雄英の試験場の一つ、そこで今一対一の戦いが行われていた。一方は剣、一方は銃をその手に持ちながらの戦いが。幾つものの疑問が頭を過ぎって行くそれらを振り払いながら、一気に接近して殴りかかる青の剣士と手にした銃を上へと放り投げながら構えを取って迎え撃つ赤の銃撃手。
「はぁぁっ!!!」
「フッ……!!」
素早く的確な打撃を打ち込んでいく剣士、ブレイド。それらを肘や膝といった部分で的確に防御を行いながら相手にダメージを与えていく攻勢防御を行う銃撃手、ギャレン。豪腕を誇る剣崎から放たれてくる攻撃はどれも強力だが、それらを橘は上手く受け流しつつも防御を行っていく。そして上へと放り投げたギャレンラウザーが落ち始めたのを感じ取ると、一気に攻勢に出る。
「らぁぁっ!!」
「ぐっ、おおおっっ!!!」
激しいキックのラッシュと絶妙に折り混ぜられていくフェイントと膝蹴り、それらの判別は難しい。故か剣崎も一歩も引こうとせずに全力で攻撃を行っていく。それでもギャレンは攻撃をやめない、そして数歩前に進める事が出来た程度だったのにギャレンは焦らなかった。手を背中へと回すとそこへとドンピシャでギャレンラウザーが落下し、それを握り締めた。
「っ!!?」
「零距離だ、取ったぞ!!」
「ぐあああっっ!!!」
押し付けられたラウザーから放たれた弾丸はブレイドの胸部へと吸い込まれていく、ブレイドはそれを食らいながらも後方へと飛び退きながら吹き飛ばされていく。そして吹き飛ばされながらも地面を蹴って、ギャレンの射線上から逃れるようにしながら自らの剣を構えて飛来してくる弾丸を切り伏せる。
「あ、危なかった……!!後ろに飛んで無かったら確実にやばかったっ……!!!」
「(状況判断能力も悪くない、一発受けた時点で威力を把握してダメージの軽減と仕切り直しを図る為に後方へ……)」
広いスタジアムゆえにそう簡単にはギャレンの射撃からは逃げられない、それでも至近距離からの銃撃を受け続けるよりも遥かにマシという物だ。しかし距離を放してしまった事で接近戦闘を主体にするブレイドにはそれなりに辛い状況になってしまったのも事実、故に如何にかして近づかなければいけない事になる訳だが……。
「くっ!!」
咄嗟に転がって攻撃を回避する、そのまま走ってギャレンの銃撃から逃れようとするが精密で容赦の無い射撃は何処まで自分をホーミングしてくるかのような偏差射撃で自分に襲い掛かってくる。ブレイラウザーで飛んでくる弾丸を切る事で防御して、観客席に移動して椅子などを遮蔽物にして身を隠しながら移動する。
「勘弁して欲しいぜ……射撃が正確すぎる……」
思わず毒づいてしまう程に橘の射撃技術は洗練されている、ハッキリ言ってダメージを少なくする為に後ろに飛んだがそれさえ正しかったのかと思いたくなるほどに近づく事が難しい。かと言ってもあの様子から橘は決して近接戦闘が苦手というわけでもない。インファイトも高いレベルでこなす事が出来るオールラウンダーのガンナー……こうして文字にすると改めてとんでもない。
「くそっ……なんとか俺の間合いに引き入れないと駄目だっ……!!!」
「考え事は終わったか」
思考が纏まり切らない中で周囲の椅子が爆発して行くかのように吹き飛んでいく。ギャレンが観客席までやってきた辺りを銃撃で破壊して回っている、弾幕を張りながらジリジリと迫ってくる。なんとかこの弾幕の嵐を突破してブレイラウザーの間合いに入れて斬るしかない。
「落ち着け……パニックは全てを台無しにする……」
深呼吸をしながら気持ちを落ち着けて行く。父、剣崎 一真が言っていた。危険な場に何度も出向いていた父だからこそ言っていた言葉がある。
『初、どんな時でも落ち着くんだ。そうすればどんな時でも良い事が起こるから』
『迷子になっても?』
『そうだぞ』
『お父さんがお母さんのプリンを間違えて食べちゃっても?』
『……初、お願いだからお父さんを虐めないでくれる?』
「そうだよ、パニックは全てを崩壊させる……。高々周囲が銃撃の雨霰になってるだけだ……」
周囲に響いていく弾丸によって吹き飛ばされていくものが落ちていく音、小規模の爆発音が絶え間なく響いていく中で剣崎は落ち着き払っていた。深呼吸をするたびに意識がクリアになっていき、先程まであった焦りが消えていく、そして周囲をハッキリと認識するとその緊張感が逆に意識を研ぎ澄ませて行く。その時、一枚のカードの事が思い浮かんだ。
「よしっ行くぞっ!!」
そのカードをラウズしながら一気に駆け出していく、それを捉えたギャレンは素早く標的を変更して攻撃を仕掛けてくる。しかしそれを剣崎自身の身体能力強化で加速の度合いを変えながらなんとか銃撃の嵐を掛け抜けていく。それでも橘はそれらのリズムを直ぐに看破するとそれに合わせた物へと変えて行く、対応が早すぎると踏んだ剣崎は一気に攻める為に懐へと飛び込んで行く。
「甘いなッ!!」
『〈
素早くラウザーからカードを引きそのままラウズする。それはギャレンラウザーの弾丸の威力を強化する『〈
「なっ―――!?」
「よしっ掛かった!!!」
そのまま後ろへと吹き飛ばされていくギャレンを追いかけて行く剣崎、そして体勢を立て直している間に間合いに入る事に成功して剣を振るっていく。それを防御する為にラウザーで剣を受け止めながら、一発殴り返すが、全くダメージが与えられない。その直後にブレイライザーによる斬撃が襲い掛かって来る。
「(しまった……この効果、あれかっ……!!!)」
剣崎は飛び出る前にカードをラウズしていた、最初こそ1枚のつもりだったがもう1枚をラウズする事で自分の考えている作戦の成功率を上げたのである。『〈
「ぐっ……!!」
「もう攻撃なんてさせるかっ!!!」
続けて剣崎はカードをその手に持った、此処まで来たのならばもう一気に勝負を掛けるべきだと判断した。そしてそのまま、立て続けにカードをラウズしていく。
『〈
「はぁっ!!!」
「ぐっしまったっ!!!」
ラウズされたカードによって能力が発動する、ブレイラウザーから無数の蔓が触手のように伸びていきギャレンへと絡まっていき腕などを背中へと固定しながらそのまま引きずりこんでいく。その先には空いている腕を構えるブレイド、そしてその射程範囲に収まると一気に腕を振るってそこへ痛烈なチョップを叩きこむ。
「ぐああっ!!」
「今っ!!」
痛烈な一撃を受けた事で倒れこんだ隙を見て、腰に付けていたハンドカフスを手首へと掛ける。その瞬間に条件達成というアナウンスが流れる。試験は終了、という事になる。するとギャレンは変身を解除しながら思わず座りこんでしまったブレイドへと手を差し伸べる。
「見事だったブレイド」
「……どうも」
その手を取りながら変身を解除する剣崎だが、その表情は余り晴れやかな物ではなかった。懐疑的、そして疑問を浮上させた表情を作って橘を半ば睨み付けるように見る。
「橘さん、何故貴方が俺と同じバックルを……それにあれは……」
「色々あるんだよ、世の中はな」
「そんな言葉で納得出来る訳無いでしょう!!?」
剣崎にとって何よりも聞きたい事、だが橘は全く話す気が無いのか適当にはぐらかそうとしている。歯軋りをしながら睨み付けていると橘は懐から何かを取り出した。それは写真のようだが、それを剣崎へと投げる。それを慌てながら受け取って見てみるとそこには何人もがカメラに向かって笑いかけながら映っているのが見える。だがその中に剣崎が見覚えがある人物が映っていた。
「えっこれって、父さん……それに橘さんも!?」
そこには自分の父の姿と橘が映りこんでいた。他にも何人もの人達が映っている、一体この写真はなんなのか、顔を上げて橘を見る。静かに口角を持ち上げながら微笑を作ってから彼は言う。
「いつの日か、話せる日が来るのを楽しみに待っているよブレイド。君の父親、剣崎 一真の事や君のお母さんの事もね……それじゃあ」
そう言うと橘はそのまま去っていく。剣崎は声を掛けて止める事も出来ずに思わず呆然としたまま、去っていく橘の背中を見送った。
「(まだ話す訳にはいかない……。彼が背負っている運命を……今の彼に言う訳にはいかない……)剣崎……あの子は本当にお前によく似ている、きっと良いヒーローになれるさ」
ラウズカード紹介
ハートのカテゴリー8:『
劇中未使用。
敵の妨害系のカテゴリー8。敵の攻撃を反射する事が出来る。
劇中では『〈