救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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ステインと仮面ライダー、真の英雄

出久を助ける為に変身し仮面ライダーブレイドの姿へとなった剣崎、彼は前に出て自らを盾として扱うようにしながら剣をヒーロー殺し、ステインへと向ける。じりじりとすり足で接近して行くブレイド、それに合わせるかのように長めの武器を手に取ってそれに備える。轟はそれに合わせるかのようにしながら氷の壁で何時でも防御と撤退、炎で攻撃と牽制が出来るようにしていた。

 

「「……―――ッ!!」」

 

刹那、両者が同時に飛び出すと凄まじい金属音が周囲に木霊しながら爆風にも似た剣圧によって巻き起こされた衝撃が広まっていく。剣がぶつかりあって互いの一撃一撃が相殺されていくかのように、消えていく。一合、二合とあっという間に互いに振るわれていく剣戟の数が膨大な数へと膨れ上がって行く。剣崎は剣戟で自分についてくるレベルまでに高められた技術、そしてステインの研ぎ澄まされた身体能力に驚かされた。

 

「「―――ッ!!!」」

 

逆手持ちで自分の身体に剣を隠しながら、剣の切っ先を持ちながら一気に振り下ろしてくる。それらを受け流しながら奥の身体へと狙いを定めようとするが同時に上げられた蹴りが腹部を狙ってきていた。回避も考えたが剣崎は敢てそれを身体で受け止める。刺が付けられているブーツの一撃にも殺傷力は十分にある、だが仮面ライダーの装甲を貫通するほどではなく逆に刺が粉砕される。

 

「はぁっ……良い、良いぞ……」

「こいつっ……!!」

 

腹部へと以前突き刺さるかのように入っている足を掴むと身体全体を回転させて、ステインを投げ飛ばす。壁へと激突するはずだった、が寸前で腕で衝撃を全て受け止めるとそのままバネのようにしながら剣崎へと蹴りかかった。鋭い蹴り上げるかのような物だが、それを拳で受け止める。するとステインは更に不気味な笑みを浮かべたまま背後へと飛んだ。

 

「す、凄い……っ!!」

「これが、仮面ライダーの力って奴か……」

 

個性社会では珍しい剣戟戦と激しい格闘戦、撤退の機会を窺っていた出久たち。下手に動けばステインが此方に標的を変えてくるのを警戒して大きな隙が出来るのを待っていたのだが、遥かに違う戦闘技術の差に驚きを隠せていなかった。出久は剣崎と何度も手合わせをして特訓をしているが、それでも彼は手加減をしてくれていたという事を思い知らされる、そして……飯田は未だに動かない身体に力を込めながら自分ではステインを倒せないことを痛感しながら出久や轟を巻き込んだ事を酷く後悔していた。

 

「僕は、僕は……ごめん二人とも……!!!僕なんかのせいで……僕は、ヒーロー失格だ……!!」

「飯田君……気にしないでよ、誰だってお兄さんが傷つけられたら居ても立ってもいられなくなる。これからそれを制御出来るようになればいいんだよ」

「緑谷に同感だ。感情はそう簡単に制御できねぇ、それは俺がよく分かってる」

 

そう言いながら飯田を励ましている最中、仮面ライダーが一気に後退して彼らへと飛んで行った刃を腕を振るって粉砕して守る。それらを見て、ステインは更に喜びに満ちた狂気的な笑みを浮かべる。

 

「あの化けもん、常に数択を迫って来てやがんな。仮面ライダーが防御とか敢て受けるとかしなきゃ俺達に攻撃が飛んでくる……くそ、早い所撤退しないとマジで足手纏いだ」

「でも下手に動こうとしたら逆効果だ、タイミングを待たないと……!!!よし、身体が動くようになったっ!!」

 

立ち上がった出久、彼は相手に血を舐められてから動きが取れなくなっていた。しかし先に血を舐められていた飯田や標的になってしまっているヒーローはまだ身体が動かせない。どうやら相手を動けなくするにも条件があるらしい、そして出久は気づいた。

 

「仮面ライダー!!アイツに絶対血を舐めさせちゃ駄目だ!!あいつは多分、相手の血を舐める事で動きを封じる、そしてその血液型によって時間が異なるんだ!!」

「はぁっ……お前も良いなぁ矢張り……正解だ」

 

ステインの個性、それは「凝血」。相手の血液を経口摂取し、相手の身体の自由を最大で8分間まで奪う個性。血液型によって効果時間は異なり、O<A<AB<Bの順で奪える時間は増える。 個性だけ見れば強い個性とは言えないが、ステインの戦闘スタイルや身体能力がそれを強個性へと変貌させている。

 

「仮面、ライダー……お前は実にいい。正に真のヒーローと呼ぶべき存在だ。お前は俺がそいつらに攻撃する事を読みきった上で奴らを守る為に自らを盾にしている。自らを顧みず他を救い出す、それこそ真のヒーロー、本物の英雄というものだ」

「……」

「一つ聞く、お前は何故奴らを助ける」

 

何かを確認するかのようなステインの言葉、それを尋ねられた時に剣崎は剣を構え直しながら差も当たり前のように答えた。

 

「誰かを救う為に理由なんて要らない、俺がそこにいる人を救いたいと思ったそれだけの事だ。誰かを救える力があるならば、それを行使する、それだけの事だ」

 

紛れも無い剣崎の本音。嘗てオールマイトに語ったものと同じ彼の本質、目の前で苦しんでいる人を救いたい。ただそれだけの想い、自分という1を用いて助けを求める1を救いそれを繰り返していく。それは"ワン・フォー・ワン"ではなく"ワン・フォー・オール"へとなっていく。自分の力を誰かの為に使いたい、それが剣崎の本音である。それを受けたステインは恍惚とした表情で天を見上げ、仮面ライダーへと剣を向ける。

 

「お前は、正しく真のヒーローだ。オールマイトにも匹敵する真の英雄、そう認められるべき存在だ。貴様こそ今の世界に居るべきヒーローだ……!!」

 

と剣崎をまるで憧れのヒーローを目の当たりにしたかのような表情で見つめてくる、ヒーロー殺しの根底にあるのはヒーローへの憎しみなどでは無い。本来ヒーローになるべきような信念、営利目的、ヒーローという輝かしいものを汚す存在を憎んでいるのだと剣崎は直観する。まるで―――ヒーローに失望していた自分のようだ。

 

「ステイン、お前は―――」

 

新たに声を発そうとした時、二人の間に突如何かが来襲して来た。

 

「な、なにっ!?」

 

出久の声が周囲に木霊する中でそれはゆっくりと身体を持ちあげた。それはまるで二足歩行をしている動物だった、だがその外見は何処かグロテスクでおぞましい。髑髏とヤギを融合させたかのような不気味な顔、気色悪く発達している筋肉、見ているだけで鳥肌が立ちそうなほど。ヤギの角のような得物をその手に持っているそれはまるでゾンビのような不規則な動きをしながらも周囲を見渡すと、凄まじい勢いで接近してきて斬りかかって来た。

 

「なっ!!?ぐっ!!!」

 

突然の強襲に驚きつつもブレイライザーで防御するが、それは素早い動きでブレイラウザーの防御をすり抜けて凄まじい殴打のラッシュを加えてくる。そして肩にある角で剣崎を壁にまで吹き飛ばすとその心臓に向かって勢いよく得物を突き刺さんと突撃した―――がっ突如その怪物は後ろへ飛び去って距離をとった。

 

「……はぁっ逃したか」

 

向けられた刃が懐の寸前まで迫り、それを回避する為に飛び去ったのである。それはステインの刃だった。まるで―――ステインがブレイドを守ったかのような光景に出久たちは驚きを隠せなかった。

 

「社会に蔓延る偽者、悪戯に力を振りまく犯罪者、それも粛清対象だ。貴様のようなモノに真の英雄(仮面ライダー)をやらせはしない」

 

そう言うとステインは一気にヤギの怪物のようなモノに接近して切りかかった、凄まじい怒涛の猛攻。それらは命中せずとも相手の動きを確かに制限して行く洗練された物だった。それらを受け続けた怪物は壁を蹴って何処かへと去って行く。

 

「逃すかっ……!!!仮面ライダー、お前というヒーローに会えた事を誇りに思う」

 

そう言うとステインも壁キックを繰り返してその怪物を追っていく、途中仮面ライダーへと視線を向けるとそのままステインは去って行ってしまった。取り逃したというよりも見逃してもらえたような状況に出久達は言葉を失っていた。すると目の前までやってきたブレイドはカードをラウズすると、飯田達の怪我を治療する。

 

「け、怪我が……治ったっ……!?」

「あ、相澤先生にもやった奴だよ。これで先生の怪我も凄い治ったんだ……」

「すげぇ力だな……」

 

怪我の治療が完了すると彼らを一瞥し、仮面ライダーは消えて行くのであった。その直後、凄い勢いでやってきた剣崎が到着するのであったが轟から遅すぎると言われるのであった。その後、ステインがエンデヴァーによって確保されたという情報が広まっていった。しかし、ステインが負っていた奇妙な怪物は確認出来ず、寧ろステインはそれによって凄まじい重傷を負っていたとの事。

 

こうして、ヒーロー殺し・ステインによる一連の事件は幕を下ろす―――だがステインが巻き起こした嵐のような流れは収まる事を知らずに悪意の炎を更に大きくする結果となる。

 

 

「あの怪物、何なんだった……?なんか、妙に身体がざわめいたというか……不思議な感覚があったような……」


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