救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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個性強化訓練、開始。

翌日の午前5時半、前日の疲れもたっぷりの睡眠などによって疲れも十分に取れた1組は早朝に全員集合していた。何処か眠そうな所もあるが、これから始まる合宿を楽しみにしていたからか全員士気も高い。しかし女子の皆は何処か眠そうにしている。梅雨ちゃんも例外ではなくかなり眠そうにしている。

 

「大丈夫梅雨ちゃん、眠れなかったの?」

「う、ううんちょっとね……皆と色々話してたら遅くなっちゃって……」

「あらあらでも美容に悪いわよ?はい梅雨ちゃん、眠気覚ましに最適なガムよ」

「泉ちゃん……悪いわね、頂くわ」

 

そう言ってガムを差し出す京水だが何か察しているような表情をしている、如何やら京水は女子連中に混ざって色んな話をしていたからか何で眠そうにしているのかも完全に把握している。まあ女子達が夜遅くまで話をすると言ったら……当然恋バナである。何故その中に京水が混ざれているのかと言われたら、京水の中身が乙女だからという事らしい。なんだったら京水は自分達と温泉に入っても文句はないとの事。それほどまでに京水の趣味やらは広く周知されている。

 

その中でも一番多く話を振られたのは梅雨ちゃんなのである、剣崎と一緒にいることが多い故にもしかして好きなんじゃないかいやもしかしたら……もう既に付き合っているのではないか!?と疑われた。梅雨ちゃんはポーカーフェイスを貫きながら何とか隠し通す事に成功したが……それでも追及は激しかったらしく、それに当てられて自分と剣崎のデート風景なんかを妄想してしまい中々寝付く事が出来なかったらしい。

 

「お早う諸君。いよいよ今から本格的に強化合宿を始めていく。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる"仮免"の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備、心して臨むように」

 

仮免、緊急時における"個性"行使の限定許可証とされているヒーロー活動認可資格の仮免。いつ何時ヴィランが襲いかかって来たとしても対応出来るようにする為、ヴィラン連合と言う明確で巨大な敵の集団が力を増していく中で自分達の強さもより高いクォリティが望まれてくる。その為の合宿、その為の個性強化。そんな中で相澤は個性把握テストの時に使ったボール型の測定器具を爆豪へと投げ渡した。入学から3ヶ月余り、どれ程成長したのか見せてみろと言う物だった。前回の爆豪の記録は705.2m、これがどれほどまでに変化しているのか……爆豪も気合十分にしながら思いっきり振りかぶった。

 

「んじゃよっこらっ……くたばれ!!!!!

 

相変わらずな物騒な掛け声と共に爆破と共に吹き飛んでいく測定器具。爆風に乗ってどんどんと加速して行き、遂には見えなくなって行く。そして相澤が持っていたタブレットに記録が映し出されて発表された―――709.6mだと。

 

「あ、あれ予想より……?」

「確かに君達は成長したことだろう、3ヶ月間様々な事を経験して成長しているのは確かだ。だがそれは主に精神面や技術面、後は体力面と言った所だろう。個性そのものは今通りで成長の幅は狭い。今日から君達の個性を伸ばす、死ぬほどキツいが……くれぐれも死なないように―――……」

 

其処までにきつい事がこれから先に待っている、という事に全員が思わず喉を鳴らした。死なないように気を付けなければいけない訓練がこれから待っている、それが酷く恐ろしい……。だがそれでもやる、ヒーローになる為の道が最初から苦難に満ちている事なんて分かっていた事だ。予想が確実となっただけに過ぎないのだ。

 

「それじゃあ早速始めるぞ」

 

と相澤が言葉を切った途端にその隣に4つの影が降り立ってきた、一糸乱れる動きで降り立った影に思わず全員が身構えた。現れたのは……。

 

煌めく眼でロックオン!!

猫の手、手助けやって来る!!

何処からともなくやってくる……!!!

キュートにキャットにスティンガー!!

ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!!

 

と先日マンダレイとピクシーボブが行ったポーズに二人を加えた本来のフルバージョン、京水憧れのヒーローでもある虎と何処かにぎやかで元気満点なラグドール。これがヒーローチーム『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ』の本来の状態とも言える。するとその中の一人、ラグドールが凄い勢いで剣崎へと近づいてきて凝視してきた。いきなりの事に呆気に取られてしまい、目を白黒させながら何事かと尋ねる。

 

「あ、あのなんでしょうか……?」

「貴方が剣崎 初?」

「あっはいそうですけど……」

「……キャハハハハッ!!何この子面白~い!!!」

 

と突然爆笑するかのように笑顔を浮かべながら剣崎の肩を叩きながら、頑張れとエールを送ってくる。するとラグドールは振り向きながらピクシーボブへといった。

 

「うんうんこの子実にいいじゃん!良いと思うよ!!身体能力強化だって凄い密度!!」

「でしょ!?私の目に狂いはなかったのよ!!」

「ホゥ……それは鍛えるのが楽しみだ」

 

とその言葉を受けてチーム内唯一の存在、筋骨隆々の他のメンバーと同じくスカートなどを着用している男……虎は目を輝かせながら剣崎のほうを期待するかのような瞳を向けた。剣崎は如何やらプッシーキャッツの面々にかなり気に入られてしまった様子、喜べば良いのか嘆けば良いのか不明なところである。

 

「緑谷、剣崎。お前達二人は我が担当する、我が徹底的に鍛え抜いてやる」

「は、はい宜しくお願いします!!」

「お願いします」

 

と早速個性強化の為にそれぞれの特訓に入った1組、出久と剣崎は個性が同じ増強型である為に同じ虎に指導される事になった。

 

「我の問いにはイエッサーで応えろ、分かったかっ!!!」

「「イ、イエッサー!!!」」

「よぉし、では始めるぞ……伸ばせ千切れ!!ヘボ個性を!!!!」

「「イエッサー!!!!」」

 

 

「でもなんか違和感~」

「如何したの?違和感なんて」

「あの剣崎君だっけ?個性は身体能力強化何だけど……なんか、凄い違和感があって―――」


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