救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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仮面ライダーと自分らしさ

剣崎は自宅へと帰るとシャワーを浴び、ベットの上へと寝転んだ。

 

……貴方って―――なんだか「仮面ライダー」に凄い似ている感じがするんだけど気のせいかしら。

 

「仮面ライダー……か」

 

梅雨ちゃんにそう言われた時、思わず心臓がとんでもない大きい音を鳴らした。それは「仮面ライダー」が世間一般で「ヒーロー」の扱いを受けている事に対してと自分がそれと同じと言われた事に対する物だった。別にそれを侮辱とは思っていないし、彼女が言っていた通り、梅雨ちゃんが思っていた事を言っただけなのだろう。彼女からしたら自分はそう見えるのだ。

 

「俺は―――救いのヒーローになりたいんだ」

 

子供の頃からずっと思っていた、今の「ヒーロー」達の殆どは真の「ヒーロー」ではなく職業としての「ヒーロー」でしかない。だから自分は周囲との違いに苦しんだ、真の「ヒーロー」ではなく上っ面を取り繕う「ヒーロー」達に憧れる周囲の人間が嫌でならなかった。だからこそ―――オールマイトに憧れる。あの人こそ真の「ヒーロー」だ、あの日―――自分が自殺すら考えていた所を咄嗟に身体が動いたと言って助けてくれたあの人、自分の希望であり続けると言ってくれた人に。

 

「俺は―――仮面ライダー、それが今の俺」

 

剣崎 初、その正体は世間を騒がせる違反自警者であり救いの英雄と呼ばれる「仮面ライダー」その人である。始めは我慢がならなかっただけだった、救いのヒーローとなると約束して将来の為に身体を鍛える日々、だがそんな日常の中でも「ヒーロー」達の行為がいやでも目に入った。それが―――嫌でしょうがなかった。だからこそ―――自分は法律で禁じられている事をした。

 

―――いや、例え間違いだとしても。それが世間的に悪い事だとしても……救いを求める声を無視する事が出来ない。非難されても良い、糾弾されても良い、その程度の事で人の命が救えるなら……救えた人の命はもっと綺麗に輝く筈だ。

 

「そうだよな……そう決めたもんな。俺はこの力を―――誰かを救うために使う」

 

そう決めると顔を引き締めるために思いっきり叩く、余りにも力が強すぎた為に悶絶するが……すっきりとした表情になりながら下に下りて夕食を作る事にした。下に下りた時、玄関の靴棚に置かれている写真が目に入る。綺麗な女性と男性が小さな男の子を抱き抱えながらカメラに向かって笑っている写真だ。

 

「―――そうだよな、俺は笑顔の時が一番俺らしくてカッコいいんだよな。ねっ母さん」

 

 

「ケロ、剣崎ちゃんおはよう」

「ああっおはよう梅雨ちゃん」

 

翌日、登校の途中で梅雨ちゃんと一緒になった剣崎。彼女から声を掛けられると自然と笑顔でそれに答えた。明るくて満面の笑みに思わず足を止めてしまった梅雨ちゃんはやや頬を赤くしながら隣を歩き始めた。

 

「剣崎ちゃん、何かあったの?なんだか気分良さそうだけど」

「特に何もないよ。ただ思い出したんだよ」

「何を?」

「俺は―――笑ってる時が一番俺らしくてカッコ良いんだって事!」

 

笑みが浮かんでくる、剣崎は誰かを助けてその人の安全が確認出来た時には思いっきり笑っている。例えその顔は仮面で見えなくなっていようと、助けられて良かったという安心と安堵、そして達成の笑みを浮かべる。彼にとって地位や名誉なんて必要ない、例え偽善者と言われようとしても止まらない。自分がそうしたいのだから、そこに善も悪もない。それに―――偽善だとしてもそれでも善だと言ってやる。

 

「け、剣崎ちゃん……今の貴方、凄い輝いてる感じするわよ」

「そう?有難う。そういう梅雨ちゃんも、今日も可愛いよっ♪」

「ケ、ケロッ!?」

 

真正面から可愛いと言われてしまったためか、思わずフリーズしてしまった。そのまま歩いていく剣崎の背中を見つめながら、呆然としてしまった。あそこまで真っ直ぐで満面の笑みで可愛いなんて言われた経験がないから、混乱してしまったがそんな彼女を後ろから肩を叩かれてハッと我に返る。そこには京水が笑顔を作りながらウィンクを飛ばしていた。

 

「おっは~梅雨ちゃん♪如何したのこんな所で」

「お、おはよう泉ちゃん」

「あらやだっ顔が凄い赤いわよ?もしかして熱?」

「だ、大丈夫よ大丈夫。ちょ、ちょっとあれなだけだから……」

「?変な梅雨ちゃんね、あっ初ちゃんいるじゃなぁ~い!!一緒に行きましょうよ、初ちゃあぁんおっは~♪」

 

先程まで一緒に居た剣崎と再び隣あって歩く梅雨ちゃんは何処か、剣崎の顔を見るのを恥ずかしそうにしながら雄英まで登校するのであった。が、その雄英の校門の前では多くの報道陣が詰めていた。登校するのに著しく邪魔なほどに。

 

「あらやだマスコミがあんなに!!お化粧は崩れてないわよね初ちゃんに梅雨ちゃん!?」

「化粧してるんだ京水ちゃん、全然気付かなかったよ。俺からすると何時も見てる君通りだけど」

「大丈夫よ泉ちゃん、ほら手鏡貸すから確認して見て」

「まっ―――マスコミが集まる理由なんて検討が付きすぎるレベルであるけどな」

 

マスコミの目的なんて一目瞭然、オールマイトが教師に就任しているからだろう。平和の象徴が雄英高校の教師となった事は日本全国に波紋と衝撃を与え大きな話題となっている。そんな彼がどんな授業をするのか誰もが気になるし彼のコメントを取ろうと必死になっている。そんなマスコミは雄英の制服を着ている生徒達にもインタビューを敢行し少しでも情報を得ようとしている。

 

「プロヒーローになれば沢山のインタビューにTVの出演とかもいっぱいする、今のうちにメディアに慣れておくのも悪くない手だと思うわ。この前もオールマイトが出演してたのを再放送してたし」

「でも、これだとプロヒーローになるために通ってる雄英に入れないわよ?」

「マスコミなんてそんなもんさ、報道の自由とか言いながら好き勝手に取材しては少しでも食い扶持にならない文句言って来る連中だ」

「きっついわね剣崎ちゃん」

 

剣崎がマスコミ嫌いなのも理由がある。「仮面ライダー」として活動している時、取材と言って救助活動中の自分に近づいてくる。そして、危険な場所に足を踏み入れて自分さえも要救助者になって自分を先に助けろという。勿論助けはするが……少しでも遅いと文句を言って来るしニュースや雑誌、新聞に「救助者を選り好みする偽善者」と書かれた事もある。自分から危険地帯に足を踏み入れて、助けたのにこれかと思った事が何度もある。

 

「はぁぁっ……あれに慣れるのか……。オールマイト、あんなの受けながら活動してたんだからすげぇよなぁ……」

 

と呟いた言葉に梅雨ちゃんと京水は同意を示した。


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