初のヒーロー基礎学は戦闘訓練となった1-A、そんな彼らを待っていたのは室内での戦闘訓練。その訓練のトップバッターを任された出久はパートナーとなる麗日と共に舞台となるビルへと入って行った。そんな二人を迎え撃つかのように、ヴィランチームの爆豪は先手必勝と言わんばかりに攻撃を仕掛けたがそれを出久が迎え撃つ。出久が爆豪を抑えている間に麗日が核の奪取を試みるが、防衛を行う飯田と戦闘を開始する。
結果からすると、勝利したのはヒーローチーム。出久と麗日であった、タイマン状態であった出久は爆豪の癖や行動を上手く予測しそれを攻撃に生かしながらも麗日の援護を行った。それによって飯田との戦いが膠着しかかっていた麗日を上手くフォローする事に成功し、見事に『核』の奪取判定をもぎ取る事に成功した。
「やったな、緑谷君」
「やっぱりいいわねぇんああいうの♪」
出久は終了後に医務室へと送られてしまったが、あれは名誉の負傷とも言えるだろう。タイマン相手の爆豪の個性は爆破、一対一の戦いに多対一でも力を発揮出来る戦闘向きな個性。あれと渡り合えたのは十分な戦果と剣崎と京水は彼を大いに評価した。そしてもう一人―――。
「飯田、中々お前もやるじゃないか」
「あの演技も中々イケてたわよ♪」
「い、いやその……有難う」
真面目さ故か、本物のヴィランのように振舞おうとしつつも確りと状況の把握と相手への警戒と『核』の防衛を行っていた飯田も十分に評価されるべき。派手さで言えば出久と爆豪が飛び抜けているが、安定さや安全性を考えたら場合は飯田の行動が最も良いだろう。
「さてとっ……次は場所を変えての訓練だ!第二回戦での戦いチームは指定するビルに移動するように!!」
いよいよ剣崎と京水の番となった。対戦相手は上鳴 電気と耳郎 響香のヒーローチーム、自分達はヴィランチーム。出久に負けないように自分も気合を入れなければと気持ちを強く入れる。
「さてとっ……ワタシ達が守る『核』があるのは7階建ての5階の此処ね」
「ちょっと向こうはどんな風に来るだろうな……確か、二人の個性は……」
「耳郎ちゃんは確か、自分の音を増幅したり耳のイヤホンを壁とかにも刺せる個性で鳴上ちゃんは帯電って個性よ」
『核』を前にしながら作戦会議を行う剣崎と京水。自分達は基本的に防衛策を取るべき、立場的にはこちら側が有利だが……向こう側には索敵能力という意味で厄介な個性持ちがいる。守っていてばかりでは後手に回り続けて不利になるのを待つだけという物。ならば取る手段は―――
「オフェンスとディフェンスに分かれよう。京水ちゃんがディフェンスを頼めるかい?」
「任せて了解よん♪初ちゃんからのお願いなんだから喜んで引き受けるわん♪」
そう言いながらも早速身体を変化させていく京水、瞬時に身体は黄色い怪人のような姿になっていく。本人はこの姿を「ルナ・ドーパント」と命名しているらしい。ドーパントは何処から来ているのかと聞いたら、神経伝達物質であるドーパミンから考えたとの事。
「さてと、この『核』をようにちょっと頑張っちゃおうかしら?それで初ちゃんはどうするの?」
「そうだな……まずは、相手の気配でも探るさ」
『〈
静かに目を閉じる、ラウズされた力が意識をより深く鋭くしながらビル全体へと掛け巡って行く。感覚が研ぎ澄まされていく感覚の中で聴覚と肌が感じ取った。歩く音とそれによって生じる震動、酷く微細な物だが強化された五感には確りと伝わってくる。掌の上で動物が動いているかのように汲み取れる、スーツがそれを助けるようにもしてくれている……静かに目を開けると京水に笑顔を向ける。
「んじゃ行ってくるから此処は頼んだよ!」
「ぁっ……oui,monsieur!!」
『〈
勢い良く飛び出していく剣崎はビルの内部を走り抜けて行く、意図的に大きな音を立てて響かせるようにしていく。更にラウズした力、足先の重量を増して一歩一歩の音が更に大きくなるようにしながらも超スピードで向かって来ていると強く意識させる。聴覚が優れているのならば、此方が接近していると分かると一旦引くか戦闘体勢を取ろうとする。そして隠れながら音を聞いて、此方の様子を伺う。先程までいた場所に到達すると思っていた通りにそこには誰もいない、だが―――
「そこぉぉおおおっっ!!!」
凄まじい勢いで身体を回しながら廊下の一部ごと、壁へとでかでかと穴を開ける。ガラガラと崩れていく壁の奥には部屋の奥で静かに身体を沈ませながら様子を伺っていたであろう二人が驚愕した表情で此方を見つめていた。
「見つかったぁっ!!?ってかはっやっ!!?」
「あ、あああ余りにも早すぎるでしょ!?」
流石に思っても見なかった速度での発見に二人も困惑しているが、この場合は剣崎が化け物じみている能力を発揮しているので二人は悪くはないだろう。隠れるポイントも超スピードで迫っている剣崎の事を差し引いて考えると見事な着眼点の隠密行動と言える。
「生憎、俺は人の気配には敏感な性質でね」
「―――やるしか、ないわねこれ」
「確かに、あのスピードなら逃げても無意味!ならやってやる!!」
二人揃って戦闘体勢に入る、今度もあの速度で追いかけられたら確実に逃げられない。だとしたら倒すしか道は残されていないと考えたのだろう、それも正解。それなら―――
「それなら、勝ってみな俺に……!!」
「初ちゃんどうなったのかしら~……こっちの準備は整ったし何時来ても大丈夫。例え天井突き破ろうか床を壊そうがOKだけど」
一方、京水は迎撃準備を完了させながらも何処からヒーローチームの二人が来ても言いようにしていた。全方位に警戒心を向けながら腕を伸ばして充満させて防御と攻撃を同時に行えるようにしている。「幻想」という未だ不明瞭な個性、それを京水は彼なりに完璧に使いこなしている。それで気になるのが勢い良く飛び出して行った剣崎の事だった。通信機で連絡を取れば一発だが、それで耳郎に通信音を聞かれたら拙いと思い行えない。剣崎の事だから大丈夫と信じているが……。
「待っているだけって結構辛い物ね……恋ってやっぱり病気ねぇ……」
少々溜息が漏れてしまったその時だった。
―――ウェエエエエエエエイッッッッ!!!!
独特なシャウトと共にビル全体が揺れる、そこまで大きな揺れという訳でもないがその直後に
『ヒーローチーム確保っ!!勝者、ヴィランチーム!!!』
「アァアン初ちゃんってば、ワタシの見えない所で活躍したのね!!痺れるぅ!!」
剣崎が戦闘を行った場所では倒れこんでいる上鳴と耳郎の姿があった。その身体には確保のテープが巻かれており、剣崎によって確保されているのが明白なっている。その剣崎は最後にはなった攻撃の後を見ながらある事を考えていた。
「……良し決めた。今のキックは「マイティキック」にしよう」