救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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翌日から

「はぁっ……」

 

結局一日中、帰ってきた父と喧嘩をしていた初。些細なことで言い合いそこから盛大な口喧嘩、今思えばなんであんなことであそこまで喧嘩出来たなと思うレベルで喧嘩をした。今までしなかった分を一気に取り戻したといっても過言じゃないレベルで喧嘩をした。父が帰ってきてくれたのは確かに嬉しい、うれしい事はうれしいのだが素直に喜ぶことなんてできない。

 

帰って来れなかった理由などもしっかりと理解して致し方ないとも思う、だがそれだけで割り切れるほど初の中にあった感情は簡単ではなかった。両親がいなくなってからの年月、剣崎なりに必死に過ごしてきたそれが無駄になったような思いが苛立ちと怒りを生んで、それを父にぶつけてしまっている。余りにも子供っぽい行動に自分に辟易してしまいながら自宅を早々に出て雄英へとやって来ていた。

 

「剣崎君、昨日はその大丈夫だったの?」

「出久か……いや、いろいろ大丈夫じゃない」

 

教室へと辿り着いて席で頭を抱えるようにしていると早くやってきた皆が自分を囲むように話を聞いてくる、その中で出久が心配するように声をかけるが思わず大丈夫じゃないと言葉を返してしまった。その言葉に周囲は顔を見合わせて不安そうな顔を作る。

 

「剣崎さん何か問題でもありましたの?宜しければお話ししていただければお力になりますが……」

「そうだぜ俺たちが力になるぜ!!」

「あ~……有難いんだけどこれは何と言ったらいいのか……う~ん……言葉に困るな」

 

本当に言葉に困る。自分が世界を救う切り札であると知らされた後に今まで死んだと思っていた父親が生きているとわかり、その直後にその父と再会した。なんて事を一体どのようにすればオブラートにして伝えられるだろうか。

 

「なんだよクラス一のイケメンがそこまで困るとか超気になるぜ、メシウマさせてくれよ!」

「ゲスかよ峰田」

「お前それだからモテないんだよ」

「うるせぇぇええええ!!!オイラ何てどうあがいても剣崎にモテで勝てるわけねぇんだからこの位良いだろうがよぉ!!!」

 

不純な気持ちで理由を聞き出そうとする峰田だがそれにどこか触発されたのか、それともそんな愉快な姿に元気でも貰えたのか剣崎はどうにか言葉を作って話をする事にした。

 

「そうだな……強いて言うなら……」

「言うなら!!?」

「海外に仕事行ってて一切連絡寄こさなかった親父がいきなり帰ってきてから思いっきり喧嘩したって所かな」

「―――えっ……?」

 

剣崎の言葉に誰かの困惑に染まった声がした。それは剣崎の父親に対するものなのか、それとも剣崎らしくない荒々しい言葉遣いに対するものなのか、喧嘩などするようには見えないのに父親と喧嘩したということだからだろうか。いや違う……それは彼の両親の真実を知っているからだからである。聞いている話と今彼が話している話は明らかに食い違っている、だが彼がうそを言っているとも思えない……どういうことなのだろうか。

 

「そうか、テストの時の剣崎の家に上がった時に言っていたな。ご両親は海外にて命を救う素晴らしい活動をしていると」

「んでそのお父さんが帰ってきたのに喧嘩したのか?なんでまた」

「そりゃするさ。今まで連絡一つ寄こさなかった癖に今になって帰ってきていきなり俺が決めた進路にケチをつけるんだ、腹も立つってもんさ」

「だからってお前が喧嘩か……正直想像出来ねぇな」

 

轟の言葉に周囲の皆も素直に同意していた。剣崎のイメージといえば優しい笑顔の頼りになるクラスの優等生というものが強い。誰かの上に立っても冷静且つ迅速な指示と丁寧な状況確認能力が印象深い為、荒い言葉遣いやら喧嘩という言葉は全く似合わないというのが素直な印象。

 

「俺だって喧嘩ぐらいするさ。親父とは相当派手な殴り合いしたからなぁ……」

「おいおいそれ親父さん大丈夫なのかよ……お前、体育祭1位な上にあの虎さんの地獄の特訓を乗り越えてるんだろ?」

「大丈夫だよ、親父瀕死になってたけど30分もしてたらピンピンしてたから」

『瀕死にまで追い込んだのかよ!!?』

 

実際全身から煙を出しながら床に転がっていたが、暫くしたら復活していたのでまあ問題はないだろう。

 

「剣崎、俺が言えたことじゃないだろうけど言うぞ。お前、どういう親子関係してんだ」

「いやぁ……だって何年も連絡来なかったら怒るでしょ普通」

「だから瀕死になるまでやるのか……いや、俺も親父とそうなった時はその位やるべきなのか……?」

「やってもいいと思うよ。全部抱えてるもん吐き出せたし」

 

轟は剣崎に謎の感化を受けているのか、エンデヴァーとの殴り合いを想像しながらどうやって攻めていくべきなのかを考えだしてしまった。それに周囲がやめておけと止めるのであった。

 

「剣崎、放課後俺の個性で近接戦するときの訓練付き合って貰っていいか?」

「もちろんいいぞ。んじゃ先生に訓練場の使用許可取らねぇとな」

 

そんなやり取りをしていると梅雨ちゃんからの視線を受け、それに気づいた剣崎はちょっとトイレに行ってくると言って席を外していく。そして適当な場所で待っていると梅雨ちゃんがやってきた。彼女とともに仮眠室へと入ると彼女は何処か説明を欲しているかのような不安そうな瞳を作っていた。

 

「剣崎ちゃんあの……どういうことなの?だってあなたのお父さんは……」

「ああ。死んでる、俺もずっとそうだって思ってさ……思ってたのにマジでひょっこり帰ってきやがったんだよあの糞親父……」

 

困った表情を作る剣崎に梅雨ちゃんはそれが嘘ではなく真実であると悟る。

 

「でもどうして喧嘩なんてしちゃったの?何年も連絡がなかったのは本当だけど本当の理由じゃないんでしょ?」

「ああまあ……そのさ、親父に俺は梅雨ちゃんと結婚を前提に付き合ってるって言ったらそんなの認めないって言われちゃって……カッと来て……」

 

それを聞いて梅雨ちゃんは一瞬あっけにとられたが直ぐに笑みを作っていった。

 

「剣崎ちゃんってやっぱりどこか子供っぽいわねケロケロ♪」

「いやぁ……まいったなぁ」




次回、遂にBIG3登場……!?

初「え"っ何でここに……!!?」

そして、何かが起きる!?

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