決勝トーナメント第一試合、緑谷 出久 VS 剣崎 初。注目を集める1年のA組同士のクラスメイト同士の戦いとなった初戦、今までそこまで目立つ事が余りなく誰かを活かす、作戦勝ちをしてきたという印象を強く持たれがちの出久。そんな彼と剣崎のガチバトルは誰もが想像しないほどに激しいぶつかりあいだった。
「こんのぉおおおおお!!!」
「はぁぁぁぁっっ!!!!」
助走を付けた剣崎は飛び蹴りを繰り出すがそれを防御する為に出久は思いっきり地面を踏みつける、するとその衝撃でステージの地面が畳返しのように捲れ上がって剣崎の攻撃を防御する盾となった。それがどうしたと言わんばかりに地面の壁を蹴り砕く、しかし、視線の先から出久が消えている。
「いっけええええっっ!!」
「ぐがぁっ……!!!」
砕かれた地面の壁、それらが砕けた破片に紛れながら姿を隠した出久が隙だらけの脇腹へと拳を叩き込んだ。確かな手応えを感じた出久はそのまま腕を振り切ってフィニッシュまで決めて剣崎を吹き飛ばした。転がりながらも立ち上がった剣崎は脇腹を押さえながらも不敵そうな笑みを浮かべると、一気に接近して出久の顔面に一撃を加える、がそれに合わせるように出久もカウンターでパンチを決める事に成功する。
「やろぉっ……!!」
「まだまだぁっ……!!!」
『熱ッちぃぃいぃいいいいいい!!!!超イカしてて燃えるバトルじゃねぇか!!!おいイレイザー・ヘッド、お前のクラスマジでスゲェな!!!』
『……俺も予想外だけどな』
実況のプレゼント・マイクにも今まで以上に熱が入っていく、互いの力を真正面からのぶつかり合い。ド突き合いながらもカウンターやラッシュの応酬は見ているほうも異様に身体を熱くさせていく。まともに攻撃が決まっても互いに一歩も引かずに寧ろ更に前へ、相手を超えて行こうとする姿勢は正に雄英が推す言葉である「Plus Ultra」を体現しているかのような光景だ。
「いっけぇぇぇっ剣崎ぃぃ!!!顎だ顎!!!ブロックブロォオオオオク!!!!」
「緑谷負けんなぁ!!!!そこだそこぉっ!!!!」
「ああ、危ない剣崎くん真横!!よし避けたっ!!!」
「どっちも負けんなぁ!!もうどっちも勝っちまえぇぇ!!!」
二人と同じクラスの男子勢もおおいに盛り上がっており、大声を張り上げて声援を送り続けていた。互いに炸裂していく拳や蹴り、それでも苦痛の表情ではなく相手への賞賛と負けないという意志で溢れ返っている表情は更にそれらを燃え上がらせる。特に男義に熱い切島、熱さに当てられて自分も熱くなっている瀬呂、自分の戦いに組み込めるのではと真剣に見ていたが気付けば全力で応援している尾白、気付けば賭けの事なんて忘れている峰田。あの飯田も酷く熱くなって応援している、そんな男子らに驚きつつも女性陣も真剣な眼差しで見つめている。特にあの出久があんなに強かったと言う事に驚きを隠せていない。
「あの緑谷さんはこんなにも強いなんて……驚きです」
「ホント……剣崎が強いのはまあ分かってたけど、ほぼ互角……」
「デクくん、凄い……頑張れ~!!!」
普段どちらかと言えば暗くオタク気質がある出久の思いもしなかった一面と強さ、今まであった彼女らの思いを打ち砕くには十分すぎる物。
「剣崎ちゃん、あんなに熱くなってる……ケロケロォ……カ、カッコいい……」
「初ちゃんカッコいい~!!!そこよそこそこぉ!!!」
一方、緑谷の強さを理解している梅雨ちゃんと剣崎から話などで出久の強さなどを把握している京水は純粋に試合を楽しみながらも一方では思わず顔を赤くしながら、一方は全力で応援をしている。
「「だぁぁぁぁっ!!!!」」
三度、クロスカウンターが決まり互いの顔面を拳が襲う。それらで身体がよろめいたのか、互いに距離を取りながら警戒を強める。
「(つ、強い……!!仮面ライダーにならなくても純粋な戦いでこんなにも……!!次第に、剣崎くんの一発一発も強くなってきてる……!!)」
「(出久め……戦ってる間に反応速度がどんどん上がって喰らい付いて来る……こりゃ結構きついぜ)」
出久は元々ヒーローの事を調べそれらをメモする事が習慣且つ趣味のような物、その影響かメジャーなヒーローの戦い方や体捌きや体術などの事も頭の中に入っている。剣崎との特訓、そしてこの戦いで出久は肉体面でも急成長をしており、それらに蓄積された知識を反映出来るようになってきている。それでいながらも剣崎の動きに合わせられるようにもなっている、剣崎としては非常に厄介な相手。
『試合開始から30分!だがお互いに全く引かずに猛攻をし続けている!!こうなったらこっちは幾らでも付き合うぜ!!!行ける所まで行っちまえよヤッハァァアアア!!!!』
「「(いい加減、キツくなって来てんだよこっちは……!!)」」
プレゼント・マイクとしては何時までもこんな戦いが続いて行きそうな気がしてならない、観客達もそうだろうが当人達としてはかなりきつい。剣崎も戦いの中で能力をラウズしつつやっているので出久には深いダメージが蓄積している、出久はコントロール出来る約10%の範囲でワンフォーオールを発動しながら戦っており、それらの一撃は非常に重く剣崎としてもかなりきつい。これ以上続けたとしても共倒れが精々だろう。それはお互いが一番良く理解している。
「「……」」
一歩、一歩後ずさっていく。次の一撃で全てを決めると互いに決めあったかのような行動、それらは会場中に伝わっているのか全員が固唾を飲んでそれを見守った。腕を矢にし、全身を弓にして思いっきり引き絞る出久。限界まで後ずさりつつも片足を引き、力を込め続ける剣崎。
『〈
今最適だと思われる物をラウズしてそれらを身体に宿し、目の前で自分を待ち構えている出久を見つめる。込められる力を込めて、剣崎を見つめる。
「行くぞ、出久ぅぅぅうううう!!!!」
「来ぉおおおい、剣崎君っっっ!!!!」
溜めた力を一気に開放する、蹴った地面は爆破でもされたかのように炸裂した。その勢いのまま出久へと向かう剣崎、それを迎え撃つかのように腕を引き絞った出久はただ真っ直ぐ剣崎を見つめてた。跳躍、そして剣崎は叫ぶ、初めて会った時と同じように―――。
「ウェェェェェエエエエエエエイ!!!!」
「おおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!」
ぶつかりあった一撃、それらが衝突した時、会場中を包みこむカのような空気の渦が巻き起こる。ステージが罅割れて行く、崩壊していく。それがどうしたと言わんばかりに中央の二人は叫び続ける、目の前のライバルを倒したいという思いが自分を支配していた。そして―――爆煙にも似た土埃が舞い上がり視界を遮った。一体、どっちが勝ったのか、誰もが気になった。徐々に晴れていくそれに、緊張が高鳴った。完全に崩壊したステージの上に立っていたのは―――
「はははっ……やっぱり、凄いや剣崎、君は……もう、身体が動かないや……」
「お前も十分すぎるぐらいに凄いよ出久」
―――剣崎だった。勝者は剣崎、同時にミッドナイトが出久の戦闘不能宣言をして剣崎の勝利を確定させた。
「僕の分まで、頑張ってねトーナメント……!」
「当然……!!」
「それと今度は、僕が勝つから……!!」
「やってみろってんだ……ライバル!!」
「勝つさ、ライバル……!!」