「やはり、言うべきではなかったかもしれなかった……」
「君がそこまで気に病むことはない。剣崎少年もきっとわかってくれるさ、それに今私達がすべき事は他にあるだろう」
橘とオールマイトは共に車で移動しながら先程の話の事で後悔を感じていた。致し方ないとはいえまだ幼く大人に守られる筈の存在である子供に世界の命運がかかっているという事を伝えてしまい、それによって大きなダメージを心に負わせてしまった。オールマイトが剣崎を部屋まで送り届けた後、橘も部屋に向かったのだが既に姿がなく雄英から出ている事を知った二人は剣崎を探しに彼の自宅まで移動していた。
「俺はきっと、彼に恨まれるだろうな……父親が生きている事を知っていたのにそれをずっと隠匿していたんだから」
「彼ならきっと分かってくれるさ。剣崎少年は聡明な子だ」
「そう言って貰えると有難いですよ、でも私は彼に殴られる事も覚悟してますよ」
子供にとっての父親は非常に重い存在、初の場合は特に父親を慕っていたし憧れとしてみていた面もある。そんな父は既に死んでいると割り切り、今まで様々な悲しみを押し殺してきたのにそれが無駄になったと分かったならばどれ程のものが湧き上がるだろうか……場合によってはボコボコにされるかもしれないが、そうなったとしても文句は言えない。そんな覚悟を携えながら剣崎の家近くの駐車場に車を止めると、その家の前へと立った。緊張が増していく中、インターフォンを押して中にいるかどうかを確認しようかと思った時であった。
『駄目だ駄目だ駄目駄目だ!!お父さんは絶対に許さない!!大体初はまだ子供だろうが、結婚を視野に入れるなんて早すぎる!!』
『うっせぇクソ親父!!俺が今までどんな思いで生きて来たのか知らねぇ癖に知った顔すんじゃねぇ!!!』
『ク、クソ!?初、お前なんて口を利くんだ!?』
『アンタにはそれで十分だ育児放棄クソ親父!!』
『ま、また言ったなぁ!!?』
と玄関前まで来たところで中から壮絶な怒声による喧嘩の声が飛び込んできた。ハッキリと聞こえて来る訳ではないが、取り敢えず初が中に居る事と誰かと喧嘩しているのは理解できた。しかし普段の初を知っているだけに思わずオールマイトと橘は顔を見合わせてしまった。
「け、剣崎少年……?」
「誰かと喧嘩、でもしているのか……?」
「「どうしよう……」」
思わず口を揃えながらどうするべきかと思ったが、ご近所へのご迷惑を配慮して喧嘩を止める事を決めた二人は迷った挙句インターフォンを押す事にした。これでこちらに反応してくれるといいのだが……と思っていると慌しい足音をさせながら玄関へと駆けてくる音と共に扉があけられ、そこからやや険しい顔つきの初が姿を現した。
「はいっすいませんけど今取り込み中で……ってた、橘さんにオー、じゃなくて八木さん!?」
「や、やあ剣崎少年。私と橘君が来たんだけど……な、なんか思ったより元気そうだね……?」
「君に話した事で落ち込んでいると思ってきたのだが……立ち直ったっと思っていいのかな?」
「あ~……いや立ち直ったというか……それ以上の出来事が起きて吹っ切れたというか……もうそれで起きた怒りでもうどうでもよくなったというか……」
「「それ、以上の事……?」」
自分が世界の命運を決める切り札であるという事実以上の出来事なんていったいどういう事なのだろうかと、思わず思っていた時の事である。初の背後からハンコやらを持ったもう一人の影が見えてきた。
「初、結局何だったの?宅配便なら今ハンコ持って、来た、けど……あっ」
「……剣崎、お前……」
「た、橘さん……えっと、その……あはははは……」
「えっ剣崎、えっ?剣崎少年のご親族?」
初の背後から姿を見せた一真の姿を見て橘は思わずポカンと口を開けて呆然としてしまった。一真は一瞬同じ様子だったがなんとか笑ってごまかそうとしている。そして唯一全く現状を理解出来ないオールマイトは一真の顔と初の顔を見比べて、確かによく似ているから親族の人なのかなと思っていた。
「あ~……えっと、八木さん。それ以上の出来事っていうのがその、お話を聞いたその後にこれと再会しまして……紹介しますね。長年俺を育児放棄してた親父の剣崎 一真です」
「は、初お前そんな紹介の仕方は!?」
「……はいぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!!?」
「おい剣崎、俺は初君に殴られる覚悟できたのに何故、俺に連絡の一つもなしに日本に居るんだ。もう一度言うぞ、なんで居る」
「いやその……俺もいい加減、初に会いたかったというか……」
「初君、殴っていいぞ。俺が許可する」
「ちょっと待ってくださいよ橘さん!?俺もう十分すぎるぐらいに初に殴られてるんですけどぉ!?」
「自業自得だ」
「という訳なんです」
「な、成程……しかし凄まじいタイミングで再会したもんだね……」
「全くっすよ……」
取り敢えず橘とオールマイトに上がって貰って一真と会った際の経緯や一真がこれまでやってきたことについて説明した初。それを聞くと橘は大きなため息とともに自分の覚悟と申し訳なさが吹き飛んでしまった。オールマイトもオールマイトでそりゃ吹き飛ぶわ、と納得しつつも若干呆れてしまっていた。
「しかし、何故それで喧嘩を……普通こういう時って長年会えなかった親子の再会で感動的になると思うけど」
「それは思いますね」
「そうなんですよ聞いてくださいよ橘さん、初の奴まだ子供なのに結婚を前提に付き合ってる子が居るっていうんですよ!!?まだ早すぎですよね!!?」
「……まさかそれで喧嘩していたのか?」
若干引き気味に尋ねると力強く頷く一真にガックリと項垂れる。本当に自分が抱いていたのは何だったのだろうか。
「ああっ蛙吹少女の事か。しかし剣崎さん、私から見ても少年と彼女は本当に良い関係を築けていますよ」
「だとしても結婚を前提なんて許容出来ません!!だってまだ高校生ですよ!?」
「ま、まあ言いたい事はご理解出来ますが」
オールマイトとしては父親としての意見を言う一真の言葉も理解できるが、交際すると決めた場に居合わせた身としては二人を応援したいという気持ちも強いので何とも言えない。
「剣崎、初君はもう十分大人だろ。恋愛位好きにさせてやれ、というかお前に口を出す権利あるのか?」
「そうですよね橘さん!これに口を出す権利なんてないですよね!!」
「初、お前何時からそんな口が悪くなったんだよ!!」
「アンタが帰って来なかった間にだよ馬鹿親父!!」
「だぁあああだから口が悪すぎる!!これじゃあお母さんに顔向け出来ないじゃないか!!あと、お父さん認めないからな!!」
「喧しい!!顔向けできないのはあんたの自業自得だろうがぁ!!」
「う、う~ん落ち込むよりはいいだろうけどこれはこれで問題な気が……って橘君なんでそんな嬉しそうな顔を?」
「いえね……これも家族のあるべき形の一つかなっと思いまして」
「
「親父、何言ってんのか全然分からねぇ」