救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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第二試合まで、好きになれないヒーロー

「うぉぉおおおらぁぁぁっっ!!!!」

「おおおおっっ!!!?」

 

トーナメント三回戦、上鳴対鉄の試合が行われている。修復されているステージの上では文字通りの鉄の巨人が猛攻を繰り広げていた。「帯電」という個性を持つ上鳴と「鉄巨人」の鉄、が、一撃一撃が文字通り必殺級の威力と巨人ゆえのリーチ。それらを最大限に利用している鉄、上鳴も何とかそれらを回避しながら攻撃後の隙に電撃を浴びせかけるが全くひるむ事もなく動き続ける鉄に一種の恐怖を覚えていた。

 

「これでぇ、終わりだぁっ!!!」

 

跳躍した鉄、あらん限りの力でステージを殴りつけるとその衝撃波で上鳴の動きを封じるとそのまま上鳴を場外へと投げ飛ばす事で勝利を掴んだ。

 

その後も次々と試合は進んでいく。飯田は出久と同じ騎馬のメンバーだったサポート科の発目とぶつかったが……彼女の誠意という名前の嘘により彼女自身が開発したサポートアイテムの有用性を証明するだけの試合をさせられ、勝利はしたものの全く納得行かずに思わず発目に、君嫌いだぁぁっ!!と言ったのであった。まあ分からなくもないが。

 

京水も同じクラスメイトの芦戸とぶつかったが個性でそれらを全て回避しつつ腕を伸ばして彼女を拘束すると、そのまま優しく場外へと出す事で勝利する。芦戸からはさわやかな笑顔で負けた、次も頑張れとエールを送られそれを素直に受け取った。

 

次の試合は常闇と八百万。クラス一の優等生と出久と同じチームメンバーで高い対応防御能力を見せた常闇、どちらが勝つか分からなかったが常闇は自らの個性「黒影(ダークシャドウ)」を即座に発動。影のようなモンスターを操る個性、それによる速攻は八百万に反撃の隙を作らせなかった。正確に言えば優秀すぎるが故に思考が纏まりきらずに手段を絞れなかった事が八百万の敗因となってしまった。

 

続くは切島対鉄哲、二人の個性は酷く似通っており、一方は"硬化"、一方は身体を鋼のようにする"スティール"。本当に個性が丸被りなレベルで似通っている。そして戦いは真正面からのインファイトによるぶつかり合い、対人戦においては強力な個性同士のぶつかり合いは激しい物だったが、結果としては引き分け。最終的に腕相撲にて結果を決めた結果、切島が何とか勝利をもぎ取った。その後は何やら二人の間に友情が生まれており、青春的な青臭さにミッドナイトは嬉しそうにしていた。

 

そして―――A組全員が不安にしていたのが爆豪対麗日という対戦カードだった。あの凶暴な爆豪と麗日、非常に不安になってくる。しかしそんな不安を吹き飛ばすような気迫と勢いで麗日は爆豪に向かって行く。"爆破"という強すぎるとも言える個性が相手だろうが向かい続けて行く麗日、それを真正面から迎えて行く爆豪。上着を使った囮や"爆破"を逆に利用した煙幕などで肉薄するが……

 

「マジかよ……見てから反応してる」

「かっちゃん、やっぱりなんて戦闘センス……」

 

麗日の猛攻は決して弱くない、相手の死角などを上手く突いてる部分もあるのにそれらを凌駕する彼の戦闘センスが凄いの一言に尽きてしまう。それでも向かい続ける麗日、それをあしらう爆豪。最早勝負は見えているかのように見えた……しかし、そこで麗日の最後の切り札が発動する。

 

「有難う、油断してくれなくて……!!」

「あ?」

「勝ぁぁああつッッ!!!」

 

勝利を目指す物の叫びと共に天から無数の瓦礫が降り注いでくる、それらは爆豪が爆破した事で出来た瓦礫や破片。それらを個性"無重力"で浮かせ続けながら自らは低姿勢での突撃を繰り返して悟らせない様にし続けた。そして蓄え続けたそれらを武器にして、自らも倒れかねない規模の落下攻撃、流星群を降らせた。無数に降り注いでくる瓦礫、それらだけで倒せるとは思っていない。あくまでそれも囮、触れる事で発動する"無重力"、それらで爆豪を浮かせられれば勝機は見えてくる―――筈だった。

 

「デクの野郎とツるんでたから、何かしてくるとは思ってたが…危ねぇ事しやがる」

 

―――最早何も言えなくなる、言葉が出て来なかった事だろう。爆豪は降り注いでくる流星群を大規模な爆破を起こす事で全てを迎撃して正面突破してしまった。しかし、それによって彼の表情は不敵な笑みを浮かべていた、麗日も諦めない。最後まで戦おうとするが―――個性発動による反動、限界を迎えてしまい倒れこんでしまいミッドナイトが戦闘不能の判定を下して、勝敗が決する。

 

 

試合の結果を見て、麗日の元へと向かって行く出久を見送った剣崎は自販機でジュースを買って飲みながら次の試合の事を考えていた。自分の相手はあの轟、ハッキリ言って強すぎる敵とも言える。絶大な力を発揮する凍結とそれらを溶かしきる事が出来る炎、どちらも厄介な事この上ない。ラウズカードを完全開放でいけばまあ色々とやりようもあるのだが……それらをした場合確実に「仮面ライダー」だとバレるので出来ない。そもそも個性が違うという事でめんどうなことになる。

 

「あらっ剣崎ちゃん、こんな所で休憩中?」

「梅雨ちゃん、まあそんな所かな」

 

壁により掛かっていると観客席から降りてきた梅雨ちゃんがやってきた、彼女も飲み物を買いに来たのか自販機に手を伸ばす。

 

「次、轟ちゃんとだけど大丈夫?ハッキリ言って彼は凄い強い。身体能力強化の剣崎ちゃんは相当きついと思う」

「それは思ってたよ、どう攻略するか考えてた所」

「速攻、じゃないかしら。凍らされる前に倒すか場外にするぐらいしか思い付かないわね……ごめんなさい」

「おいおい何で梅雨ちゃんが謝るんだい?でもまあそれもありだろうと思ってるよ、少なくとも瀬呂以上にやらないときついけど」

 

梅雨ちゃんの案も一つとして考えている、寧ろそれが最善の手にも思える。真正面からの勝負では殴った瞬間に身体が凍るとかもありえるから相手が反応できない速度で攻撃というのも手。

 

「ねぇ梅雨ちゃん、俺が負けたら慰めてくれるかい?」

「なんだからしくないわね、剣崎ちゃん。貴方がそんな事言うなんてちょっと意外ね」

「はははっそうかい?でもまあ全力でやるだけ~さっ!そうすれば後悔なんて残らないさ」

「やっと笑ったわね剣崎ちゃん」

 

浮かべられた笑顔、それを見た梅雨ちゃんは安心したように笑う。先程までの剣崎は酷く堅苦しく緊張している感じだった、何時も彼らしくないような感じがしてならなかった。やっぱり笑っている方が彼らしくて好きだ。そう思うと少し頬が赤くなるが彼女は手を差し伸べた。

 

「お、応援するから頑張ってねっ……!!」

「……おうっ勝って来るよッ!!!」

 

梅雨ちゃんからの激励を受け取った剣崎はジュースの缶を握りつぶすとそのままゴミ箱へと捨てて、控え室へと向かう為に彼女と別れる。自分らしく居ればいい、そんな答えを貰えた様な気がする。そんな途中―――

 

「おっ」

「あっ」

 

曲がり角に差し掛かった時、身体の至る所から炎が出ている大柄の男と出くわした。全身から溢れ出るかのような威圧感と熱による独特のオーラ、オールマイトとはまた別に意味での圧倒的な強さを纏ったヒーロー、NO.2ヒーロー「エンデヴァー」これから自分が戦う轟の父親がそこにいた。

 

「おォいたいた、君の活躍を見させて貰った。素晴らしい個性だ」

「態々どうも」

 

此方を褒めるような言い方をするエンデヴァーだが、明らかに違う。自分ではなく個性を褒めているような節を感じる、それか個性を使いこなしている自分の力を褒めているような印象を強く受ける。そんな言い方のためか剣崎はいい表情をしない、それ以上に剣崎はエンデヴァーに対して良い感情を抱いていない。正直に言えば嫌いなヒーローの筆頭とも言える。

 

「シンプルな個性だが、それゆえの強力さを秘めている。何れはオールマイトにさえ匹敵するだろうな」

「……何が言いたいんですかね」

「簡単なことだ、家の焦凍との戦いはがっかりさせるような物にしないでくれ。奴にはオールマイトを越える義務がある。言いたい事はそれだけだ」

 

そう言って去ろうとするエンデヴァーに剣崎は強い嫌悪感と違和感を感じた、何かを諦めている男と諦めているそれに執着している何かを押し付けている。それに酷い苛立ちを覚えてしまう。そのまま去ろうとしているエンデヴァーへと声を発する。

 

「義務、か。押し付けの間違いだろ」

「―――何っ?」

 

振り向いたエンデヴァーの表情は一部が燃えているのもあって威圧的で恐怖をあおる、だが剣崎は怯む事なく続ける。

 

「アンタと轟の間に何があるのか知らない、だけどあいつはあいつだろ。アンタの都合を押し付けんな、何から逃げてるのかは知らないけど―――自分で乗り越える物は努力して自分の力で乗り越える、それが男だろ」

「―――ッ……!!」

 

そう言って剣崎は足早に去っていく。自分は何を押し付けようとしているのかなんて知らないが、兎に角言いたい事を形にしてやった、それだけ。兎に角今のやり取りだけでエンデヴァーに何かがあった事とやっぱり好きになれない事を強く感じた。そんなエンデヴァーは身体から出る炎を強くさせながら去っていく剣崎をヴィラン顔負けの表情で睨みつけた。

 

「黙れっ……何も知らん青二才の小僧が……!!!」




エンデヴァー、個人的には少し好きな方。
でもこの辺りは正直、あんまりって感じ……。

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