『贋物……!!正さねば……誰かが……血に染まらねば……!!
「ステイン……貴方だって俺と同じような道を歩めた筈だったんだ……進む道が違っただけで貴方は―――俺と全く同じなんだ」
動画サイトにて掲載されているステインが確保される寸前の映像、それは全身から血を噴出し腕も足も折れている筈なのに全く折れない強靭な意思で身体を支えながらエンデヴァーと相対する物だった。映像越しでも読み取れるほどに発散されている殺気と尋常では無い怒りと気迫、それらを受けてエンデヴァーは動けなくなるほどの物だった。しかし既に重傷を負っていたステインは立ったまま気を失ってしまい、そのまま確保されたという。
「ブレイド、さあ個性研究の続きするよ」
「あっはい、今行きます」
ヒーロー殺し・ステイン。本名、赤黒 血染。彼もまた剣崎と同じようにヒーローに憧れながらもヒーローに深い失望を覚えていた。言うなれば―――ヒーロー殺しは有り得たかもしれない仮面ライダーの姿として剣崎に深く深く刻み込まれていた。たった一度の出会いが大きく運命を変えた。憧れのヒーローとの邂逅、そして結んだ約束、それらが齎した道。僅かな違いがあっただけで自分とステインは酷く似ていると思えて致し方なかった。
「今日まで有難うございましたグレイブ、なんか色々と迷惑掛けちゃって……」
「何の何の、無事に職場体験が終わって何よりだよ。それに僕は君を守るべき立場なのに色々と丸投げしちゃった。それについても悪かったね。兎に角、この経験を糧により一層の努力を望むよ」
こうして激動の職場体験が終わりを告げた、去っていく研究所と駅まで見送りに来てくれたグレイブに頭を下げて剣崎は電車に乗って帰路に付くのであった。しかし、その間もステインの事が如何にも離れなかった。そしてもう一つ―――最後、自分に襲いかかってきたあのヤギのような怪物……USJにてオールマイトへの切り札とされていたあれともまた違う物を感じるあれ、あれはまるで―――仮面ライダーに近い何かを剣崎は感じていた。
「ケロッ?剣崎ちゃん」
「あっ梅雨ちゃん……?」
帰路の途中、出会ったのは同じように職場体験先から戻ってきていた梅雨ちゃんだった。今日はそのまま家に帰って明日登校する事になっている。必要な報告やらは体験先がやってくれているのでそのまま帰っても良いという事らしい。
「職場体験お疲れ様、そっちは如何だった?」
「基本的にパトロールに掃除、トレーニングばっかりだったわね。でも一度隣国からの密航者確保に同行させて貰って、そこで活躍出来たと思うわ」
「そりゃ凄いな。こっちは基本的に毎日毎日個性の研究と実験が主だったよ」
「でも剣崎ちゃん、保須市で人命救助に貢献したって話じゃない」
そう、ステインとの戦闘後に出久達と合流した後でグレイブもその場に現れて人命救助の手伝いをして欲しいと言われて剣崎は共にその場に向かった。USJにてヴィラン連合が切り札として連れてきた脳無と呼ばれるものの同類が暴れまわった影響で周囲にかなりの被害が出た上に、火事やら建物の崩壊などが相次いだらしい。そして建物などに取り残された人達を救うのに剣崎はコスチュームの能力をフル活用して多くの人の命を救っていた。エンデヴァーによるステイン確保に隠れてしまってはいるが、剣崎はエース・ブレイドとして立派な働きをしたとニュースでも流されている。
「俺のコスチュームはそういうのに優れてるからね、ああいった場だと独壇場さ」
「でもそれを活用出来たのは剣崎ちゃんの力があったからよ、もっと胸を張って良いと思うわ」
「……有難う、梅雨ちゃん」
素直に梅雨ちゃんの言葉は嬉しかった、グレイブからも人の命を救った素晴らしい功績でヴィランを倒すよりももっと素晴らしいと評価された。でもステインの事が頭から離れなくなっていた剣崎にとって、今の梅雨ちゃんの言葉は改めて自分がなりたかった救いのヒーローとしての道を歩み始めている一歩であると実感出来た。
「梅雨ちゃんはこれからもう帰り?」
「そうね、でも今うちには誰も居ないみたいなの。お父さん達はちょっと出かけちゃってて帰って来るのは夜遅くか明日みたいなの。だから取り敢えずこのまま夕ご飯の材料でも買って帰ろうと思ってるの」
「ふ~ん……それなら家にこない?俺も家に帰っても誰も居なくて暇なんだ」
「ケ、ケロッ良いのかしら……?」
「寧ろ来てくれると有難いかな、今は君と一緒にいたいんだ」
真顔でそんな事をいってくる剣崎に思わず顔を赤くしながらも、断る理由も無いので剣崎の家に行く事になった梅雨ちゃんは小さく、そんな事を面と向かって言わなくてもいいのに……と言いながら彼の後に続くのであった。
「さあっ上がってよ梅雨ちゃん、遠慮とかしなくていいからさ」
「おっお邪魔します……」
そう言いながら到着した剣崎の家だが、梅雨ちゃんは緊張してずっと硬くなりっぱなしだった。しかし次第に慣れていった後に互いに職場体験でどんな事をしたのかを、話し合いながら感想などを述べていくのだった。そして、話の内容はステインへの事へとなっていった。
「ヒーロー殺し……やっぱりとんでもない相手だったのね。でも私はちょっと安心したわ、剣崎ちゃんだったら絶対に会ったら戦ってたと思うから」
「否定できないのが辛いなぁ……」
「ええっきっと緑谷ちゃんに轟ちゃん、飯田ちゃんを助けようとして自分の身体を盾にしたり回避出来る筈の攻撃をしなかったりしてたと思うわ」
「(す、鋭い……)」
と仮面ライダーになっていた時の自分の行動の殆どを看破されているのに冷や汗が出てくる。流石の直観と推理力、自分の事をよく分かっている……。
「私との約束はきっと守ってくれる、でもその為に目の前で友達が傷つくなんて許せない。そう言って自分を犠牲にして、その後で私に頭を下げて謝ったりしそうよね剣崎ちゃん」
「……実際そうするだろうから何も言えないよ」
本当に自分の性格や行動原理をよく分かっていると梅雨ちゃんにある意味尊敬を向けてしまう。そんな彼女は隣に座りこみながら自分の手をとって握り締める。
「剣崎ちゃん、だから無理に私との約束を守ろうとしなくてもいいわ。その代わり―――私が安心出来るように毎日笑顔を見せてね」
「っ……ああ分かった、じゃあ梅雨ちゃんも何時も笑顔で居てね」
「勿論よ」
そう言いながら互いに笑みを浮かべながら強い握手を握る、そんな事をしていると次第に梅雨ちゃんは自分のやっていることが徐々に恥ずかしくなって来たのか顔を背けてしまったが剣崎はそんな顔も可愛いなぁと言うと更に顔を赤くしながらポカポカと剣崎を叩くのであった。
「いやぁごめんごめん、つい思った事を言っちゃったよ」
「っ~~!!!!剣崎ちゃんの馬鹿馬鹿馬鹿……!!」
「だって本当に可愛いんだもんしょうがないじゃんっていってぇっ!!?ちょ、ちょっと待って梅雨ちゃん!?舌で殴るの反則!!?」
「もう剣崎ちゃんなんて知らないっ……!!」
「わぁぁぁっ梅雨ちゃん待って待って!!?ぎゃあああああああっっ!!!??」