救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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バトルファイト、統制者。

「……これで今まで俺を一人にしたことはチャラにしてやるよ」

「あ、ありがとう初……ぜ、全身ボロボロだけど」

 

父への制裁が一応終息した初はコーヒーを淹れてそれを楽しんでいる、一真は全身に受けた痛みを感じながらも息子に辛い目に合わせてしまったという事を深く受け止めてその痛みを甘んじて受け入れている。事実として今まで息子をずっと一人にしてきた事に変わりはないのだから。やはりまだ視線をそらし続ける初はコーヒーを飲みながらある事を聞いた。

 

「父さん、橘さんが言ってた。カテゴリーキングのアンデッドが復活してるって」

「……ああっ気配で分かる。何処にいるかまでは分からないけど確かにキングがいるってのは分かる」

 

顔を引き締めながらそういう父に初は真面目な顔を作る、やはり経験的に言えば先代ブレイドでもある一真の方が様々な事を知っているのだから当たり前だろうが。

 

「それでな初、実は俺と母さんが仕事で海外で行ってたのは理由があるんだ」

「理由……?」

「ああっ誰かを助けたかったのは本当だ。だけど俺は同時にあるものを探してたんだ」

「あるものって……なんだよ」

「―――統制者」

 

統制者、それは有史以前にアンデッドたちを生み出し、彼らが行う自身の種の繁栄を掛けたバトルファイトを管理するゲームマスターにして創造主。ジョーカーアンデッドたる相川 始を生み出した存在でもある。神に近い何かである統制者は最後に残ったアンデッドである二体のジョーカーアンデッドに戦いを常に促してきた、それでも二人は必死に運命に抗い続けた。バトルファイトの継続、そして訪れるであろう破滅と戦うという運命と戦っていた二人のジョーカー。しかしある時からその統制者が全く戦いを促さなくなったのであった。

 

「でもどうして探したりなんかしたんだ……だって、父さんとその相川さんを戦わせようとするようなやつなんでしょ?」

「確かにな。だけど統制者の正体は言うなれば地球上の生物の“他の種より優れた存在に進化したい”という強い欲望の思念が結合して誕生したバトルファイトというシステムを進行させ、発動させるためだけに存在する思念体なんだよ。それがバトルファイトを促さないなんて可笑しいにもほどがある」

 

不審に思った一真は世界各地を捜索していた、その途中で妻と出会って結婚、そして初が生まれたらしい。初が生まれた後も何も起こらないことに平和を感じてはいたが同時に不安と不信感が募っていった。そして海外での仕事ついでに統制者についての調査をし続けていたらしい、そして遂にある国でとうとう統制者を見つける事に成功した。

 

「俺が見つけた統制者と思われるモノリスだけだった、それが俺と始に戦いを促してきた統制者だっていうのは分かったけど……既に統制者は完全に崩壊していた。バトルファイトは、終わっていたんだ」

「終わってた……!?」

 

永遠に続くと思っていた運命はある時を境に姿を見せなくなった、そして一真が調査の末に見つけたそれは統制者のかけら。何者かによって統制者が倒された、そうとしか考えられないような状況がそこには広がっていた。現地の人間たちはそこを地獄と呼んで誰も近づかない事などを聞いて足を踏み入れた結果、統制者のかけらを見つける事に成功した。

 

「それじゃあバトルファイトってやつはどうなるのさ……」

「正直どうなるかは分からないけど、バトルファイトの進行をする統制者がいなくなった今は多分無くなるとは思う……どっちにしろアンデッドは封印する必要はあるだろうけどね」

 

そう言って自分でコーヒーを淹れる父を見て初は何処か肩の荷が下りたような気がしてならなかった、世界の命運が掛かっている使命が無くなったに等しいからかもしれない。口角を上げていると一真はまだ油断はできないと述べる。

 

「どうして統制者が崩壊したのか、誰がどうやったのかを俺はそれを調べようと思ってる。もしかしたら、統制者の力を全て奪った何者かがいるのかもしれないからな」

「……それじゃあ父さんはこれからどうするのさ。またどこかに行っちまうのか」

「いや暫くは橘さんの所に通いながら色々と調査するつもりだよ。それに―――」

 

一真はソファに腰かけている初の隣に座ると頭を抱くようにしながら初を抱き寄せる。

 

「今まで寂しい思いをさせてしまった息子の傍に居たいからさ……」

「……馬鹿」

 

初は顔を背けながら父を軽く罵倒する、今更何を言っているんだと言いたくなるのを抑えながら初は父の温もりに安らぎを覚えていた。

 

「そうだ、父さん俺言ってなかった事あった」

「んっ何々?」

「俺さ、その……」

「なんだよ言ってみてくれよ、驚いたりしないからさ」

「そ、その、俺……け、け、けっ―――結婚を前提に付き合ってる人がいるんだ!!!」

「―――……ええええええええっっっっ!!!!!!?????」

 

いきなりの息子の告白に一真は腰を抜かして床に倒れこんでしまった。顔赤くしながら必死に口にした初は驚かないといった父に何処か恥ずかしそうな視線を送りながらも返事を待っていた。

 

「おっおおおおお前何時の間に……!!?い、いや結婚を前提!!?ウソダドンドコドーン!!!」

「う、嘘じゃねぇよ!!本当にいるんだよ!!!」

「だっ駄目だ駄目だ早すぎる!!結婚を前提になんて駄目だ!お父さん許しません!!」

「今更父親面するなよ全然帰って来なかったくせに!!」

「それとこれとは話が別だ!!結婚っていうのはお互いがお互いの事を分かりあって真に理解をしたうえでだな……」

「うっさい!!!俺は梅雨ちゃんとずっと一緒にいるって決めてるんだ!!」

 

この後、凄まじい言い合いの親子喧嘩に発展するのだがどこか嬉しそうに喧嘩する親子の姿がそこにはあった。


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