救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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強化、そして所長

「BOARD?これは随分と驚く名前だ、君がそこに行くと言うのはかなり驚きを覚えるよ」

「えっ何か拙かったですかね」

「いやいやいや、あそこは秘密厳守で秘匿事項が余りにも多い位で別段特殊な事務所という訳ではないさ」

「……あの、それ十分特殊ですよね」

「HAHAHAHA!確かにな!!」

 

様々な事を考慮しじっくりと考えをめぐらせた結果として剣崎は出久が推した『人類基盤史研究所内ヒーローチーム BOARD事務所』へと出向く事にした。それらを相澤へと提出した後にオールマイトと遭遇し、治療なども兼ねて彼と共に剣崎は帰宅し、今現在は共に夕食を取っている所である。ラウズカードの力の影響で活力と今までの健康が戻って来たかのようなオールマイト、今までは控えるようにしていた物も食べられるようになったと嬉しそうにしている。そんな出久の師である彼に自分の職場体験先を話すと何処か物珍しげに笑うのであった。

 

「あそこは世界でも有数の個性研究機関でね、そこでは日夜個性の探求が行われ続けている。例えるならばそうだな―――んっこのハンバーグ美味しすぎないか!!?口に入れた瞬間に芳醇な味と濃厚なソースがマッチして更にAmazingなtasteへと進化したぞ!!?」

「それはソースを作る時に焼いたときの肉汁を混ぜて作ったんですよ」

「なんとっ!!?成程これは家でもやってみる必要があるな……後で作り方を教えてくれたまえ……ってあっすまん私の方から話の腰を凄い勢いで折ってしまった」

「いえ大丈夫ですよ」

 

再開された話によると、個性によって生み出された物を個性の力を借りずに作り出す。本来ありえない物を個性などを応用して生み出せるように研究するなどなど、酷く先進的な研究までしているらしい。

 

「分かりやすくいうのであれば、八百万少女の個性である「創造」は創り出すためには対象の分子構造まで把握する必要などがある。それらを自分のイメージのみで何かを作り出せるようにする、といった感じだろうか」

「それは、実際にそうなったらとんでもないでしょうね……」

「うむ。対応力でいえばヒーロートップクラスの物になるだろうな」

 

そんな研究を行っている研究所、益々驚きに満ちてくるような気分だ。そんな研究を行っているところに所属している事務所からの指名、それに何か特別な何かを感じずにはいられない。

 

「あっオールマイトお代わりいりますか?朝間違えて大量に米を研いじゃって……食べるのを手伝ってもらえると嬉しいんですが」

「それなら喜んで手伝おう、怪我が原因で小食になっていたのだが君のお陰でいっぱい食べれるようになったからな!!いやぁいっぱい食べられるって素晴らしい喜びだな!!」

「それには同感ですね」

 

とオールマイトの茶碗に新しくお米を盛って渡しながら逆に気になる事も増しているような気がしている。自分がその事務所に指名される原因になったのは体育祭が原因、しかしその体育祭で自分が使ったのはあくまで「身体能力強化」の個性、一部はラウズカードを使ってもバレないように工夫していたがそれでも今回の殆どは強化個性で全て出来た事だ。正直自分の個性は有触れていると言っても可笑しくない個性で特殊性も何もない。

 

「如何して俺はそこから指名を受けたんでしょうか、俺の個性は今の社会だと割と良く見かけるような物ですよね」

「(モグモグモグ……ゴクン)身体能力の強化、言うなれば増強系だろうか。それらの個性を持つ人達は多いと言える」

「正直その個性は特殊とは言えません、ありふれているのにそれを研究所が指名した。出久からあそこは滅多に人を取らないって聞きましたし、秘密厳守で秘匿事項が有望だとしても態々指名なんかしますか?」

「うむ……そこは私も気になっていた所だ」

 

既に半分以上のお米がなくなっている茶碗を置いてお茶で軽く喉を潤したオールマイトもそれに同意した、仮に剣崎は体育祭で「仮面ライダー」として戦ってその個性に興味を示しているというならば話は簡単で興味の矛先が分かりやすい。

 

「それで試しに君がご飯の準備をしてくれている間にお手洗いを借りただろう、その時にちょっと電話してみたんだ。実はあそこの所長とは顔見知りでね、私の個性の事も知っていて色々と便宜を図ってくれていたんだ」

「そ、そうなんですか!?じゃ、じゃあ俺の事も!?」

「いや緑谷少年の事は話したが君の事は一切他言無用という事にしているからね、全く話していない」

 

それにホッとした、まあそれならそれでオールマイトが自分が怪我を治してくれた云々ということを言ってくれるだろう。オールマイトは結構嘘を付くのが下手なタイプの人間なのだから。

 

「君は轟少年との戦いでシバリングや足に火をつけたりしただろう、それが指名の理由らしい」

「それが、ですか?いやまあ確かに火をつけるのは、ラウズカード使わなくても出来ますけど……」

「本来身体能力の強化というのはあくまで本当に身体の運動機能を強化するだけなんだ。個性を鍛えたとしてもシバリングで氷を溶かしたり、燃えている足の治癒力を高めて燃える足に対応するなんて事は出来ない。それが主な指名理由との事だ」

「そうなんだ……」

 

それを聞いて驚いた。剣崎はこれらの事を昔から自然と出来るようになっていた、身体機能を強くするならその身体の機能である生体機能も強められるのではないだろうかと。そうすれば色々と便利になるだろうと思って色々やった結果、出来るようになっていた。故に自分と同じ個性を持つ人達もやろうと思えば出来るんじゃないか、やろうとしていないのは苦手な人なのかなっ程度の認識を持っていた。

 

「因みにどんな感じでやっているんだ?」

「えっと、イメージですかね。頭の中でイメージを作ってそれをやりたいって思いながら集中して……なんか説明へたくそですいません……」

「いや感覚的にやっている事を説明してくれ、という方が逆に難しいからね!構わないさ、私だって緑谷少年に個性の使い方を感覚的にしか教えられてないんだから」

 

研究所が如何して自分を指名したのかの謎が解けたからか剣崎はスッキリとした表情になりながら今度はオールマイトの相談事である出久のこれからの指導計画に付いてだった。誰かを教える事に付いては正直初心者なので誰かの意見を欲しかったらしい。その点、互いの秘密を共有し合う剣崎という存在は非常に有難いとの事。

 

「俺もずっと一緒にいながら組み手とかをしてましたね、出久には兎に角個性を使いこなさないといけませんからね」

「うむ、それは私も思っている。個性の完全なコントロールは必要になってくるからな。しかし、あのフルカウルはどうやって練習させたんだい?」

「あれは練習と言うかあいつの思いつきで、こうしたら如何かって言って来たんですよ。それでそのための練習をしたんですよ」

「ほうほうどんな?」

「言うなれば、流の特訓です」

「流?」

 

剣崎が行ったのは組み手のような形式の訓練、出久が発案した"ワン・フォー・オール・フルカウル"の習得を目標とした訓練。全身に掛けるのならばその前段階として身体の様々な部位で個性を発動させられるようにしなければ行けない、故に剣崎は組み手のような物をすると宣言した。剣崎は何処を攻撃するかを宣言した上で酷くゆっくりとそこへと向かうように攻撃をする、それに対処する出久は剣崎が指定する部位で防御するがその際には「ワン・フォー・オール」を発動させて防御するという訓練。それを何度も何度も繰り返し、徐々に速度を上げていく事で身体を個性の発動に慣れさせると同時に防御の経験値も蓄積させるという狙いがあった。

 

「成程……しかし「ワン・フォー・オール」の発動を防御にか。それはいい発想だ」

「あれだけの超パワーですからね、攻撃だけになんて勿体無いですよ。それにあいつが成長すれば防御の瞬間に発動させて、そのまま超パワーでダメージ反射とかもやれると思いますよ」

「おおっそれは凄いな!!」

 

と気づけば出久の育成計画へと話がシフトしていた、そのまま美味しい食事を堪能しながら剣崎とオールマイトは語り明かして行った。そして気づけば夜も更けていたので洗い物を手伝ったらオールマイトはご馳走のお礼を述べてから帰って行くのであった。その帰り道、オールマイトは空を見上げた。空に輝く星々が見えている、酷く美しい光景だ。

 

「人類基盤史研究所……BOARDか。君は何を思って剣崎少年を指名したんだ」

 

思い浮かんでくるお手洗いの中でした電話、電話に出た研究所の所長は剣崎が生体機能を強化したからと答えていた。だが自分にはそれ以外の思惑があるように思えて致し方なかった、それを素直に伝えてみると分かってしまうかと笑っていた。矢張り何かあるのかと思ったが、帰ってきたのは心配しないで欲しいという言葉だった。

 

「別に心配などはしていないさ、私は唯―――君が求めている物を剣崎少年に見出しているような気がしただけだよ、橘君」

 

同時に見上げた空に流れ星が落ちて行く、それはまるで―――ダイヤのように美しく強く輝いていた。

 

 

 

―――見出したんじゃないんだよオールマイト……見つけたんだよ。


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