救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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研究所での日々、研究所所長

「かぁっ~やっぱり言峰シェフのマーボーラーメンは最高だな!!ボリュームも満点なのに安くて美味しくて力が漲る!!さあこれを食べて今日も頑張ろう~!!」

「で、でもこれ凄い辛くないですかっ……!?辛いのは平気なつもりだったんですけど……!?」

「そりゃそうさ、ここの辛口は外で言う所の超々激辛だからね。中辛弱で漸く普通の辛口レベルかな」

「そ、そりゃ辛い筈だ……!!?」

 

人類基盤史研究所のヒーローチーム・BOARDへと職場体験へとやってきたエース・ブレイドこと剣崎。初日は研究所内の案内に研究所内での規則説明、守秘義務などの説明などを受けたその後職場体験中についての方針などがグレイブから発表された。研究所に所属するヒーロー事務所という事もあり、通常のヒーロー事務所とは業務などもハッキリ言って異なっていた。

 

ヒーローとは基本的な扱いとしては公務員で言うなれば国から給料を貰っている存在である。仕事の内容としては犯罪の取り締まり、犯罪が発生した際には警察からの応援要請が届きそれに応じる形で出動するのが主。そして事件などでの逮捕貢献や人命救助、それらの貢献度を申告してそれらを専門機関が調査を経て振り込まれるので基本歩合制となっている。しかし、ヒーローには副業が許可されており、CMなどの出演なども行う事もあるが、個性によってはそれらを利用して認知度を上げる目的などもある。しかし、BOARDの場合はそれらとは完全に異なっている。

 

「さてと、今日は昨日の続きで君の個性のMAXなんかの計測から始めるよ。コスチュームなしと有りの二つで分けるから、今回は着てOKだよ。さあ張り切って行こう」

「分かりましたっ!!」

 

そう言いながら漆黒のコスチュームを纏ったブレイドは早速ランニングマシンのような物に乗るとすぐさま計測がスタートされた。最初こそ普通のダッシュと変わらない速度だが徐々にスピードが増していき、車が高速道路で走るのと変わらない速度まで加速して行く。

 

「ぬおおおおおおっっっ!!!!」

 

研究機関に所属しているヒーロー事務所であるBOARDの基本的な業務は一般的なヒーローとは異なり、個性の研究に殆どが割かれる。剣崎の場合は身体能力の強化なので、通常時と比べてどの位まで強化出来るのかを計測するのが主になっていく。今行っているのも速度の調査だけではなく、それに伴って心肺機能などの強化具合までもが解析されている。

 

「ウェェエエエエエイッッ!!!!」

 

続けてキック力、パンチ力の計測や足の力だけでどれだけの踏ん張りが利くのか、腕力だけでどれ程までの重さを持ち上げられるのか、そして身体の回復能力はどれ程なのか、シバリングはどの程度まで熱を発生させられるのかというこの研究所に指名された理由とされている物に対しても行われた。

 

研究所に所属している彼らは個性の研究、それらのデータを元にサポートアイテムの開発への技術提供や医療関係との提携、個性制御の為のメニュー作りなどなどで研究所は社会に多大な貢献をしている。それらで得られている特許や技術使用料、研究所独自に開発したアイテムなどの売れ行きなどからヒーロー達に支払われる物が決められる。それらは基本歩合制な一般ヒーローとは違って基本給が確りと設定されていて、安定した収入が約束されているのも特徴的。

 

「うおおおおおおっっ!!!??なんの検査なんだこれぇぇぇぇっっ!!!??」

『緊急時における身体能力の計測、だって。まあ言うなれば火事場のクソ力はどの位なのかなって検査、取り敢えず限界まで力を発揮して脅威から回避して見てよ』

「だからってなんで刺の付いた馬鹿でかい鉄球に追いかけられないといけないんだぁぁぁぁっっ!!!!???」

 

と、様々な意味で変わっているがそれはそれで大変なことばかりで様々な事を調べるので本当に意味があるのかと疑いたくなるような検査を受ける必要まであるのである。先程受けたのは身体中をくすぐられてどの程度まで耐えられるのか、身体に電流を流して何処まで耐えられるのか、身体の柔軟さを調べる為に強制的に身体を曲げるベットに括り付けられたり……という検査だったり剣崎からしたら本当になんなんだと言いたくなるような物ばかりだった。

 

『うんうん、僕も受けたなぁ……僕はボールに押し潰されて生死の境を彷徨ったよ』

「はぁっ!!?」

『あの時はマジで死に掛けたなぁ……ははっ、ブレイドもそうならないように頑張ってね』

「ふざけんなぁぁぁぁっっ!!!!」

『うん正しくそれだよね、僕も思う。いい台詞だ。感動的だな……だが無意味だ、ノルマが終わるまで終わらないんだよ本当にこれ……』

「来る場所を、間違えたぁぁぁぁっっ!!!!!」

 

この後剣崎は文字通り火事場のクソ力を発揮し、迫り来る超巨大刺鉄球に向っていき刺ごと鉄球を蹴り砕くという限界の超越した超パワーを発揮してなんとかその場を生き延びる事に成功した。この後、剣崎に向かって興奮気味に話しかけてくる研究主任がどれほどまでに自分の力が凄いかを語ってくるのだが、肝心の剣崎は死に掛けたというのに労いの言葉が一つも無いので青筋を立てて拳の骨を鳴らしながら研究員に迫った。

 

「待てやめるんだブレイド!!」

「ああっグレイブさん彼を止めてください!!?」

「止めないでくださいグレイブ先輩!!俺は、俺はもう我慢出来ないっ……!!!!」

「違う、殴るなら僕がそいつを抑えるから思いっきりやっちゃえ!!」

「えええええっっっ!!!!??」

 

どうやらグレイブの時も同じようなことだったらしいが、彼の場合はギリギリ刺が身体を貫く事はなかったがそれでも誇張表現一切抜きで死に掛けた、それなのに顔を顰めてもっと真剣にやってくれと言われてもう本気で苛立ったという。その時は死ぬ思いをした影響で身体中から力が抜けていて殴りたくても殴れなかったという。なので今回は全力で剣崎に協力した、結局その研究主任は剣崎に一撃を貰ったという。

 

「ったくなんであんなのが主任やってるんですか!!?」

「一応優秀な上に政府から強引に捻じ込まれたんだ。だから所長もクビする為に抗議中なのさ、多分今回の事でクビする材料も出来ただろうし、近いうちにクビになるんじゃないかな」

 

その言葉の通り、その研究主任は数日後にリストラされた。その時の所長の表情はグレイブ曰く酷く清々しい物だったという。

 

 

そして職場体験の三日目、今日は職場体験らしいパトロールを行うらしい。漸くヒーローらしい事が出来ると思っていた剣崎だがその前に所長が話をしたいらしいから所長室に向かうように言われた。なんだかんだで顔すら合わせていないこの研究所の所長、一体どのような人物なのかと思いつつも案内されて所長室へと通される。

 

「良く来てくれた、エース・ブレイド。そんな名前になったのも運命がそうさせたのかな」

「運命……?」

 

所長室、そこは映画などに出て来そうなほどにきっちりとしていて威厳なども感じられる空間。その奥に佇んでいる男はゆっくりと振り向きながらこちらを見つめてきた、酷く久しく会う友人に向けるような柔らかい笑みを浮かべながら。

 

「初めましてエース・ブレイド、いや剣崎 初君。俺が此処、人類基盤史研究所の所長兼ヒーローチーム・BOARDの最高責任者である橘 朔也だ―――君には心から会いたい、そう思っていたんだ、そして色々と話したい事もあるんだ」

「俺に、ですか……?」


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