ハッキリ言って食事は途轍もなく美味しい、昼食を食べていないのと土魔獣が襲い続けてくる状況下による緊張感、疲労によって体力が大きく消耗している彼らにとって普通の食事だったとしても今ならば高級レストラン並だと断言出来るだろう。それなのに魚も肉も野菜も最高の物で、空腹というスパイスが相まってとんでもない相乗効果を生み出していた。全員が夢中になって食事に貪り付くかのように食いついていた。
「うっめぇっ……うっめぇっ……!!!」
「ほいお代わり」
「すまない剣崎さんッ!!!」
とその中でもかなりがっついていたのが鉄であった。この中でもトップの体格である彼はその身体を維持する為には相応の食事がいる、加えて魔獣の森突破の際には最も身体を張って防御を固めていたので疲労もかなりの物。一番食事にがっついていた。
「にしてもすげぇなどんどん入っていくぞ鉄、いっそ面白いぐらいに」
「これだったらもう丼物にした方が良いかもしれないな……あっそうだ、すいませんちょっとキッチン借りていいですか?」
「いいけど如何するの?」
「ちょっと一手間」
そう言いと剣崎は近くに掛かっていた予備のエプロンを借りながら食材を失敬しながら、キッチンで調理を開始する。そして数分後……巨大な丼に山盛りにした米とその上に数種類のカツを乗せた特製カツ丼を鉄の前へと持って来ながら最後の仕上げに特製のソースを掛けていく。揚げたてなのかソースを掛けていくとカツが音を立てる光景に思わず視線が集まっていく。
「よし完成!!剣崎特製ミックスカツ丼!!」
「お、オオオオッッッ……!!!」
「すっげぇなんだそれ美味そう!!?」
「うわぁあ凄いボリューミィ!!!」
と思わず周囲からの視線を集める超大盛りカツ丼、それらに涎を垂らしそうになりながらも必死で自制しながらも手を伸ばしてしまっている鉄へと箸を差し出す剣崎。
「ヒーロー科へようこそって奴だ」
「剣崎さんっ……有難う、頂きます!!!!」
とその箸を受け取って丼を持ち上げながらその中身へと一気に喰らいついていく。迫力満点な光景に皆思わず声を上げながらも、涙を流しながらそれらを食べていく鉄に思わず笑みと喉が鳴る。するとキッチンから残りのカツを持ってきた剣崎がそれぞれのテーブルへ遠いていく。
「勿論皆の分もあるぜ」
「おっしゃあああああ剣崎お前最高!!!」
「俺、お前が同じクラスで本気で良かったと今思ってるぅ!!!」
「では剣崎君!!」
『いただきまぁ~す!!!』
「はいどーぞ!!」
更にヒートアップしていく食事の風景、剣崎が作ったのは普通のミックスカツではない。牛、豚、鳥、猪、鹿の5種類からなるカツである。親戚からそれらの肉を貰った事がある剣崎は調理法も熟知していた為に美味しい調理を施す事が出来たのである。
「うぅぅまあああいぞぉぉっっ!!!肉と分厚い油の層が噛む度に解けて行きやがる!!ああ待ってもうちょっと残っててくれよ!?」
「揚げたてだから外は刺さりそうなぐらいにサクサクでジューシー……ぁぁっ中々柔らかくて甘い油が……」
「歯応え抜群な鳥のカツ……力出そう!!」
「猪のカツなんて初めてだけど、凄い弾力と歯応えでなんてボリューム……!!!」
「鹿肉、ちょっと癖があるけど噛む度に肉汁があふれ出て来るけど後味がサッパリ!!」
と剣崎の作ったミックスカツは大好評であった。作った本人としても食べてくれている皆が笑顔いっぱいで大満足であった。
「家庭的、料理は美味い……超高得点……ッ!!!」
「あ~あ……彼、本気で大丈夫かな……」
「ッ!?な、なんか鳥肌が……」
「ハァァァッッッ……気持ち良いッッッ~……」
「いやぁ染み渡るなぁ……」
「本当……」
食事の後の入浴時間、疲れ切った身体を包みこむかのような温かさに思わず溺れそうになりながらも温泉に使って身体を癒すのであった。
「あれ、そう言えば京水ちゃんは?」
「なんか入浴時間ずらすようですよ、なんでもマナーだからと」
「ふ~ん……俺は気にしないけどやっぱり其処とか色々気を使ってるんだな」
京水がいない事に少々驚いたが、京水からしたら共に風呂にはいるのはかなり勇気がいる事に加えて剣崎がいるから遠慮するとの事。なんだかんだでその辺りはかなり確りしている京水だが、一番なのは剣崎と共に風呂に入って自制できるか分からないからだろう。そんな事を言っている中、峰田が男湯と女湯を隔てている壁を見上げながら何か悟ったのように言い始める。
「まァまァまァ……でもさ、飯とかはねぶっちゃけどうでもいいんすよ。求めれてんのってのはそこじゃないんスよ。そのへん分かってるんですよオイラぁ……」
「何言ってんだあいつ」
「峰田君何言ってるの……?」
とそんな時であった、壁の向こう側から女子の黄色い声が漏れてきた。
「気持ち良いよねぇ温泉とか超サイコー!!」
「本当に気持ち良いわぁ……身体が、癒されていくぅ……」
「気持ち良いですわねぇ……はぁっ疲れが取れていくようです……」
「あぁぁっ極楽極楽……」
「マジで最高……ああっいいっ……」
と聞こえてくる女性人の黄色い声、それらに思わず耳を立ててしまう一部男子と壁に耳を当てて懸命に聞いている峰田。それを見ているともう何をしようと思っているのか、もう明白である。それを止める為に立ち上がるのは……我らがクラス委員長の飯田であった。
「峰田君止めたまえ!!君のしている事は己も女性陣も貶めるはずべき行為だ!!」
ここで峰田の事もやんわりとフォローする辺り、彼の優しさに満ちているのだが……峰田はそれをあっさりと跳ね除けながら、色欲という名の覚悟に身を染めてそのまま壁へと自らの頭のボールをくっ付けて、それを掴んで次々と壁を登っていくのであった。
「壁とは越える為にある!!!"Plus Ultra"!!!」
「速ッ!!!?というかそんな事の為に校訓を使って汚すのも止めたまえ!!」
そのまま壁を駆け上がって行く峰田、その手が間も無く壁の上へと届こうとした瞬間―――
―――止まれ、止まらなければ……お前の運命は其処で終わるぞ―――
峰田は全身が凍りつくかのような感覚を覚えた。先程まで高まっていた色欲が一気に冷めて行き同時に死への恐怖を感じ始めた。何故そんな物を感じているのか何も分からないが、峰田は通常よりも時間の流れが遅く感じられた。そのまま体感時間的に5分以上も凍り付いていると壁の上にマンダレイやピクシーボブと一緒にいた男の子、マンダレイの従甥の洸太が顔を出した。
「ヒーロー以前に人の何から学びなおせ」
と言って完全に凍り付いている峰田を突き落とすのであった、いや峰田は自分が落とされている事さえ理解出来ていない。そのまま落下していくが飯田が見事キャッチする。その直後に洸太は女性陣からお礼を言われたので思わず振り向いてしまい……其処に広がっている物を見てしまい、顔を赤くしながら気を失ってそのまま男湯へと落下してきてしまったが、そこは出久が見事に受け止めて事なきを得たのであった。
「(オイラなんで動けなくなってんだ……?如何して……如何して……?)」
「おい峰田君大丈夫か?湯当たりか!?すまん緑谷君、峰田君も一緒に連れて行ってくれないか!?」
「うんわかったっ!!」
と洸太と共に運ばれていく峰田、だが彼が感じた物は一体なんだったのだろうか。一人に注ぎ込まれた殺意にも似た凍りつくようななにか、それは―――とある男が発した警告なのであった。
「良い気持ちだ……やっぱり温泉は最高だな剣崎さん」
「―――そうだな。覗きする奴もいなくなったしな」
うん、そりゃ向けられるよねそんな感情。