襲撃して来た敵を一掃した剣崎、このままの姿でいるかそうでないべきか悩んだが一旦解除して、行動をする事を決めた。最悪の場合、自分が「仮面ライダー」だとバレたら死ぬほど怒られるかもしれないが……それはそれで覚悟しつつも一応保険を掛けておくとしよう。全力で走りながら相澤を援護するべきだと考えて、中央の噴水の広場へと向かう事にする。そこで見たのは―――
「オールマイトッ……!?」
そこではオールマイトがこの場へと乗り込んできた「ヴィラン」らのリーダー格の奴らと敵対している様子が見て取れた。平和の象徴である彼がこの場に居るならばもう、解決したも同然……だと思いたかったが連中は此処に攻め込んできている事実とある言葉が引っ掛かる。
―――平和の象徴と謳われております「オールマイト」に息絶えて頂く為でございます。
「ヒーロー」の巣窟とも言い換えても良い雄英に乗り込んでいる、それはつまり準備が整えられているという事。今現在オールマイトとやりあってる巨大な「ヴィラン」、あれが対オールマイトの最終兵器なのだろうか……そうなのかは分からないが、とにかく今自分が出来る事を精一杯やりたいそう剣崎はそう思った。
「今度は俺が、オールマイトを助ける……あの時の恩、お返しします!!変身!!!」
『TURN UP』
「三人とも相澤を頼む。意識がない。早く!!」
USJへと駆けつけたオールマイト、その圧倒的な力と速度で危機に迫れていた生徒と既に重傷を負い戦闘不能となってしまっている相澤を助ける事に易々と成功した。ヴィラン連合を名乗る敵のリーダー格、それらを前にしながら緑谷、梅雨ちゃん、峰田を庇いながら直ぐにこの場から離れるように促す。
「だ、駄目ですオールマイト!!あの脳みそヴィラン、力を抑えた僕のスマッシュでもびくともしないぐらいに硬い……!!普通のヴィランじゃないです!!」
「(スマッシュでも大したダメージが見受けられない、か……)大丈夫だ緑谷少年!それに相澤君が言わなかったかい、ヒーローは一芸では務まらないのさっ!!」
何か策があるような言い回しをして避難を促すオールマイト、こんな状況だから心強くて安心するような笑顔が力を注ぎ込んでくるかのような感じがする。そんな簡単にやらせてあげられるかなと言いたげに、脳無と呼ばれる脳みそヴィランが緑谷達の方向を向き直り凄まじい速度で向かって行こうとする、が―――そんな行動を無効化するかのような圧倒的な初動の差で脳無の首に強烈な蹴りが加えられた。
「あ、あれはっ……!?」
「えええっなんだよまた敵!!?」
「違うあれは―――仮面、ライダー……!!」
脳無へと一撃を加えた者の正体を梅雨ちゃんだけが理解していた、鎧を着込んだ青い剣士。嘗て自分を救ってくれた剣士である仮面ライダー、その人だった。それは首へと深く深く蹴りを打ち込むとそのまま反動でジャンプするとオールマイトの隣に着地する。
「すまない助かったよ仮面ライダー、すまないが力を貸しては貰えないか。君の力があればこの場を切り抜ける事が出来る……!!!」
「(コクッ)」
『〈
オールマイトの言葉に無言で首を縦に振ると一枚のカードをブレイライザーへとラウズして、その力を体へと取りこむ。そしてオールマイトと相澤へと手を差し向けると掌から光のような物を放出していく。その光に一瞬警戒する緑谷達だったが、光が吸い込まれて行く毎に相澤の負傷が消えるように治癒して行く。同時にオールマイトの身体にも異常なほどに体力と活力が漲っていく。
「おおおっ!?おおおおおっっ……私の身体に活力が……来たぁぁぁぁっっ!!!!!」
「オ、オールマイト!?な、なんか超元気になってる!!?」
「か、仮面ライダーってこんな事まで出来るのかよ!?相澤先生の傷まで治ってるぜ!?」
「凄い……」
普段よりも1.5倍ほどに筋肉が増量しているかのように見えるオールマイト、事実として彼の身体には既になくなっていたはずの力が漲っていた。全盛期程までではないが、それにかなり近い時点まで力が溢れてきている。一体何故こんな事になっているのかは理解出来ないが、兎に角オールマイトとしては万々歳な事態だった。仮面ライダーとしては、万全を期して欲しいので回復させたのだがこれは予想外に回復している。それほどまでにオールマイトが元から持っている体力が異常とも言える。
「なんだよあいつ……?何であんな奴が此処に居るんだよぉ……?」
『そう言えば―――死柄木弔、乗り込む前に妙な視線を感じましたが、まさかあれなのでは―――』
「……あり得るな、注意しろっていうのはあれの事なのかな……?」
リーダー格の二人は仮面ライダーの事を知らなかったのか、深く警戒するような姿勢を見せながら不愉快そうに此方を見つめ続けている。
「仮面ライダー、君のお陰で力が漲ってくる……!!!有難う、何時か君とはゆっくりとお茶でもしながらお話がしたいな!!少年少女、今の内だいけっ!!」
「「「はっはい!!」」
相澤を担ぎながら入り口へと向かっていく生徒らの盾となるかのように立ち塞がるようにしながらも目の前にいる敵へと向かい続ける。一瞬、オールマイトとライダーはアイコンタクトをすると同時に駆け出して行く。全身に手を付けている気味悪い男、死柄木は小さく脳無に指示を出し、自分を庇ばわせる。そしてその拳が炸裂する、圧倒的な破壊力を持つ両者の拳が炸裂するが脳無はそれらを受けても小揺るぎともしなかった。それどころか平気そうな顔をして殴りかかってくるのでライダーはそれを逆手に地面へと叩き付けるように投げを決める、倒れこんだ所にオールマイトの一撃が顔面を捉えるがそれでも脳無は止まる事なく迫り続けてくる。
「マジで全然利いてないなっ!顔面に当てても小揺るぎもせんとはっ!!」
「(ならっ……!!!)」
再び迫り来る脳無、それに合わせるかのように腰へとブレイラウザーを当てながら意識を集中しながら体から力を抜いていく……オールマイトも自分が何をしようとしているのかを察しているのかサポートの体勢に入っている。迫り来る脳無、それが射程距離に入った瞬間に力を爆発させる。電光石火の一閃は脳無の左腕左足を切り飛ばし、地面へと叩き落とす事に成功する。それを見た死柄木はへぇっ……と小さく感心するかのような声を漏らした。
「片方の腕と足が欠損すれば動けないから戦闘不能……とでも思ってるのか?」
「なっ……!?ライダー油断するな!!」
「ッ……!?」
目の前では信じられない光景が広がっている、切り裂いた筈の身体から次々と筋肉が伸びて行き元の身体の形を作っていく。瞬く間に切り落とした筈の腕と脚が元通りに治ってしまっていた。
「再生能力の個性、か……!!」
「それだけじゃないさ……お前らの攻撃も全然利かないだろぉ?それはショック吸収、そして超回復……脳無はなぁオールマイト……お前の100%にも耐えられるように改造された超高性能サンドバック人間さっ……!!」
物理的なダメージに耐性、斬撃で相手を切断したとしても復元を思わせるかのような回復能力で元通りに回復してしまう……とんでもないレベルに厄介な相手に流石のオールマイトも苦々しい顔を作る。それは恐らく仮面ライダー、剣崎も同じだろう。だがしかし、剣崎はある事を思い付いた、相手の個性がショックの吸収だけならば突破口はある……。
「ただのショックの吸収なら、ダメージ自体は蓄積する筈」
声を低く、出来るだけ分からないようにしつつ剣崎は思った事を伝える。それを聞いたオールマイトは確かにそうだと思い至る。脳無は言うなれば痛覚がない人間、幾ら痛覚がないとしても痛みは身体の中にダメージとして蓄積されていき何れ、身体機能に重大な障害を齎す事に繋がる。つまり脳無攻略に必要なのは―――ショックの吸収さえ追いつかないほどの超連続での全力攻撃という事になる。
「成程……確かにそれならばいけるな、君のお陰で私の身体は随分動く。君の力も是非借りたい」
「了解……!!」
『〈
その言葉を聞くと即座に剣崎は動いた、三枚のカードをラウズしていく。そしてラウザーを腰に納めるとそれら全てを身体に吸収して行く……そして全ての準備が整うと一気に脳無へと向かっていく。脳無も同時に向かって行くと凄まじい拳打の嵐を放とうとするが、それよりも速く踏み込んだ剣崎が脳無の懐へと入り込んだ。
「ウオオオオオオォッッ!!!!」
気迫と酷く体重が乗ったコークスクリューパンチがプロボクサーなど比較にならない速度で次々と脳無の全身に打ち込まれていく。乗りに乗ったパンチのラッシュは各部の関節なども狙っており、相手の初動を殺しながら次々と拳を炸裂させていく。重い一発一発が叩き込まれる毎に空気が重く震動しながら周囲に鈍い音が響いて行く。次第に脳無もそれらに慣れ始めているのか、自らも攻撃を行って反撃を開始し始めるが明らかに先程によりも動きが鈍くなっている、思った通りダメージの蓄積が利いている。
「ウェェエエエエラァァアアア!!!」
「おおおおっ私も行くぞぉぉッ!!!」
渾身の一撃が、遂に脳無の腹部を深く貫かんと炸裂しその身体が浮いた。その隙を突いて、遂にオールマイトもそのラッシュに参加した。正に怒涛、USJの内部はパンチの拳圧とのその衝撃で暴風雨の中にいるのかと錯覚させるほどの凄まじい空気の流れが出来ており、死柄木ともう一人のリーダー格、黒霧も全く近づく事が出来ないほどの状況が出来上がっていた。
「オオオオオッッッッ!!!」
「ァァアアアアアア!!!!!」
全身に蓄積して行くダメージ、一撃一撃が㌧を軽く超えているであろう重いパンチの嵐のようなラッシュ。幾らショックの吸収という個性と超回復という個性があったとしても此処までのダメージを受けてしまっては動けなくなるどころの話ではない、回復すら意味がなくなるほどの勢いでダメージが溜まっていく。ある意味究極のゴリ押し。
「「らああああぁぁぁっっ!!!!!」」
互いのストレートが腹部に炸裂、遂に膝を付いた脳無。だが回復の個性がある以上、此処でやめるわけは行かない。ここでそれすら意味が無くなるほどの大ダメージを与える必要がある。
「行くぞ仮面ライダー!!これが、こいつに食らわせる最後の一撃だ!!!」
「ああっ!!」
『〈
「はぁぁぁっっ……!!!」
カードをラウズした剣崎は剣を地面に突き刺しながらも身体に沸き上がってくる力を感じる、同時に隣のオールマイトの腕からも凄まじい音が響く。力を込めているのか腕の筋肉が膨張しているかのように巨大化している。それを見つつ、剣崎は技を繰り出す準備が整った。そしてオールマイトと息を合わせて同時に脳無へと飛び込んだ。
『〈
「ウェェェェェエエエエエエエイッッッッ!!!!!」
「DETROIT SMASH!!!!」
仮面ライダーとオールマイトが放つ必殺技、空気の壁さえ蹴破るかのような凄まじい一撃が脳無の身体を貫通するかのような勢いで突き刺さった。刹那、それらを受けた脳無の姿が掻き消える。そして、一呼吸置いて、爆音と共にUSJの天井の一部が爆発を起こしながら大きな穴が空いた。脳無が吹き飛ばされた事で、天井に激突した事で出来た穴。視認すら出来ないほどのスピードで吹き飛んだ脳無に死柄木と黒霧は一瞬呆然としてしまった。何処が、衰えている……?全然、そんな事ないじゃないか……。
『死柄木弔、時間切れです。間もなく他のヒーロー達が―――!!』
「ぐぅぅぅっっ……!!!撤退、だっ……!!」
手のマスクで表情が隠れているが、そこから溢れ出しているのはこちらへの圧倒的な殺意と敵意。それを向けながらも霧の中に紛れながらも姿を消して行った。そして残された二人は……
「有難う仮面ライダー、君のお陰で助かったよ」
「……俺も貴方の手助けが出来て嬉しかった」
硬い握手を結んだ。が、その時オールマイトは少しだけ浮かべ続けていた笑みを崩し、もしやといいたげな表情を象った。
「もしや君は……剣崎、少年か……!?」
「(ッ!!!?な、何でバレたっ!!!?や、やばい早く逃げないと……ああでもこの後呼び出されたら結局終わりじゃねぇかどうしたら良いんだぁあああっ!!!??)」
「……。剣崎少年、この事は私の胸の中にしまっておこう。君が私を信じてくれるなら、後で話をしよう」
「……分かり、ました」
剣崎は周囲が土煙で覆われている間に変身を解除して自分の姿を改めてオールマイトへと見せる。驚いたように表情を変えられたが、直ぐにオールマイトは笑顔を作って肩に手を置きながらこういった。
「助かったよ剣崎少年!今度は、君に助けられちゃったな!!」
その言葉を聞いた時、剣崎は心の奥底から嬉しくなって涙が出てきてしまった。
ラウズカード紹介
ハートのカテゴリー9:『〈
劇中未使用。
ライダーの戦闘補助系のカテゴリー9。体力の回復を行う事が出来る。
不死身であるアンデット、劇中でも未使用なのでどれほど回復するのかは不明瞭。
今回の使用では相澤とオールマイトの二人に使用している。相澤の方が重症なので其方の方に多く力を割り振っているが、それでもオールマイトに十分すぎる程のパワーを回復させている。