救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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剣崎初とオールマイト

「私がきたぁぁぁっ!!!さてと……すまないね剣崎少年待たせてしまったね。君もいろいろ疲れただろうから早く休ませてあげたいんだが……」

「気にしないでください。それよりその、身体は大丈夫ですかオールマイト……?本当ならもっと回復する筈だったんですが相沢先生を優先させたので」

「何の何の!!寧ろ、数年来忘れていた活力がいまだに漲って致し方ない程で身体が動かしたりないほどさ!!!」

 

USJでの襲撃後、剣崎は負傷を理由にして仮眠室での待機をさせて貰っていた。そこで待ち続けているとオールマイトが何時も通りの超ハイテンションで入室してきた。

 

「まず、君があの「仮面ライダー」の正体だと分かった時は驚いた。元の姿を戻った所を見た身としても未だに信じられない。君の個性は身体能力の強化ではなかったのかね?」

「正確には違うんです、俺の身体能力強化は本来ある力のうちの一部なんです」

「成程。では君本来の個性というのは仮面ライダーの姿になる、という事なのかね」

「……はい」

 

剣崎は少々答えにくそうに答える。それを聞いたオールマイトは少し考えるような姿勢をとったがそれでも剣崎の肩を優しく叩いてにこやかに笑った。

 

「何素直に言ってくれただけでも私は嬉しいさ!!しかし、ということは君は違法自警者だという事もしっかり理解して活動をしていた、という事なのだろう?」

「……はい」

 

オールマイトの言葉通り、剣崎は自分が行ってきた行為が本来は法律に違反していることも承知している。資格もなしに個性を使ってヴィランが暴れる現場に出向き救助活動を行い、時にはヴィランを蹴散らしていた。そんな行為は厳しく禁止されているということも分かっていたのにそれを続けていた。オールマイトはそれはなぜかと、優しい声色で聞いてきた。

 

「例え、駄目だと言われていても……禁止されていても……助けを求める人を助けられる人間がそれを無視するなんて駄目だって思ったんです……!!救える力があるのに、それを無視して今助けられる人を見捨てて、誰かに託すなんて……俺は駄目だと思ったんです……」

「剣崎少年……」

 

今自分が個性を使って助ければ救える人を、使ってはいけないという規制で怯えて手を伸ばさない。それで救えたはずの人が救えずに死なせてしまう、それが剣崎は心から嫌だった。今、動けば救えるのに、それなのに動かないなんて……自分が嫌ったヒーローと全く同じ。

 

「だから、俺は例え駄目だと言われても、俺は誰かを救う!!それが世間的に悪い事だとしても……救いを求める声を無視する事が出来ない。非難されても良い、糾弾されても良い、その程度の事で人の命が救えるなら……俺は、救える人すべてを救いたい!!!」

「……素晴らしいよ、剣崎少年。君はもう、立派なヒーローじゃないか」

 

そういってオールマイトは剣崎の頭を撫でた、雄々しくも優しくて暖かいその手の感触が伝わってくる。不意にそんな優しい手つきに両親のことが頭をよぎっていく。

 

「確かにそうだ。君の言っている事は正しい。今の社会は個性を制限することで成り立っているが、しかしそれ故に助けられる人が助けられないということも多くある。だからこそ君は救える力を持っているからこそ、君は多くの人々を救ってきた。本来褒められる行為ではないかもしれない、だが胸を張りたまえ!!君は人の命を救うという尊い行為をしてきたのだ!!君は、紛れもなく立派なヒーローになる資格がある!!」

「有難うございます……!!」

 

この言葉が果てしなく嬉しかった、今まで誰かの感謝や名誉が欲しくてやってきた訳では無かったはずなのにオールマイトにそう言われた瞬間に嬉しさで可笑しくなりそうなった。憧れの人にそう言われたからだろうか、兎に角―――震えるほどに嬉しい……!!!

 

しばらくの間、剣崎は泣きじゃくってしまった。こんな事で涙腺が緩むことなんて初めてだった、オールマイトも動揺してしまっていたが兎に角沢山泣いた。そして漸く落ち着いたとき、オールマイトは自分に特別な話があると言ってきた。

 

「剣崎少年、君に折り入って頼みたい話があるんだ。君が使った癒しの力、あれはまだ使えるのかい?」

「はい一応使えます」

「そうか……君から受けたあの力、あれを受けてから私の身体は先程言った通り活力と力が漲っている。若返った、というのはこんな気分なのかと考えるぐらいの気分」

 

そんな言葉を言い切った後、オールマイトの姿が徐々に変化していった。筋骨隆々だったはずの身体がガリガリの骸骨のような骨と皮だけがあるような身体へと変貌していく様が剣崎の目の前で起こった。思わず目を疑ってしまった、だが今起こっていることは現実で真実だという事は分かった。そしてガリガリの姿となったオールマイトは事情を話し始めた。

 

「―――これが、今の私の状態なんだ」

「そ、んな……まさか……」

 

オールマイトの話を聞いた剣崎は憧れのヒーローがとても活動出来るような身体では無い筈なのに戦い続けている事に驚愕した。とある大物敵(ヴィラン)との戦いで重症を負い、その後度重なる手術と後遺症で見る影もない痩身となって吐血を繰り返すことも多い程の虚弱体質になってしまったとのこと、事実話している途中もわずかに吐血していた。普段の姿は個性での強化による偽装であり、一日の活動時間は2時間にも満たない程だったらしい。

 

「だが、君の個性による回復を受けてから私の身体は凄い勢いで力を取り戻した。恐らく、今の状態なら活動時間は5時間は行けるだろう」

「よ、良かった……!!」

「頼みというのはほかでもない、その回復能力で私の身体の回復そして―――私の後継者、緑谷少年を育て上げることに協力してほしい。仮面ライダーとして!!」

 

それは―――剣崎の運命を変える、途轍もない大きな運命の分かれ道だった。


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