「今だ、撃って来い剣崎ィ!!」
「イエッサー!!ウエェェエエイ!!!」
「まだまだぁ!!!もっと激しく、細かく鋭敏に身体を動かし続けろ!!!緑谷お前もだ!!もっとだ!!!」
「「イエッサァアアア!!!!」」
正に阿鼻叫喚な個性強化訓練は早朝から既に4時間以上も続けられている。私有地である彼方此方から各人の気合に満ちた声が響いていくが、徐々にそれらは落ち込んで行き悲痛な物へと変化していく。その中でもかなりきつい訓練を行っている虎に指導をされている剣崎と出久であった。基本的にそれぞれの個性にあった伸ばし方をする為に、それぞれ合ったやり方をする。その中でもこの二人は虎にミッチリと扱かれている、虎の我'S ブートキャンプはとんでもなくきつい上に、時折虎との簡易的な戦いまで仕込まれている。
「さあ二人同時に撃って来い!!」
「行くぞ出久!!」
「うん!!」
「「おおおおッッ!!!」」
剣崎は跳躍からの蹴り、出久は"フルカウル"からのスマッシュ、それらを全く同時にしかし互いに干渉し過ぎに避けにくいように攻撃を行ってくる。一瞬の間に其処までの意思疎通を行ったのかと虎は感心しつつも、腰を90度曲げたまま胸部をありえない角度に曲げてそれらを躱すとそのまま二人へと救い上げるかのような打撃を叩きこみ。それを咄嗟に防御しながらも、なんとか食い縛る二人に虎は更に目を輝かせた。
「良いぞ貴様ら、実に良い!!我も本気を出して貴様らを鍛えてやる!!!どうだ、嬉しいか!!?」
「「イエッサー!!!」」
「今この時をもって、我はお前らを認め本気で鍛え上げる!!貴様らは正しくヒーローの卵である!!それが芽が出るか否かは自らの手で掴み取れ!!」
「「イエッサー!!」」
「よぉぉおし……付いて来るが良いひよっ子共!!!」
「「サーイエッサー!!!!」」
まるで何処かの軍曹のような気迫を発揮しながら爛々と目を輝かせながら、虎の名の通り肉食獣の瞳で二人を連れて今度は崖の上、不安定な足場、険しい坂道などなど……とんでもない場所でのブートキャンプがスタートして行く。通常工程の物ですらとんでもなく辛く、倒れこむ事は必須であるのにも拘らず、それでも二人は必死に喰らい付いて良く。
「この程度でギブアップなんぞするかぁぁぁっっ!!!」
「僕だって、強くなるんだぁぁぁああ!!!!!」
と気迫と共に吐き出す言葉で自らを鼓舞しながら、虎の出すメニューをこなしていく。虎が2組の生徒を見に言っている間は自主的に組み手をして互いの実力向上を図り、虎が戻ってくれば虎に相手をしてもらってあしらわれれば更に努力する。そんな二人に虎も目を更に輝かせながら二人を扱いていく。2組の生徒からしたら、もう二人が行っているメニューは狂気染みた物にしか映っていない。
「剣崎貴様は鉄その他を纏めて担ぎ上げたと聞いた、どの程度まで持ち上げられる」
「正直限界を試した事なんてありませんが、あれ以上でもまだまだいける所存でありますサー!!!」
「ホウ……ならば貴様にはこれだ!!!」
と言って虎は剣崎の各部に以前の試験で教師陣が装着していたという重りを装着した、剣崎の四肢にはそれぞれ約20キロが掛けられている状態となっている。全身含めて80キロの負荷が常に掛かるようになっているというとんでもない状況になっている。
「貴様には更なる高みへ、精神を養う為にそのままでいる事を命じる。これを越えた時お前は更に進化する!!どうだ嬉しいか!!!」
「イエッサー……!!!」
「緑谷、貴様には5キロだ!!!」
「イッイエッサー!!!」
と更にレベルが跳ね上がった剣崎と出久の個性強化訓練、そんな地獄を二人はお互いにお前には負けないと言うライバル意識を持って耐えながら、必死に訓練に励むのであった。そして気付けば夕暮れ……一日の訓練が終了したときであった。虎が腕の時計を確認して二人の重りを外した時、二人は全身が飛んで行ってしまうのではないかという感覚を体験しながらもクタクタの身体を必死に整えながら虎へと向かい合った。
「本日の訓練は此処までとする、だが貴様らは以前ひよっ子に過ぎん!!明日はもっと厳しくしてやってやる!!どうだ嬉しいだろう!!!」
「「サーイエッサー!!!」」
「よぉし!!!!ラストは宿泊所前まで駆け足!!」
「「サーイエッサー!!」」
と虎に続くかのように走り出して行く二人、だが流石にクタクタでボロボロなのか走り方が酷くぎこちない。無類のタフネスを誇る剣崎でもふら付いており、出久はもっとフラフラだ。それでも二人は必死に走りながら虎の後に続いていく。虎はそんな二人を見ながらも軽い笑みを作りながら走り続ける。
「(二人とも良い目をしている、このまま大きく成長すれば何れ大きな華を咲かせる。大きく美しく力強い……そんな大輪の華を……)」
「さぁ昨日言ったね『世話焼くのは今日だけ』って!!だからこれから自分達で頑張れ!!」
「己で食う飯くらい己で作るのだ、カレー!!」
とピクシーボブとラグドールが言うが返ってくるのは疲れ切っている小さな声だけだった、唯一大きな声を出せているのは虎の訓練を受けた剣崎と出久だけだった。それでも既に全身はボロボロだが。そんな様子を見てラグドールは楽しいのか面白いのか笑っている。
「キャハハハハハッ全員全身ブッチブチ!!それでも一番元気なのが一番辛い指導を受けた二人ってのが受けるぅ~!!!でもだからって雑なネコマンマは作っちゃダメね!!!」
という言葉を受けた飯田が
「確かに、災害時などの避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環でありヒーローとしての責務……流石だ、無駄がない!!!世界一旨いカレーを作ろう皆!!!」
と真面目な一面を爆発させて元気を取り戻してカレーを作ろうと促して行く。それだけで元気を取り戻せるのは素直に感心し、尊敬する剣崎であった。
「や、やべぇ腕が上がらねぇ……」
「貸してみな、俺がやる」
「お、おい剣崎大丈夫なのか?」
「この位、よっと……まだいけるさ♪」
「悪い……助かるわ」
恐らく一番疲労がやばい剣崎、それでもまだまだ余裕があるのか辛い訓練を終えている皆のフォローにまわっている。酷く疲れている筈なのにそれを見せずに笑顔で居続けている。そんな姿勢はどんなに辛い状況でも希望と言う光を与え続けるヒーローその物で、周囲に元気を与えていた。尚、その姿勢はピクシーボブの好感度を更に爆上げする結果にも繋がっていたのだが……本人は全く知らないのであった。
「剣崎ちゃん大丈夫なの本当に?」
「ああ、大丈夫だよ。いやぁ……なんか俺と出久、虎さんに気に入られたみたいでさ……。途中から完全に特別な別メニューだったから……」
「剣崎ちゃん……ちょっとこっち来て」
「んっちょっと待って、上鳴野菜とか此処においとくから」
「ああわりぃな!!」
任せてそのまま梅雨ちゃんに連れられて少し離れた木々の間へと移動した剣崎、一体何をするのかと思っていたら彼女が優しく抱き締めてくれた。
「私には疲れを癒して上げる事なんて出来ない……だからこんな事しか出来ない。でも剣崎ちゃん、私は何時も貴方の隣よ」
「……有難う、本当に有難いよその言葉……梅雨ちゃん有難うね」
「うん……遅くなったけど今日の分、大好き」
「大好き」
そう言うと軽く口付けを交わすと、二人は笑顔を作って調理へと戻っていくのであった。直ぐに剣崎の料理の腕を見込んでのヘルプなどが飛んでくるのでそれに取りかかるのであった。
尚、個性「サーチ」を持つラグドールには全てを見られている模様。
流石に秘密にはしてくれる。