救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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勉強会と両親の事

職場体験からそれなりの時間が経ち、まもなく夏本番を迎えようとしている6月。間も無く期末テストを控えている頃の事であった。

 

「ねぇ剣崎ちゃん、貴方期末は自信ある?」

「まあまあかな。一応授業のノートは全部取ってあるし範囲の目安も付けてある、後はそこらを順当に勉強して行けば問題ないかな」

「真面目に授業に取り組んでいれば大丈夫な物ね」

 

期末テスト、学生にとって関門の一つとされているそれは当然雄英にも存在している。しかもそれで赤点を取ってしまうと夏休みに行われる林間合宿に行けずに補習地獄を味わう事になると相澤から脅しを掛けられている。そうならないように勉強しておけと言う事なのだろうが……体育祭や職場体験というイベント尽くしの雄英での勉強はかなり大変なのか多くのクラスメイトは頭を抱えている。しかし梅雨ちゃんも剣崎は特に心配はしていないのか余裕を見せている。

 

「でもちょっと心配な所もあるから見直しとかはしておきたいわね」

「それは俺もだな……ノートとか参考書とか見直して置かないと……」

「アァン二人とも余裕たっぷりねぇ、アタシはちょっと不安だわ。数学がちょっと苦手でね」

 

若干ブルーになっている京水、どうやら数学の一部が苦手らしくそこがかなり不安らしい。それでも以前中間では同率で9位だった事を考えると普通に優秀なはずなのだが……。因みに剣崎は八百万と同じく1位だったりする、入学主席は伊達ではないと言う所だろう。

 

「なんなら皆で勉強会でもするかい?皆で教えあったりすれば進むだろうし」

「あらいいわねそれ!!一人で黙々とやるよりもきっと進むわ!!是非参加させて頂戴、そして数学教えてください初ちゃん」

「教えてあげるから大丈夫だよ、梅雨ちゃんも如何?」

「そうね、それじゃあ随伴しちゃおうかしら?」

 

そんな風に勉強会を開くことが決定するのであった。早速勉強会を開くことを決めて次に場所を決めようとしていると麗日と出久、そして常闇も是非参加したいと言う申し出があったので一緒に勉強する事になった。

 

「それじゃあ場所如何する?何処かのファミレスとかでやる?」

「それだと余計な金とか掛かるし、煩い客とか来たら集中し難いんじゃないかしら?」

「うん、私もあんまり余計なお金が掛けたく無いかな……」

「では開催場は如何する?」

「ならいっその事、俺の家でやるか?それなりに広いし歓迎するけど」

「それはいい考えね、それじゃあ剣崎ちゃんの家で勉強会をする事決定ね」

 

という事で剣崎の家で勉強会を開くことが決定するのであった。出久は友達の家に行ける事にやや嬉しさを感じつつも何かお土産などを持って行った方が良いかと思いつつも、その日はそのまま解散となった。そして翌日―――。

 

 

「おっは~出久君!!今日の勉強会、ちょっと楽しみで早起きしちゃった!!」

「麗日さんも?実は僕もなんだよ」

 

集合場所として設定した剣崎の家に一番近い駅、そこに一番乗りしていた出久。彼の次にやってきた麗日は元気いっぱいに挨拶をしながら今日が楽しみだった事を口にする。男の友達の家に行く事は初めての経験だし友達と一緒に勉強会をすると言うのも久しぶりで楽しみにしていたとの事。そして次にやってきたのは常闇と京水、そして梅雨ちゃんだった。

 

「すまん待たせたか?」

「ううん全然、それにしても皆早いね。予定よりもまだ30分もあるよ」

「アァンそれは当然よ、だって初ちゃんのお家に行けるのよ?マナーとして30分前行動なんて基本よん♪」

「そうね。折角招待して貰ったんだから早め早めの行動は基本よね」

 

全員が時間よりも早く集合してしまったので、出久が剣崎に連絡を入れてみてもう行っても構わないかと尋ねてみると全然構わない。という返事が返ってきた、事前に貰っていた案内ルートを使って駅から雑談をしながら住宅街を進んで行く一行、そして彼らは住宅街の一角にある一軒家に到着した。表札には剣崎と刻まれており、此処が目的地の剣崎の家になるのだろう。

 

「此処が剣崎君の家かぁっ……普通に立派な家だ」

 

そう思いながらインターホンを押そうとした時、玄関の扉が開いてそこからラフな私服を纏っている剣崎が顔を出していらっしゃいと家の中へと招いた。

 

『おじゃましま~す』

「失礼する。剣崎、一人では色々と大変なのではないか?」

「まあな、でもまあ慣れたよ。掃除洗濯買い物……もう家の事は全部出来るようになってるよ、適当に掛けててくれ」

 

リビングへと案内された皆は剣崎の家の中にある物を見つつも、腰掛けてテーブルに着く。すると剣崎が氷入りの麦茶を差し出して出迎えてくれる。良く冷えている麦茶が少々暑かったので火照っている身体を気持ちよく冷やしてくれる。麦茶を飲んでいると麗日が何処かからか香ってくる良い匂いに気づいた。

 

「あれっなんかいい臭いがする……」

「本当ね」

「ああっ。昼食にと思って昨日の夜にカレーを作っておいたんだよ。皆食べて行くだろ?」

「えっ良いのっ!!?」

 

と思わず麗日がおっかなびっくりな声を上げながら聞き返すが剣崎は笑顔で勿論と返す。

 

「やったぁっ!!実はウチ、お昼抜こうと思ってたんだぁ!!」

「アアァァアン初ちゃんのお家にこられただけじゃなくてお料理まで堪能出来るなんて……なんて最高な日なのかしら!!」

 

と京水一緒になって喜び始め、麗日とハイタッチなどをして喜びを分かち合っている。そんな喜んでいる一方で出久達は本当にいいのだろうかと思っていたが常闇がそれを尋ねた。

 

「しかし構わないのか、勉学の面倒を見てもらうだけでは飽き足らず食事まで……」

「いいんだよ別に。実は俺もさ、友達が来てくれるっていうから嬉しくてさ……それで精一杯持て成したいと思ってさ」

「それなら逆に受け取らないと剣崎ちゃん迷惑掛けちゃうわね、それじゃあ喜んで戴きましょうよ」

「そうだね、剣崎君ご馳走になります!!」

「おう。それじゃあ取り敢えず……昼まで頑張って勉強しようか」

 

全員がおおっ~!と意気込みながら期末テストへと向けた勉強が始められた。剣崎は自分の勉強をしながら全員の相談に乗りながら主に京水や常闇の物を見て教えて行きながら、梅雨ちゃんは出久と共に麗日の物を見ていく。そんな風に進められていく勉強は順調に進んで行きそれぞれが苦手としている部分の勉強が上手く進んで行った頃、ちょうどお昼の時間となった。

 

「んじゃ一旦休憩にして、昼食タイムにしようか」

「賛成よ、ちょっと頭を休めたいと思った頃だしね」

「しかし剣崎、お前教師に向いていたりするのではないか?」

「アァン同感よっ♪本当に分かりやすかったものっ♪」

「ははっ有難う、でもヒーロー志望だからそれは無いかなー」

 

そう答えながらキッチンに向かってカレーを温め直していく剣崎、そんな中出久がお茶のお代わりを貰っている時に写真立てがある事に気づいた。

 

「これって写真……?」

「あっ本当やね、男の人と女の人と赤ちゃん映ってる……これってもしかして剣崎君のお父さんお母さんの写真?」

「んっ……ああ、そうだよ」

 

そこに映っているのは母親が幼い赤ちゃんを抱きつつも父親に抱きしめられ、そんな父は向けられているカメラに向けてピースサインを送りながら笑顔だった。そんな温かみがある写真に思わず視線が集まっていた。

 

「剣崎、お前のご両親は何をされているんだ?」

「俺の両親は……海外で、戦災孤児とかを助けたり救助活動とかに参加してるんだよ。ヒーロー活動にも負けない気高い事をしてるって俺は思ってるよ……ほらっカレー上がったぞッ!!大盛りがいい人~!」

「アァンアタシ手伝うワァアン!!そして大盛りお願いぃ~!!」

 

と話を区切りながらカレーに話を移した剣崎、そんな彼の表情を見つめていた梅雨ちゃんは見逃さなかった。両親の話題になったとき、暗い影が顔を覆っていた事。声に悲しみが滲み出ていた事、

 

「剣崎ちゃん……?」


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