救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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体育祭前、その二

「剣崎少年、率直に言わせて貰うと君が仮面ライダーである事は極力隠蔽すべきだと私は思うのだ」

「―――理由を、聞いてもいいですか?」

 

応接室に場所を移したオールマイトと剣崎は改めて話を行う事にしている。命題は―――剣崎の個性である「仮面ライダー」を公表すべきなのか否か、という事である。剣崎としてはこれを公表して自分の全てを、見て貰いたい。そうすれば色々と便利な部分が出て来るしより多くの人達を助ける事にも繋がると考えていた、しかし、それにオールマイトは難色を示した。

 

「まあ待ちたまえ、話をするのはある人を待ってからだ」

「ある人……?」

 

思わず疑問を頭に浮かべていると応接室の扉が開け放たれてそこから誰かが入ってきた。それは―――白い肌を持った小人、というよりも白いネズミの個性を発現させている人にしか見えなかった。

 

「……あの、どなたですか……?」

「YES.その質問に答えよう!ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は……校長さっ!!」

「という訳でこの方は雄英高校の校長先生、根津校長だ」

「こっ校長先生!!?そ、それはすいませんでした!!!」

「いいさいいさ、気にしてないから大丈夫だよ」

 

思っても見なかった校長の登場に何処か汗を掻きつつも、校長も参加しての話し合いがスタートした。オールマイトが自分以外にも自分の正体は知っておいた方が良いと言う事で校長先生をこの場に呼んだという事らしい。

 

「では、改めて君の個性についての話だ剣崎君。君の個性は『仮面ライダー』に変身し、力が封印されているカードを使用する事で様々な力を発揮する事が出来るという事だったね。実に異常といっていいほど特殊な個性だね、君がヒーローを志してくれている事に正直安心を感じているよ」

「恐縮です」

「だからこそ君の力を公表するのは危険だ」

 

校長もオールマイトと同じく公表には反対の意見を持っていた。理由としては幾つも上げる事が出来る、まず今まで剣崎が正体を隠しながら行っていた活動によって良くも悪くも存在が世間的に大きく認知されてしまっている事。世間を騒がす『仮面ライダー』の正体が一学生だと分かると、非常に面倒な事になる上に違反者である剣崎も罪に問われる可能性も出てきてしまう。

 

次に剣崎が持っているカード、それらを使う事で力を発動させる仮面ライダー。逆に言えばそれさえ無力化すれば力を奪えるのではと考える輩が必ず出て来るだろう。剣崎が容易く渡すとも思えないが、それが凶悪なヴィラン、特にヴィラン連合に渡ってしまった場合は特に危険な事になる。

 

「ベストなのは君が今のまま正体を隠したまま活動を行い続ける事、君にはこれからも影ながらの抑止力としていて欲しいと思う」

「……俺が、抑止力……?」

「そう。君は一部からはオールマイトに並び立つような大きな存在として見られているんだよ、颯爽と現れては人々を救って去って行く救いのヒーロー仮面ライダー。それは人々に大きな安心を与えるだけではなく、ヴィランにとっても非常に恐ろしい存在になっているんだ」

 

そう言いながら根津校長は笑いながらある物を見せた、そこには仮面ライダーへの感謝を述べるサイトに寄せられている言葉の数と人数が書かれていたが、それが余りにも膨大な数になっている。それは剣崎が誰にか言われたからと言う訳でもなく自分が誰かを救いたいという思いによって動いてきた事によって救った来た人達の思いがそこにある。

 

「剣崎君が仮面ライダーとして活動をし続けてきた結果なんだよ。多くの人達を助け、命を救い、その人の心に希望という光を齎し心の闇を払うヒーロー、それが仮面ライダーなんだ。それに公表すると君も今までのような活動が出来なくなってしまう、それはそれで嫌だろう?」

「……」

「校長としては止めるべきだろうけど、仮面ライダーとして動くならば止めはしないよ。寧ろそうするべきだと思ってる、この世の中は良くも悪くも抑圧されている時代。だからそれを良い意味で打ち破って人々の心に柱になれる人材が必要なのさ」

 

今まで時代はそれをオールマイトに求めてきた、平和の象徴という巨大な存在は柱となって時代を支えるだけではなく人々の心に安心を齎す存在でもあった。だがそんなオールマイトにも限界はある、だからこそ彼と同じように時代を支えられる人材が居べき。剣崎はそれになり得ると根津は確信を持っている。

 

「剣崎少年……私の跡を継いでくれとは言わない。だが君にその意志があるのならば君の力を私に貸して欲しい。私は力を緑谷少年に譲渡している、そんな私が活動出来るのもそう長くはない。それでも私は人々が安心して暮らせるように戦うつもりだ、君との約束でもある光でもあり続ける。一緒に、戦って欲しい!」

「……」

 

力強い言葉を受けて、剣崎は言葉を失っていた。暫しの沈黙が応接室を包む中で剣崎は小さく、口を開いた。

 

「俺は、何も知らなかったんだなって思いました……。俺は唯、誰かを救える存在で居られればどんな事になっても良いと思ってました。でも、俺がそんなに大きくなってたなんて思いもしませんでした……俺がそんな大きな物を背負ってたなんて……でも、それでも良い……!それで救われる人がいるなら……俺が、それを背負います。オールマイトのように、俺も戦います!!!」

「そう言ってくれると思ってたよ剣崎くん、これからも頼むよ「仮面ライダーブレイド」!!」

「ブレイド……?」

 

根津が仮面ライダーの後に付けて言った「ブレイド」というそれに思わず首を傾げてしまった。すると根津は笑いながら言う。

 

「君の名前さ、仮面ライダーだけだと物足りなかったからね。君は剣を良く使うからブレイドってしたのさ」

「ブレイド、ブレイド……なんだか懐かしい響きするなぁ、俺気に入れました。これから俺は仮面ライダーブレイドですっ!!!」

「おおっそうか、ではこれから頼むよブレイド!!」

「はいっ!!」




結果的に仮面ライダーは秘匿する事に決定。これからも剣崎は正体を隠しながら活動をする事に。

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