデミア初心者なのでこの先全然書けないんですけどね。

でも、なんだか海外の方の反応動画を少し見て、大塚さんが良い演技してるなぁ位には思い読んでみよう&見てみようとなりましたのでこれから勉強して行きます。

結構この原作のSS多いですもんね。

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