救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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カプリコーン、アブゾーブ

「ッ…!!待て、死柄木……!!!"オール・フォー・ワン"は何が目的なんだっ……!!!」

「えっ……!?死柄木って……っ!?」

 

出久は人知れず、危機に瀕していた。突如として現れ自分に近づいてきた一人の青年。彼はまるで友人のように肩を抱くように首に手を回して来た、そしてこう告げる―――また会ったなと。それはUSJにて自分達へと襲いかかってきたヴィラン連合の人間である死柄木 弔であった。死柄木は出久に幾つかの質問をしながら会話を進めて行く中で、オールマイトこそ全ての元凶だと語る。そして―――命の危機を感じたとき、そこに麗日が現れ、死柄木はそのまま去ろうとした。が、出久は問う、オールマイトに深手を負わせた大物ヴィランであるオール・フォー・ワンは何を考えているのかと。

 

「……知らねぇな、それより気を付けとけ。次会う時は殺すと決めたからな、後もう一つ良い事教えてやる」

「良い事……!?」

「さっさとこっから出て行くことだ、あの仮面野郎を狙う不死身の化けもんが暴れ始めたからな」

「仮面って……まさかっ!!?」

 

その直後であった、衝撃波が辺りにも届いてくる。咄嗟に麗日を庇いながらそれに耐える、落ちてくるガラスなどには"ワン・フォー・オール"で身体を強化して防御を行うが、出久は先程の言葉の真偽を確かめようと顔を上げて死柄木を問い詰めようとするが既にそこに姿は無かった。

 

「デ、デク君今のって……!?」

「……まさか、仮面ライダーが戦ってるって事なのか……!!?」

 

 

「うぉぉおおおお!!」

「―――オオオッ!」

 

剣崎はブレイドへとなり突如として暴れ始めた謎の怪物との戦闘を開始していた、周囲の人達も避難を開始しているので当面の目標はこの怪物の狙いを自分に集中させる事で他ヘの被害を抑える事。相手の腕や足などに狙ってブレイラウザーを振り下ろしていき、ダメージの蓄積を狙っていく。

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!気に入らない、気に入らない気に入らない!!!」

「ッ!!?」

 

目の前の怪物は連続的にブレイドの攻撃を受け続けていくと、次第に気分を害した子供のように地団駄を踏みながら声を荒げた。それは初めて出す理性的且つ人間的な言葉、寧ろそんな声が出せたのかと剣崎は驚いてしまう。

 

「その姿を見ると本当に苛々するッ!!あの時、邪魔さえ入らなければ、ブレイドォ……だが今度お前を可愛がる……フォォォオオオオ!!!!」

 

後退りするかのように足に力を溜めるとそれを一気に解き放ち、大跳躍して飛びかかって来る。空中で向きを変えるかのようにしながら変幻自在に跳躍を繰り返していく最中、突如として飛び去って行く怪物。それを剣崎は追い掛けていく。

 

「野郎何処に行きやがった……!!というか何だあいつ、俺の事を知ってるのか!?」

 

あの怪物の言い方が妙に引っかかる。自分の姿の事やそれ以前にこの姿がブレイドという名前である事を知っている。ブレイドは校長に名付けて貰った名前、しかしこの場合は橘が言っていたブレイドの事を指すのだろうか。何もかもが分からない中で捜索を続けていく剣崎だが、その途中で真上からの威圧感を感じて前転すると、先程まで自分が居た位置に怪物が降り立っていた。

 

「ハッハハハ……さあブレイド、攻撃してみろ……出来るものならなっ!!」

「ッ―――!!」

「仮面ライダー……!!」

 

剣を構えたが動きが停止してしまう、怪物の腕の中には人質がいた。しかもそれは自分が見知っている人物であった……自分が怪物と遭遇する前に別れていた梅雨ちゃんが捕らえられていたのである。人質を取られた事で思わず剣崎の動きは止まってしまう、これでは下手な手出しが出来ない上に何かしようとしたら怪物が梅雨ちゃんに手を出すかもしれない……。

 

「無事に解放して欲しかったら、変身を解除してそのバックルを置くんだなっ!!」

「っ……!!!」

 

何か要求するとは思っていたが、その要求に思わず剣崎は身体を強張らせる。こいつは仮面ライダーが変身する事、そしてその中核をバックルが成していること完璧に把握している。一体この怪物の正体は何なんだと思いつつも剣崎がバックルへと手を伸ばしていると―――梅雨ちゃんがアイコンタクトを送っている事に気付いた。真っ直ぐと送ってくる瞳の中には自分の事は良い、そして必ずこいつを倒してという意思が込められている。

 

「(こんな状況に陥っているのに、強いな梅雨ちゃんは……)」

 

彼女の為ならば自分の正体を晒しても、自分が危機に陥っても構わないと思っていたが梅雨ちゃんの意思を見て一気に気持ちが固まっていく。やっぱり彼女は自分の何倍も強い、そしてそんな彼女の意思を受け取ったからには自分もそれに報いるだけの事をしなければならないと、と強く思いながら剣を構え直す。

 

「おい何をしているっ!!?」

「決まってる―――彼女を助けるのさっ!!」

TIME(タイム)

 

素早くラウズするカード、それと同時に怪物は持っていたブーメラン状の得物を梅雨ちゃんへと振り下ろそうとするが……時間の流れが異なった中へと飛び込んだブレイドは周囲の動きよりも遥かに速い速度で怪物へと接近し、梅雨ちゃんを抱きかかえるとそのまま後ろへと飛び去って距離を取った。途端に時間の流れが通常へと戻り、怪物は人質が奪われたことに驚愕するのであった。

 

「大丈夫かい?」

「ええ有難う仮面ライダー……あの時みたいに」

「気にしないでくれ、さあ……これで思う存分戦える」

「クソォ……!!何故だぁッ!!!」

 

怒り心頭になる怪物だが、剣崎はそんな事お構い無しに突撃して行き次々とブレイライザーによる斬撃を繰り出して怪物の身体を抉っていく。折り混ぜていく蹴りなどで相手は大きく体勢を崩していき、頭の角から青い炎を放つも剣崎の一閃によって掻き消されてしまう。

 

「俺はお前を絶対に許さない……!!彼女を危険に晒した事を、絶対に許さない!!!」

 

身を焦がすかのような怒りが沸きあがってくる、剣崎にとって彼女を危険に晒した事は許せない事だった。卑劣な事に巻き込んだ事や彼女を傷つけようとしたこと、全てが許せない。その怒りによってか身体にどんどん力が漲って来ることを感じつつもそれに身体を任せるようにしながらブレイラウザーを振るっていく。それらを立て続けに受け続けていく怪物は徐々に動きが鈍り初めて行く。そして遂に、渾身の力を込めた一撃を受けてその場に倒れ込んだ。

 

「がぁぁっ……!!!」

「今だッ!!」

KICK(キック)〉 〈THUNDER(サンダー)〉 〈MACH(マッハ)

 

倒れ伏した隙に一気に三枚のカードをラウズしていく、それらがブレイドの周囲を回りながら身体に溶け込むかのように融合して力を与えていく。身体中からエネルギーが巻き起こりながら激しいスパークを放ちながらブレイドを包みこんでいく。

 

LIGHTNING SONIC(ライトニングソニック)

「うおおおおおぉぉぉぉっっ!!!!!」

 

エネルギーを纏った剣崎は瞬間的に凄まじい速度に達しながら怪物を吹き飛ばしながらその周りを回りながら、十分な勢いを付けていく。怪物はフラフラになりながらもブーメランを投擲するが超高速で走っている剣崎を捉える事も出来ずにブーメランはあらぬ方向へと飛んでいく。そして、剣崎は一気に怪物へと向かって行きながら―――

 

「ウェェエエエエエエエエエエエイッッッッッ!!!!!」

 

裂帛の叫びと共に必殺の一撃を放つ、ソニックの名の通りの速度で勢いが付けられた雷撃を纏った一撃は怪物の全身に衝撃を拡散させながら防御不能のダメージを深く与える。全身に走る雷撃の電流が激しく煌めく中、怪物はゆっくりと倒れこみながら爆発を起こしてその炎の中で僅かに動いている。その光景を見て剣崎は思わず目を疑った。あの一撃を受けてまだ動けるなんて……まるで不死身のようだ、と思っている時であった。ベルトのバックルの一部が開いたのである、そこにはスペードのマークのような物があった。

 

「あれは……?」

 

そう思っていると橘から貰った装置からカードの一枚が飛び出して手に収まった、それはスペードのQを示すカード。そこを見てみるともう一枚、Jと思われるカードも入っていた。

 

「こいつは……?」

 

何故このカードが橘から貰った物に入っているのか、何故飛び出してきたのか。何も分からなかったがこのカードがあの怪物と関わっているのではないかと考えた剣崎はそのカードを怪物へと投げつけてみた。何故そうしたのかは分からない、だがそうすべきだと心のどこかで思ったからである。カードは怪物の身体へと突き刺さる、その途端にその身体は混濁した緑色に発光しながらカードへと吸い込まれていく。そして、その全ての光を吸い尽くしたカードは剣崎の手へと自動的に戻ってきた。

 

「な、なんだこりゃ……何が起こったんだよ……?」

 

戻ってきたカードには『ABSORB(アブゾーブ)』と刻まれていた。一体何がどうなっているのか分からなくなって来た剣崎。謎の怪物、そしてそれを吸い込んだカード、ブレイド……。何もかも分からないまま、剣崎は兎も角その場から姿を消し、変身を解除して梅雨ちゃんと合流するのであった。


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