救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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入学試験、ラストスパート

KICK(キック) DROP(ドロップ)

「ウェェェエエエエエイッッッ!!!!」

 

特徴的な叫び声を上げながらも仮想敵を蹴り砕いた剣崎、これで彼の合計ポイントは60を超えていた。試験開始から約8分が経過している、この試験の制限時間は10分。その間にどれだけ多くの仮想敵を倒してポイントを得られるかという事を求められている試験、誰よりも早く標的を倒してポイントを稼ぐ必要があるのだが彼は最初こそそれを真面目に行っていた。だが途中から完全に全く違う事を行っていた。

 

「大丈夫か君」

「ぁ、ぁぁっ……!!」

「無理に声を出さなくて良いよ、怖かったんだろ。大丈夫怖がるのは恥ずかしい事じゃないよ」

 

同じ試験を受けているほかの受験生、そんな中でも恐怖や身の丈にあっておらず仮想敵に返り討ちにあってしまっている受験生達を助けるために行動を起こしていた。腰が抜けて動けなくなってしまった子を抱き抱えて避難、防御すら出来ないほどに恐怖している子の為を救うために襲い掛かろうとしている仮想敵を倒したりと救助を試験の為に作られた市街地のフィールドを駆け回っていた。入学を目的とする受験生からすると態々ライバルを助ける事に対する理解が出来ないと言いたげだが、彼にとってはそれが一番やりたい事なので気にしない。助けを必要とする人を無視するなど、自分には決して出来ない事だ。

 

「さてと……次だ」

 

また一人助け終ると再び駆け出していく。フィールドを進んで行くと標的を倒している受験生が多く確認出来る、一方で助けを求める者はいないようにも思える。自分と同じようにこの雄英に入学する為に訓練を重ねてきた者が大多数なのだろう、その一方で矢張り本番のプレッシャーに押し潰されて実力を発揮出来ないものもいる。それでももしかしたらまだいるかもしれないと、巨大な仮想敵が発見した。自分が今まで倒してきた仮想敵の数倍も巨大な敵、試験に置いて障害と説明されたポイント0とされている仮想敵だ。それにしても本当に巨大だ、ビルよりも巨大な巨躯をしている。

 

「で、でかい……!?あれが0ってほぼ詐欺だろ……ってあんな奴が暴れるんだったら絶対危ない子が出る!?」

 

全神経を使って周囲を見て回る、矢張り0ポイントというだけあって誰もがあれを避けている。だがあの巨大さ故に恐怖心が増幅され逃げ纏っている受験生も多くいる、あの巨躯が暴れると大勢が間違いなく被害を蒙る。ならばやる事は一つしかない。あれを倒す、0ポイント?試験時間ももう直ぐ終わる?やる意味が無い?そんな事知るか、倒す事で人を助ける事に繋がるのだ、自分がやりたいからやる、それだけの事だ。

 

「(制限時間まで、後30秒……!なら、一撃で仕留める―――!!)」

MACH(マッハ)〉 〈TIME(タイム)

「―――『固有時制御(TIME ALTER) 超加速(MACH ACCEL)』ッ!!!」

 

剣崎は再び力を行使する、世界の動きその物が遅くなって行き自分の感覚だけが倍速されていく。そこに加わる高速移動が組み合わさる事でより高い速度を発揮して巨大な敵へと向かって行く。さてどうやって倒すか、正直剣崎は具体的にどうやって倒すなんて事は考えていなかった。ビルサイズの敵なんて戦った事ないし打倒法なんて、作戦の一つもしなかった。だがそれでも足は止まらない、自分がやりたい事をやると決めたのだから全力でやる!!

 

「(属性は駄目だ、それ以外で……それなら、きついかもしれないけど……これならどうだっ!!!)」

KICK(キック)

 

時間がゆっくり過ぎ去って行く中で高められた跳躍力、それで高く跳びあがった剣崎。それをビルの壁を何度も蹴り返す事で巨大な仮想敵の頭上を取る事に成功した。そして此処からが一番大事な事だ―――。

 

RUSH(ラッシュ) DROP(ドロップ) DRIL(ドリル) METAL(メタル)

「ォォォ……ウェェェェェエエエエエエエエエエエエイイイイ!!!!」

 

鋼鉄のように堅くなった剣崎はそのままドリルのような高速回転をしたまま、凄まじい勢いで仮想敵へと落下するかのように突撃して行く。それに気付いたのか握りつぶそうとするかのように巨大な腕を動かして剣崎へと向けて行くが、凄まじい激突音と共に腕を砕いてそのまま身体を掘り進むかのように蹴り砕いていく。内部を蹴り砕いて仮想敵から飛び出た剣崎、着地しながらゆっくり立ち上がると同時に仮想敵は自らの自重を支えきれなくなったかのように、爆破解体されるかのように内部に向って崩れ落ちた――それとほぼ同時に「プレゼント・マイク」の

 

『終了ぉぉぉぉぉぉ!!!』

 

試験終了の声が響き渡った。それを聞いた受験生達から安堵の声や絶望めいた声が溢れ出して行く。そんな中、巨大な仮想敵を撃破した剣崎は―――

 

「……流石に少し無理し過ぎたかも……一度にラウズをやり過ぎた……」

 

発動した個性の影響か、身体に来ている負担の大きさに少し顔を歪めつつも満足げに笑うのであった。そして意識は直ぐに筆記試験へと向けられるのであった。

 

 

「YEAH!全くもって今年は豊作だな!!」

「ポイント0が2体も完全に破壊されるとは思わなかったね、豊作豊作」

 

実技試験の映像を見ながら雄英の教師陣は会議を行う。モニターにデカデカと映し出されている各試験会場での映像とポイントの獲得数をランキング式にして表示がされている。上位陣の顔ぶれやポイントかくとくの仕方に教師陣からはそれぞれの声が漏れている。トップは敵を倒した事で加算される「敵ポイント」のみで2位を獲得している、それ以外にも8位には「救助ポイント」のみで上位に入る受験生もいる。酷く両極端な現れ方に一部の教師からは笑いも漏れている。

 

「だけど一番の目玉はこいつじゃねぇのか?」

「そうだね。今回の実技主席は敵ポイント自体は2位の"爆豪 勝己"君の方が上だけど、総合的に見た場合は彼の圧勝とも言えるからね」

 

実技試験の主席、1位通過を決めたのは―――"剣崎 初"。敵ポイント68点、救助ポイント56点。どちらのポイントも最も高かった者と比べてしまうと劣ってはいるが、総合的な観点に見た場合には彼に軍配が上がり問答無用の1位通過と言える。

 

「個性は"身体能力強化"ってなってるな。確かにどれもすげぇ強化だぜ、それにこいつは俺のスタートの合図にも唯一反応してたしな!」

 

と、何処か剣崎贔屓な目線になっている「プレゼント・マイク」。あそこまで見事なスタートを切って貰えると何処か嬉しくなるようだ。しかし、だがと付け加える。

 

「こいつ、妙に早すぎる気がするんだよなぁ……」

「それは私も思ったよ。唐突なスタートには備えていたから、と言えば簡単だけどその後が余りにも早すぎる。まるで彼だけ時間が早くなっているかのような感じだ。

 

そんな言葉にまさか……と声が漏れるが、兎も角剣崎の実技合格は確実。他にも決めなければいけない事があるんだからと校長は話題を切ると次の生徒へと入った。そんな中で一人、剣崎の合格を喜んでいる教師がいた。

 

「(私との約束、君がその一歩を踏み出してくれた事を嬉しく思うよ剣崎少年。私も君との誓いを守り続けてみせる……!!)」

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