救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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思いがけない、暖かさ

「剣崎ちゃん、貴方―――仮面ライダーなの?」

「―――ッ!!?」

 

ショッピングモールでの出来事の翌日の夕方、林間学校の合宿先の変更が言い渡されたその帰りの事だった。梅雨ちゃんから話があると言われて話を聞く為に談話室を借りた時の事だった、不意に剣崎は全身を強張らせて硬直してしまった。彼女からの問いに身体が凍り付いていた、何処でバレたのか、何故バレたのか。そんな想いが脳裏を駆け巡って行きながらも、これから如何するかを思案する。

 

「私、思った事を何でも言っちゃうの。いきなりこんな事を言っちゃってごめんなさい、でも剣崎ちゃんにはどうしても聞いておきたいの。貴方は……私を三度も助けてくれた仮面ライダーなの?」

「……如何してそんな事を聞くのかな、俺が仮面ライダーねぇ……」

 

表面上では冷静を装いながら談話室に用意されていた緑茶を失敬しながら、お茶を淹れる剣崎を見つめながら梅雨ちゃんはそのまま続けた。

 

「最初は思い過ごし方とも思ったの、ただ単に剣崎ちゃんの力がどこか似てるから重ねてるだけとも思ったの。でも違う、ショッピングモールで私が怪物に捕まったときに、仮面ライダーと向き合った時に私はアイコンタクトを送ったの。それを仮面ライダーは疑う事無く、受け取ってくれた」

 

ショッピングモールでの戦闘中、確かに梅雨ちゃんは怪物に人質として捕らえられた事があった。その時に確かにアイコンタクトを送られた、しかしそれを剣崎は即座に汲み取ってしまった。同じ学校で勉強し訓練に励んでいるからか、自然に覚えてしまった相手の仕草で気持ちを理解する事。戦闘訓練などでも数回ペアになった時にもよく使っていたアイコンタクト……。

 

「それだけじゃないの、仮面ライダーは多分必殺技を放つ時に剣崎ちゃんと同じ叫び方をしてたの。それで思ったのよ」

「(……やっべっ)」

 

そう、アイコンタクトなどもあっただろうが決定的だったのは『LIGHTNING SONIC(ライトニングソニック)』を放った時につい普段通りに叫びを上げてしまった事だった。梅雨ちゃんを人質に取った事に対する怒りを抱えていた影響で叫んでしまった言葉が、トリガーとなって彼女の中で答えを出させてしまった。なんという間抜けなミスだ、かっこ悪すぎる、せめてバレるならもっと感動的なバレ方がよかった。

 

そう思い込みながら黙り込んでいる中でも、彼女は視線を外さずに此方を見つめ続けている。身体をずらして視線が外れないようにしながら向け続けてくる。次第に剣崎はどこか面持ちが悪くなって来たのか一際大きな溜息をはいた。

 

「別に、好きで黙ってた訳じゃないよ。仮面ライダーなのかって聞かれなかったから……というよりも話さない方が良いって助言を受けててね」

「それじゃあやっぱり……」

「ああっ……俺は、剣崎 初は―――違法自警者 仮面ライダーだよ」

「ッ―――」

 

そう言うとやっぱりと言いたげにしつつも言葉を失った彼女がそこにいた。無理もない、自分は世間を騒がせ続けている仮面ライダー。正体は一体誰なのかという話も大きく取り上げられ、テレビでも『仮面ライダーを徹底解剖』という番組名で必死に仮面ライダーが誰なのかを特定しようとしているほどだ。そんな奴の正体が高校生だというのは十分すぎる驚きだろう。

 

「本当に、仮面ライダーなのね剣崎ちゃん……?」

「ああ、なんならこの場でなって見せようか?」

「……出来ればお願いしても良いかしら」

「勿論」

 

そう言いながら剣崎は目の前でブレイドへと変身して見せた、目の前で剣崎が鎧を纏った剣士である仮面ライダーへと変貌する姿は驚きだった。眼を見開いてその現実を直視しながら、思わず身体に触れて確認をしてしまうほどだった。満足したのか離れると剣崎は変身を解除して、緑茶を湯のみに注ぐ。

 

「……自分から言っておいて何だけど、私貴方が仮面ライダーだって事が信じられないわ。驚きすぎて腰が抜けちゃいそう」

「抜けちゃっても大丈夫、俺が家まで送るから。それに回復させてあげる事も出来るからね」

「相澤先生とオールマイトにやったあの光ね?」

「そういう事」

 

お互いにお茶を啜る、そして同時に訪れる静寂という名の重苦しい空気。互いに何を喋って良いのか分からずにただただ静寂が耳を劈いてくる奇妙な感覚を味わう。これほどまでに静寂が息苦しいと感じる事も少ないだろう。そんな中で梅雨ちゃんが口を開く。

 

「剣崎ちゃん……色々言いたい事あるんだけど、これだけ言わせて欲しいの」

「なんだい?」

「―――助けてくれて本当に有難うね」

 

そこにあったのは綺麗で可愛らしい笑顔を浮かべている彼女の姿だった、華が咲き乱れているかのような笑顔に思わず剣崎は頬を赤らめながら顔を背けてしまう。感謝ならば幾らでも受けてきた、多くの人を救ってきた剣崎はその度に様々な感情を受ける。その中でも多いのが感謝だ、だが―――彼女の物は違う気がする。

 

「やめてくれよ梅雨ちゃん、俺は当たり前の事をしただけさ」

「いいえ違うわよ。貴方はとても立派よ、その当たり前の事の為に自分の全力を傾け続ける事を繰り返すなんて並大抵の事じゃないわ。だからそれに私は貴方に命を救われてるの、だからそのお礼は確りしたいの」

「―――っ……ならもうお礼は十分だよ、梅雨ちゃんの笑顔と言葉が何よりの報酬だよ」

「いいえもっと受け取って欲しいのよ、私の感謝を……」

 

梅雨ちゃんは剣崎の隣に座りなおしながら、身体を預けるように頭を彼の肩においた。それに思わずドキッとする剣崎、梅雨ちゃんは彼の体温を感じて何処か幸福感を感じていた。

 

「……分かった、どんな風に受け取ったら良いのかな」

「そうね……それじゃあ―――」

「えっ梅雨ちゃ―――」

 

気付いた時には彼女の顔が視界いっぱいに広がっていた、そして唇には柔らかな感触と暖かさで満ちていた。首に回せた腕はガッチリと固められているかのようにホールドしている。心地よさが広がっていく、幸福感が心を支配して行く。甘い香りのような物が脳を溶かしていく、柔らかい感触が強く触れて来ている。理解が追いつかない、いや理解は出来るが理由が分からない。そんな風に混乱しているはずなのに、自然と彼女に手を回しながら目蓋が閉じて行く。そして暫くした時に、互いに少し離れる。それでも呼吸が混ざり合いそうなほどに近く、彼女は紅葉した表情のまま笑い掛けてくる。

 

「―――好きよ剣崎ちゃん。私と、ずっと一緒に居て欲しいの。何時までも」

「―――ッ」

 

それは、両親を失った剣崎が久しく受ける物。他人から自分へと向けられる愛情であった。

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