救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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焦凍の変化、剣崎の約束

「邪魔だ、とは言わんのか」

「……言って退くならな」

 

試合終了後、握手を交わした後それぞれが入り口へと戻り廊下を歩いていた。剣崎は右足を燃やしてしまった事があるので直ぐにリカバリーガールの所へと連行されて行ったが、轟はゆっくりと廊下を歩きながら何処か晴れやかな表情をしていたが直ぐにそれを曇らせた。目の前に憎くく嫌っているエンデヴァー(父親)が立っているからだ。

 

「2回戦で敗北するとは情けない、と言いたい所だが焦凍これでお前は俺の完全な上位互換となった!炎熱の操作は未だ危なっかしいがそれはこれからコントロールすればいいだけの事だっ!」

 

何処か歪みつつも我が事のように悦びの声を上げるエンデヴァー、それは息子の成長を悦ぶ物なのか、それとも自分の野望を叶える一歩が漸く形を成し始めた事に対する悦びなのか……。それを轟は冷えた眼差しで見つめ続けている。手を差し伸べながら野心溢れる表情でエンデヴァーは続ける。

 

「卒業後は俺の元へ来い、俺が覇道を歩ませお前を完璧なNO.1へとしてやろう!!」

「……どーでもいい」

「何っ……?」

 

ポツリと出た轟の言葉に思わず聞き返してしまった、怪訝そうな表情で疑問を浮かべるエンデヴァーを他所に左手を見つめる。

 

「お前の歩ませる道とか、俺がお前の最高傑作とか上位互換とかもう如何でもいい。ただ―――」

 

 

『―――あるよ、今そこに。だって―――お前はそこにいる』

 

 

「剣崎とのあれは、本気で楽しかった。もっと前にあいつに会いたかったって思う位に」

 

自分の個性、エンデヴァーと母の個性を受け継ぎそれら複合して自分に発現した。母の右側、エンデヴァーの左側という"半冷半燃"ずっとこれらは自分の物でありながらエンデヴァーの炎という個性を心の底から嫌っていた、だがあの時は、剣崎と本気で戦った時にはそれらを考えなかった。寧ろ率先して炎を身に纏っていた、これは自分の()だと実感し認識していた。

 

「あの時は、完全にお前の事なんて忘れてた」

「っ―――」

 

ぼんやりと、しかし確りと見据えている左腕。そこにあるのは自分の腕で自分の力、それが彼の中で決定されている瞬間。もう自分の中にはエンデヴァーの炎という認識は強くは無い、あくまでエンデヴァーから遺伝したが、自分の中で生まれたの炎という物に変わっている。

 

「俺はこの炎も使う、だけどそこにお前の思惑なんて関係ない。俺は俺の意志で自分で決めた道をいく、そう考える事にした」

 

そう言い切ると轟はエンデヴァーの隣を通り過ぎてそのまま歩き去って行く、それを見送るエンデヴァーの表情は何処か苦しげでありながら怒りを感じているかのような物だった。何故そのような表情をしているのかは彼にしか分からない。

 

「全く、自分で脚を燃やすなんて無茶をするねぇ……凄まじい痛みだったんだろうに」

「本気で痛かったです、でもまあ後悔はしてませんよ」

「後悔はしてないか……今回はそれで良いかもしれないけど時と場合は選ぶんだよ。でないと自分すら滅ぼす事になり得るよ」

 

右足を自ら燃やすという前代未聞の行動を行った剣崎、自ら回復しながらそれを行っていたとはいえそれは完全ではなく右足の一部は大きな火傷が残ったままになっている。それをリカバリーガールに治癒して貰いながらも自身の身すら顧みずに力を行使する剣崎に説教を送っていた。それを真剣に聞く剣崎。

 

「分かりました……すいませんでした」

「分かったならこれからは少しは身体を労わるんだね。確かにヒーローは自分の身すら犠牲にしなければ行けない時だってある、だけど本当に自分の身体を犠牲にし尽くして、その後自分なら救える命を助けられないヒーローだっているんだ。人を救うヒーローになりたいのなら、まず自分を助けて生き続ける事だよ」

「……以後、気を付けます」

「分かれば良いんだよ。さあ治癒は終わりだよ」

 

話が終わると足の火傷も完全に治っている、少々身体がダルくなっているがそれが治癒させる為に身体が超活性した証拠でもあり自分が負った傷の重さでもある。故に確りと受け止めて、その重さを実感しなければならない。そう思っていた時、出張保健所の扉が開いてそこから一人の少女が顔を覗かせた。

 

「剣崎ちゃん、大丈夫?」

「梅雨ちゃんっ!ああもう大丈夫、火傷も確り治癒してもらったし」

 

そう言いながら治癒して火傷が無くなった足を見せながら叩いて見せる、火傷も無い足に思わずホッと胸を撫で下ろす梅雨ちゃんだが軽く剣崎の頭を叩く。

 

「あたっ……!?何で俺叩かれたの……?」

「心配を掛けた罰よ、幾らなんでも無茶しすぎよ剣崎ちゃん」

「でもああしないと勝てないと思ったし……」

 

そう言うとムッとした顔になるとそのまま舌を伸ばして剣崎の頬を引っ叩いた。普通にビンタされるよりも痛い為か座っていた椅子からずり落ちて床に落ちる。

 

「いってぇっ!!?」

「確かに応援するって言ったわ、確かに言ったわ。でも剣崎ちゃん、あんな戦い方されたら―――心配しちゃうわよ……」

「つ、梅雨ちゃん……?」

 

屈みながら見つめてくる彼女の表情は普段のような物ではなく、悲しげで不安そうな物だった。確かに轟に勝つような無茶をしなければいけないだろう、それは間違い無い。しかしそれを見つめる側からしたら心から不安になってしまう。特に梅雨ちゃんは試合直前に応援するから頑張って、とエールを送っている。だからこそ自分の身が危険になったとしても向かい続けているのではないかと少なからず不安に思っていた。そして最終的には自らの身すら危険に陥れるような事をした剣崎、自分がそうさせているのではと怖くなった。

 

「ごめん……」

「本当に分かってるの?」

「うん、梅雨ちゃんにそこまで心配掛けちゃった俺が悪いし……約束する、もう不安にはさせない」

「約束よ」

「うん約束」

 

そっと彼女に手を伸ばして彼女の頭を撫でる、そして軽く笑いながら約束をする。もう絶対に不安にはさせないと誓いを立てる、すると梅雨ちゃんは普段通りの明るく可愛い表情に戻ってくれた。

 

「ああっやっぱりいつもの梅雨ちゃんが一番だよ、だって凄い可愛いもんね」

「か、顔を見ながら言わないでよ……て、照れちゃう」

「だって本当に可愛いんだからしょうがないじゃん」

「ケ、ケロロォ……分かったから、そんなに可愛いって連呼しないで……」

「(いい青春だねぇ……それにしても天然の人誑しだねこりゃ……)」




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