「剣崎ちゃん、如何だった試験?」
「……」
「剣崎?おい大丈夫か」
試験終了後、教室へと集まった一同。中には実技で合格出来ずに意気消沈しているものがいる中で剣崎は口を閉ざしたまま、ぼぅっとし続けている。そんな彼を心配してか梅雨ちゃんと常闇が声を掛ける、それでも反応しないので軽く叩いてみると反応が返ってきた。
「如何した、意識が定まっていないようだが。まさか落ちたのか!?」
「い、いや合格したよ。相手にハンドカフスを掛けてね」
「そうなら良かったじゃない、でも如何して浮かない顔をしてるの?納得が行かない感じだったの?」
「納得が行かないというか……理解出来ないというか……」
今回戦った相手である橘、理解が追いつかないしすることも出来ないことばかりだった。彼があそこまで強い事も知らなかったし、超一級のプロヒーローと比較しても遜色ない実力と技術を有している。研究所所長ではなく普通にヒーロー活動を行った方が良いのではないか思うほど。しかしそれ以上に不可解なのは橘が自分と同じバックルを所持していた事だ、自分と同じ仮面ライダーへとなった事そして……自分の父である剣崎 一真と関係を持っている事である。
「そっちは如何だった?」
「ああ。エクトプラズマ先生相手だったが、蛙吹のファインプレーのお陰でなんとか合格できた」
「私なんて特に何もしてないわよ。常闇ちゃんと
確りと試験が突破出来ているようで安心するような息を漏らすが、胸元にしまい込んでいる写真が妙に重く感じられて致し方ない。自分が知らなかった父の姿を橘は知っていた、それどころか母のことも知っているかもしれない。出来る事ならば知りたい、自分が愛した好きだった両親の事を……。
―――いつの日か、話せる日が来るのを楽しみに待っているよブレイド。君の父親、剣崎 一真の事や君のお母さんの事もね……それじゃあ。
今の自分では話すに値しないという事なのだろうか、そもそも橘の目的は一体なんなのだろうか……。何もかもが理解出来ない、あの時受け取った謎の装備の事もある。何か力は感じるがその実体が全く分からない。
「はぁっ……スッキリ、しねぇな……」
そんな風に積もり積もって行く不快な気持ち、何も晴れないままに相澤がやってきてホームルームを開始して行く。結果として剣崎はぼぅっとしていたので聞いていなかったが、そもそも強化合宿的な側面がある林間学校は全員で行く事になった。故に林間学校で補修が行われるとの事、全員で無事行く事が決まった林間学校に皆テンションがあがって行く。そしてそんな事を記念して、明日は皆で買い物に行く事になったのであった。
「てな感じでやってきました世!!県内最多店舗数を誇るナウでヤングでチョベリバな最先!!木椰区ショッピングモール!!!」
「芦戸、言動が全然最先端じゃないぞ」
という訳で日曜日、クラス皆というわけでは無いがほぼ全員揃ってのショッピングモールへ遊びにやってきていた。目的は林間学校への向けての準備、そしてテストを乗り越えての簡単なお祝いと言った所だろうか。
「目的ばらけてっし、時間決めて自由行動すっか!!」
『賛成!!』
それぞれ欲しい物も違ったりもするのでまずは準備の為の自由行動、後にお祝いをする事にする。剣崎は適当なコーヒーショップで時間でも潰そうと思っていたのだが、梅雨ちゃんが買い物に付き合って欲しいと申し出てきたのでそれを受ける事にした。
「剣崎ちゃんこれなんて良いと思うの、如何かしら?」
「う~ん、それならこっちの黄色なんて悪くないと思うけど……いや緑もありだね」
「確かにありね、ケロやっぱりセンスあるわね」
「そんな事ないよ」
洋服を共に見ている二人、偶に梅雨ちゃんがこれはどうかと言ってくるのに剣崎は良いレスポンスで返していく。周囲からすれば仲の良いカップルにしか見えない。そんな二人は旅行用鞄を見る為に旅行用品店へと入って行く、スーツケースにするかキャリーバックにするべきか迷っている。
「こっちの方が梅雨ちゃん向きじゃない?可愛いし軽いから」
「あらっ本当、でもこっちの方が安いし……ケロォ迷うわね」
「俺も如何するかな……」
「あっごめんなさい剣崎ちゃん。私ちょっと、化粧室に行って来るわね」
「うん、いってらっしゃい」
そう言って離れていく梅雨ちゃんを見送った後、剣崎は目星を付けながら待っている間にジュースでも買って待っていてあげようと気を利かせようとしたときの事だった……彼の背後にエキセントリックな服を纏った青年が現れる。そして彼は……口角を持ち上げながら……突如叫びを上げた。
「フォォォォオオオオウ!!!!!」
それと同時に凄まじい衝撃波がショッピングモール中を駆け巡って行く、それを中心にしながら凄まじい爆風と衝撃が駆け巡って行きそこいら中の壁や天井に皹が入っていく。
「なっなんだっ!!?」
吹き飛ばされながらも剣崎は後ろを振り返るとそこには―――以前、ステインと戦っている最中に乱入した謎の怪物の姿はそこに合った。周囲の人達は逃げ惑っている中で剣崎は職員通路の陰に隠れながらバックルを取り出して装着する。
「変身!!!」
『TURN UP』
ブレイドへと変身しそのまま跳躍しながらその怪物へと斬りかかる、それはブレイラウザーを受け止めると真っ直ぐ此方を睨み付けながら唸り声を上げるようにしながら襲いかかってくる。同時に剣崎は奇妙な胸騒ぎを感じながら、それに立ち向かって行く。
今回出てきた怪物の正体分かるかな?
まあ丸分かりだろうな。