救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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反省会と梅雨ちゃんの勘

全ての戦闘訓練が終わった後、気が付けば日も傾いている頃。下校時刻となったが1-Aの皆の多くは教室に留まったまま戦闘訓練の反省会を行っていた。その中には当然剣崎と京水の姿も含まれている。出久は未だ保健室から戻っていない、爆豪との戦いによって相当深く傷付いてしまったのだろうか。少しの心配を残しながら反省会が進められていく中で、剣崎と京水、そして耳郎と上鳴の訓練について触れられた。その場で総評自体は述べられた物の、矢張り直接本人に語りたいという部分もある。

 

「剣崎、お前の足ってとんでもなく速いよな。飯田よりも速いんだもん」

「ホント……凄い速くて焦っちゃったから、ウチ凄いビビッた」

「その後に壁を蹴り砕いて見つけて来るもんな」

 

そんな話題は第二回戦に行った物へと入っていた、内容の中身は矢張り京水ではなく耳郎と上鳴を確保した剣崎についてだった。それについては京水も同意らしくどのように確保したのか見ていないので、どんな風だったのかを直接聞きたかったとの事。

 

「俺よりも速く動ける上にあの力の強さ……正直、俺も眼を丸くして見ていたよ」

「ワタシも是非とも見たかったわアァン……」

「あれは正直戦闘服のお陰でもあるんだよ。俺の奴は動きを増長するマッスルスーツみたいな役割も出来るから」

「あーそっか、剣崎の個性って確か身体能力の強化だっけ?元の奴が戦闘服で高められたのが個性で強くなるからあんなに凄かったのな」

 

そう言う事と言うと周囲は納得したように頷いた。

 

「あっでもさ、ウチらの場所とかはどうやって見つけたのさ」

「あれは純粋に人の気配を探ったんだよ、後は感覚と意識を研ぎ澄ませてそれを辿った訳」

「それで発見出来るって……お前化け物かよ」

 

上鳴の言葉に思わず周囲の生徒達も多少なりとも頷いていた。幾らなんでも隠れ潜んでいた相手を、気配も極力押さえていたであろう二人を即座に発見したのが個性でもなんでもないと言われると別次元の何かのような印象を受けてしまう。

 

「剣崎ちゃん、一つ良いかしら。私思った事を何でも言っちゃうの」

「へぇ……でも良いよ。何かな梅雨ちゃん」

 

そんな中で一歩歩み出て来たのは梅雨ちゃんだった、少々首を傾げながらも剣崎に視線を向ける。そんな彼女の言葉に答えようとする剣崎だったが、そんな彼女から漏れた言葉に剣崎は身体を硬直させる事になってしまった。

 

「貴方って―――なんだか「仮面ライダー」に凄い似ている感じがするんだけど気のせいかしら」

「―――っ……か、仮面ライダーにって……そう、かな?」

 

ポーカーフェイスこそ作れているが、剣崎は酷く驚いてしまった。僅かに言葉が震えており動揺が見え隠れしてしまっている、が辛うじてそれを隠し続けられている。そんな梅雨ちゃんの言葉に教室に「仮面ライダー」の名前が響いていく。

 

「それってあの「仮面ライダー」かい、あの違法自警者にも関わらず既にファンクラブまで出来てるっていうあの「仮面ライダー」で良いんだよね蛙吹さん」

「梅雨ちゃんって呼んで、飯田ちゃん。ええ、あの「仮面ライダー」に剣崎ちゃんは凄い似ている感じがするのよ」

 

じっと見つめてくるそんな視線、先程から全く変わらない表情だが何処か重い視線が自分に突き刺さってくる。何か追究じみた物を感じる剣崎は言葉に詰まってしまう、そんな中で如何してそんな風に思うのかと言葉が飛んでくる。

 

「でも如何してそう思うの梅雨ちゃん?」

「私半年前に「仮面ライダー」に助けられた事があったの、帰り道でいきなり向かってきた「ヴィラン」に反応出来なかったの」

「えええっっ!!!?何それ凄いやべぇじゃん!!」

「それでいきなりの事だったし、凄いスピードだったから目を閉じちゃったの。でも何時まで経っても痛くなかったの、それでね目を開けたら―――」

 

―――そこには「ヴィラン」の攻撃を受け止めている剣士の背中があった。その「ヴィラン」は突然現れた剣士に驚きつつも剣の構えを取りながら声高に叫んだ。

 

『俺の個性はあらゆる物を切り裂く事が出来る、てめぇも今すぐ切り刻んでやるぜ……「仮面ライダー」さんよぉ!!!』

『……』

 

無言のまま、両腕を剣にしながら向かってくる「ヴィラン」に自らも剣を抜き放ちその切先を向けた。梅雨ちゃんは世間を騒がせているあの「仮面ライダー」が目の前にいると言う現実とその彼に守られている状況に付いて行けずに尻もちを付いてしまい、やや放心状態だった。そんな彼女を置いていくかのように「ヴィラン」は両腕で「仮面ライダー」へと斬りかかっていく。あらゆる物を切り裂くと豪語するその個性、それを発動させながら相手の剣を両断しようとする―――が

 

『な、何ぃ切れねぇ……!?な、何でだ俺の、個性はどんな物でも切り刻める筈だぁぁっっ!!!』

『……』

 

信じられない物を見たかのように絶叫を上げながら斬りかかってくるそれをあっさりと受け止めつつ、剣で大きく弾き飛ばすと鋭い一閃を浴びせかけて逆に「ヴィラン」の身体に大きな傷を作った。それで血を吐きながらも「ヴィラン」は苦しみもがきながらも這いずる回るようにそのまま、壁などに身体をぶつけながらも逃げていく……そんな相手を圧倒した「仮面ライダー」は剣を納めると振り返って彼女の方へと向いた。

 

『っ……!!』

 

思わず緊張してしまった、ゆっくりと近づいてくる「仮面ライダー」に緊張からか心臓が早鐘を打ち鳴らしていく。そして距離が後僅かという所で彼は膝を付き、視線を合わせるようにしながらそっと手を差し出した。まるで自分に怪我は無いか、と問い掛けてきているかのような優しく気遣うような動作に目を白黒させてしまう。

 

『だ、大丈夫……っ』

 

彼の手を取って立ち上がった梅雨ちゃんは少しの間、助けてくれた剣士を見つめていたが彼は軽く彼女の頭を撫でるとそのまま高々と跳躍してそのまま何処かへと去って行ってしまった。

 

「そんな事があったんだ……」

「すっげぇだなやっぱり「仮面ライダー」って!!!俺も一回会ってみてぇ!!」

 

梅雨ちゃんが語った「仮面ライダー」についての話に気付けば全員が聞き入っていた。実際に目の前で語られる「仮面ライダー」の存在感とその強さに皆が驚きを隠す事が出来なかった。

 

「やっぱり凄いわねぇ……一度で良いからお会いして、ワタシもお近づきになりたいわアァン!!」

「剣崎ちゃんは雰囲気って言うか、個性も「仮面ライダー」がジャンプしたって行ったじゃない?剣崎ちゃんのジャンプってなんだか凄い似ている気がするのよね」

「そ、そうなんだ……「仮面ライダー」と同じ、か……」

 

何処か複雑そうな視線を彷徨わせる剣崎、彼の心中は穏やかではなく激しく打っていた。それを必死に出さないようにポーカーフェイスを続けているが、それを見つめる梅雨ちゃんは何かを理解したような視線をただただ剣崎に向け続けた。


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