救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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体育祭前、その一

オールマイトの衝撃の事実、自分の力を貸して欲しいという要請を受けた翌日。剣崎は建前上、USJで大多数のヴィランとの戦闘によって負傷と疲労を蓄積させてしまった為に早退したと言う事になっている。本当は仮眠室でオールマイトと話をしていたのだが……。結果として剣崎はオールマイトの相談を承諾して協力を約束した。オールマイトも承諾してくれた事に対してかなり安心したらしく、ホッとしていた。回復は後日、今現在の状態を詳しく把握した後に回復を実行する事になった。今の状態でも回復前よりも遥かに回復しているらしいので、オールマイトとしては今の状態でも満足しているらしい。

 

「にしても……どうしよう……」

 

登校途中で剣崎は困っていた。オールマイトから自分は凄まじい数のヴィランをたった一人で倒したが、強力な個性を宿していたヴィランと戦闘。それによって危ない所だったがそこを先生に助けられたという体で病院で検査をする為に早退させられた……という事になっているらしい。まあ確かにヴィランは数が多かったし、身体を刃物にする個性を持ったヴィランもかなり強かったと思うが……如何にも嘘を言っているようでクラスに行きづらい物を感じる。

 

「実際は怪我してないからなぁ……気が引けるなぁ……」

 

クラスメイトの皆だって大変な状況だった筈、大怪我をしたかもしれないほどの状態だった。そんな中一人だけ自分が離脱してきたかのような感じで如何にも良い気分がしない。加えて剣崎は余り嘘に慣れない正直な性格なので、皆を騙しているようで精神的に滅入っている。電車に揺られながら雄英に向かうが……如何にも気が進まないのか足の進みも遅く、校舎に入ったのもHRが始まる10分前だった。しかしクラスへと向かう足取りは妙に重かった。

 

「やべぇなぁ……此処まで来ておいてなんだけど、キッツい……」

「何がきついのかしら?」

「いやそれは―――ってうおおおぉぉぉっっ!!?」

 

思わず呟いた言葉に返ってきた言葉に返答しそうになったが、何でそうなったと内心で一人突っ込みをしながら飛び退くとそこには梅雨ちゃんが此方を見つめていた。

 

「つ、梅雨ちゃんか……おはよう」

「おはよう剣崎ちゃん。もう大丈夫なの?随分凄い怪我をしたって話を聞いたんだけど……」

 

何時も表情を変えないような梅雨ちゃん、マイペースと言っても差し支えない程に安定している精神状態の彼女。そんな梅雨ちゃんは心配そうな顔を作って此方を見つめていた。そんな自分の身体を気遣うような視線と言葉に思わず心が痛んだ、やっぱり自分に対する心配を掛けてしまっている事実がそこにある事が心苦しく思える。オールマイトとの約束に後悔はない、だからこそ自分がすべきなのは自分は全然大丈夫という事を示して安心させる事、剣崎は笑顔を作りながら言う。

 

「ああ全然大丈夫さ。リカバリーガール先生にも手当てしてもらったし、病院だって念の為の検査の為に行ってくれって事だったから。ゆっくり休んだからもう全然大丈夫だよ」

「そう、なの……?それなら、良いの本当に良かった……」

 

ホッと息を吐いて安心に胸を撫で下ろした梅雨ちゃんを見て本当に心配を掛けてしまったのだと思った、これは教室内でも自分の事を心配してくれている人はいるのだろうなと思う。主に京水と飯田辺りが凄い自分の事を凄い心配してそうな気がした。そんな二人を落ち着かせられるのかと少し心配になってきた。

 

「ごめんね梅雨ちゃん、心配掛けちゃって。お詫びに昼食に何か奢るよ」

「別にいいのよ?でもまあ、そうした方が多分剣崎ちゃんの気が晴れるわよね、それだったら喜んでご馳走になるわね」

「おう、それじゃあ教室入ろうか」

 

と二人で教室に入ったが……剣崎の懸念通りに自分の怪我などを心配してくれていた皆ばかりで思わず心が痛んだ。が、梅雨ちゃんと同様に昼食を奢る事で相殺される事になった。雄英の学食が安くて良かったと内心でそんな事を思ったりする剣崎であった。皆に奢ると言った時、少々梅雨ちゃんからの視線が気になったのは恐らく気のせいだろう。そして皆が席に付いた次の瞬間、教室の扉が開いて担任の相澤先生が入ってきた。

 

「おはよう」

『相澤先生復帰早ッッ!!?』

「あ、あの先生大丈夫なんですか!?」

「問題ない。リカバリーガールの個性で回復しているし、そもそも重症だった部分はあいつの力で回復している」

 

相澤が言うあいつとは即ち、剣崎こと仮面ライダーの事である。一応仮面ライダーの正体云々はオールマイトにお願いして隠して貰っておいて貰い、脳無を共に撃退したら仮面ライダーは直ぐに姿を消して何処かに行ってしまったという事になっている。

 

「仮面ライダー……何故彼は雄英に来たのでしょうか……?」

「俺達を助ける為、っていう事じゃないのかな……」

「御喋りはその辺りにしておけ、あいつの件は教師陣でする事だ。それよりも……新たな戦いが始まろうとしている」

 

話を打ち切って新たな方向へと話を進めようとする相澤、その内容、新たな戦いという部分に全員が思わず緊張感を持った。先日ヴィランからの襲撃を受けたばかりなので致し方ないとも言える。一体新しい戦いとは―――。

 

「―――雄英体育祭が迫ってる」

『クソ学校っぽいの来たあああッッッ!!!!』

 

クラス中のテンションが一気に超加熱していく、それもその筈だ。雄英高校の体育祭は唯の体育祭の枠では収まらない程の規模と内容を秘めているのだから。日本最難関のヒーロー科を抱える国立雄英高校、そんな雄英が行う体育祭は個性ありの体育祭。TVでも放送され、高視聴率をキープ中な日本の超ビッグイベント。スポーツの祭典と呼ばれた「かつてのオリンピック」に代わって全国を熱狂させている。 剣崎も昔から良く見ていた。

 

一部からヴィランから侵入されたのに、という声もあるがそれに屈する姿勢は見せないという雄英の強気な姿勢が現れる。通常の5倍の警備を敷き万全に万全を喫するから心配はするなという事らしい。そして、体育祭は生徒達にとっても重要な意味を示している。

 

「毎年……沢山のプロヒーロー達が見に来る一大イベント……唯の体育祭じゃないのも特徴だな」

「剣崎の言うとおりだ。見に来るプロの目的は暇潰しではなく有望な新人のスカウトだ。どちらにしろ、結果次第では将来が決まる、気合入れろ」

 

そう、この体育祭で自分の将来が決まる事も十分にありえる。自分の力を世間に見せ付けて、存在感と力をアピールするには持って来いの場でもある。この場は―――剣崎に取っても重要な場でもある、

 

 

『仮面ライダーである事は隠して欲しい?それは構わないが……君は、もしかしてそれを告白する気があるのかい?』

『遠からず俺は告白するつもりです、だからオールマイト。俺は―――雄英体育祭で仮面ライダーになる。そこで俺は言うんです。仮面ライダー……剣崎 初が来たっ!!!って』


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