「仮面ライダー」は謎めいている。多くの謎を秘めたまま、自らの正体を隠し続けながら資格も無いまま自発的に違法だと分かっている筈の個性を使用してでの「ヴィラン」討伐や救助を只管に繰り返している。そんな「仮面ライダー」の捕縛を目的として幾人ものの「ヒーロー」がチームを組んで捕縛に乗り出している。法律から考えると妥当な事なのだが、世間的に見ると「仮面ライダー」を捕まえようとする事に対して強すぎる反発が生まれているのも事実。それでも社会の規律を守る為に「ヒーロー」は「仮面ライダー」の捕縛を目指す―――が、過去30回以上も捕縛チームが駆けつけるが全て失敗に終っているのも事実。
『動くな、違法自警者「仮面ライダー」!!貴様は過去幾度も違反だと理解していながら個性を使用しての「ヴィラン」撃破を行っている。それは逮捕に値する!!』
『動かないで頂きたい。私達も貴方を傷つけたくありません、出来る事ならば我々と一緒に来て頂きたい』
『逃げようとは思うなよ、周囲は完全に包囲している』
救助活動中のライダーを捕縛する為にチームが幾度もの無く姿を現し捕縛を試みる。しかし「ヒーロー」の言葉には一切耳を貸さずに救助活動を続ける。次に動けば攻撃すると警告を発したとしても彼は完全に無視して自分がしたい事を続ける。しかし救助中の彼を攻撃すれば、市民に攻撃が当たるという事も考えられるため、致し方なくそのまま包囲を続けるしかなかった。そして全ての救助が終ったのを見計らって、彼の周囲に陣取って何処にも行かないようにする。
『お願いです。我々と来てください』
『動くな、動くなと言っている!!!』
度重なる警告、だが「仮面ライダー」はそれを意図も容易く通り抜けると何時の間にかバイクに乗り込んでそのまま去って行っていく。どれだけ厳重な包囲状況を作り出そうが必ずすり抜けて、姿を眩ましてしまうライダー。そんな彼に対する捕縛は効果が薄いと判断されたのか、最近では今までの違反行為を帳消しにする代わりに正式に「ヒーロー」として活動して欲しいというスカウト案に切り替えようという物が出始めている。
「あ~あ……暇だなぁ……」
雄英の入試が終わってから数日、剣崎は受験のストレスから開放されたからか伸び伸びとしてながら自宅のリビングで根っ転がりながらヒーロー雑誌を読み漁っていた。一応滑り止めとして別の高校のヒーロー科も受験し、そちらは合格しているので特に心配事は無かった。雄英に入れなかったらそれは自分の力が足りていなかったという良い証拠にもなる、ならば再び鍛え直すだけ。ただそれだけ、と思ってのは良いのだがやる事が無いと本当に暇でしょうがない。家の掃除に洗濯、ゴミ出しはもう終わっているし買いだしも昨日終わらせてしまっている。此処まで暇なのも久しぶりな気がする。
「事件も起きてないみたいだし……平和なのは良い事だけどなぁ」
剣崎は事件が起きた場合、それを直感的に感じ取る事が出来る。その範囲は良く分かっていないが、取り敢えずそれがないという事は現状では平和な日常が送られているという事だ。その反面、世界の何処かで事件は起きている、だがそれに対処する事なんて自分には出来ない。物理的に不可能、だからこそ剣崎は自分の手が届く範囲で救いの手を伸ばすと決めている。際限が無い活動の果てに待っているのは破滅しかないと分かっているからだ。その代わり、手が届くならば必ず向かって行動を起こすと決めている。
「……寝ようかな」
本当にやる事が無いので久しぶりに昼寝でもして見ようかと思って、近くにあったクッションを頭に敷いてみるが全く眠くない。まあたっぷり7時間睡眠をすれば眠る気も無いという物だ。本格的に如何したものかと悩み始めた剣崎だったが自宅内に響いたインターホンに身体が反応するように飛び起きる。もしかしたら注文していた世界の料理全集と新しい調理器具が届いたのかもしれない。急いで判子を持って玄関へと向かっていくと、そこには如何やら郵便屋さんであった。少々ガッカリしながらも、礼を言いながらそれを受け取って室内へと戻って行く。
「んでこれは……ッ!!」
やって来た封筒を確認して見るとそれには雄英からの物だった、緊張した面持ちのまま封筒を開いて中身を引っ張り出して見ると……まず出てきたのは円状の機械が出てきた。一体何なのかと見ていると……。
『私が投影されたァ!!!』
「ギャアッ!!?」
思わずそれを落としてしまったが、機械からは確かに声と何かが映し出された。落ち着いてそれを見てみるとそれは今生きる人々全員が知っているほどの超有名人であった。雄々しくも逞しい筋骨隆々な大きな身体、跳ね上がった二つの前髪、そして映像であるはずなのにこちらを威圧するかのような圧倒的な存在感。映し出されたのは全ての「ヒーロー」の頂点であるNo.1ヒーローにして平和の象徴と謳われる誰もが認める「ヒーロー」―――「オールマイト」がそこに映りだされていた。
「オール、マイト……!!?」
『HAHAHA!!如何やら驚いてくれたようだね剣崎少年、私には君が思わず投影装置を落としてしまう姿が見えているよ!因みにこれは中継とかではなくて録画された映像だぞ!!そして私は今年から雄英にて教鞭を取る事になったのだ!!その告知も含めて私が合格発表を行っているのだよ!!』
「……すげぇっ流石オールマイト……!!!」
まるで自分の行動、いや感情すらお見通しのように笑っているオールマイトに剣崎はただただ感動を覚えていた。更に笑っていたオールマイトだが、影から他の教師から時間の事を突っ込まれて早速本題へと入った。
『さて剣崎 初、君の結果だが……筆記試験は問答無用で合格!!そして実技、君が獲得した敵ポイントは68点、そして救助ポイントは56点!!素晴らしい、君は入試1位で雄英へ合格だ!!君はどんな状況でどんな相手だろうと誰かを助ける為に必死になる素晴らしい人だ!』
「おっしゃぁぁああ!!!!」
先程まで気にしていない、と思っていたのにあのオールマイトにそう言われると嬉しくなってしょうがない。心の奥底から嬉しさが溢れ出して身体が暴れだしそうだ。
『君を、雄英は歓迎するよ!!では剣崎少年、雄英で会おう!!!!』
そう言い終わったオールマイトは消えていったが、剣崎は嬉しすぎて身体の全細胞が爆発しそうだった。あの人に、希望をくれた人にまた会える、希望で居続けてくれている憧れの人が自分が通う学校にいる……こんな嬉しい事は無い……。
「ぁぁぁっ……オールマイト、俺は、貴方に誓った通り絶対に……救いのヒーローになります……!!!」