突如として飛来して来たそれ、何処か鷲を連想させるかのような怪人は翼とも思えぬそれを翻しながら鋭い爪を突き立て、剣崎へと襲いかかった。突然且ついきなり過ぎる攻撃に反応が遅れた剣崎は、それを諸に腹部を―――
「剣崎!!!」
「ごっ―――心配なく、大丈夫です!!!」
貫いてはいなかった。ギリギリの所で脇腹を掠る所で受け止める事に成功していた。本当にギリギリだった、だが不思議な翼を持ったそれはそのままの勢いで剣崎を押し込みに掛かる。だが剣崎はその勢いを利用するように自ら後ろへと倒れこみながら、後方へとそれを投げ飛ばす。飛行しているそれにはたいした効果はなく、飛行を乱す事しか出来なかったがそれを地面へと着地させることに成功する。
「やるなっ……だが私は負けんぞ。今度こそ、封印を解かせて貰う―――ブレイドッ!!!」
「な、なんだこいつ……ヴィラン、いや違うあの時の奴と同族……!?」
地面へ通り立ったそれは見れば見るほどに奇怪な姿をしている。両肩から皮膚を貫くかのように骨状の翼が生えており、金色に輝いているバックルを身に付けている。鋭い爪や髑髏をのような物を装備しているからか鷲というよりも何処かカラスのような印象を受ける。その腕には鷲と思われるもののマークがある腕輪を装備している怪人は剣崎の事を仕切りにブレイドと呼びながら好戦的な視線を見せ続けている。それは以前ショッピングモールにて戦ったあの怪物にも似ている気がしてならない、アレはヤギでこれはワシ、全く違うものの筈なのに同じような物にしか映らない。
「今度こそ、彼を解放し約束を果たすのだっ!!」
「解放、約束……何を言ってるんだ?」
「君に破れた時の屈辱、今でも忘れないさ……だが意外だったな。まさか君がカリスを持っているとはな!!!」
「カリ、ス……?」
怪人はゆっくりと此方を品定めするかのように歩きながら、鋭く睨み付けて来るかのごとく腕を向けながら何かを必死に叫ぶように言う。カリス、全く知らない言葉に動揺を隠せない剣崎。これも精神的な揺さぶりをかける為の作戦なのだろうか、ならばそれに乗るわけにいかない。確りと意識を持って立ち向かわなければならない。
「おおっ……待っていてくれカリス、間も無く君を解放しあの誓いを果たす時だ!!!」
「剣崎っ!!!何をしている、早く後退しろ!!」
そう虎が叱咤する、目の前の怪人の言葉の意味なんて考える意味なんてない。必要なのは今この場で如何行動するかを冷静に判断して実行するのみ。
「はい、ですけどこいつっ……!!」
「君は絶対に逃さない、いや、カリスを渡してくれるのならば見逃しても構わないが?」
「さっきから聞いてればカリスカリスカリス……何だお前は依存症か!!?俺はそんな事なんて知らないし、意味も分からない!!」
「まだ白を切るか……!!それならばっ―――!!!」
瞬間、怪人の身体から飛び出していく羽、それは真っ直ぐと剣崎へと向かっていく。それを回避するがそれらは木へと深々と突き刺さって行った、ただの羽ではないという事を理解するが回避しかとれない。そんな中で飛び込んでくる回避不可能の角度での羽。
「まずいっ……!!!」
咄嗟に防御を固めるが、それから自分を守るかのように地面が隆起して手裏剣のような羽を受け止めた。
「今度は私が守るよ剣崎君!!」
「ピクシーボブ!!」
「邪魔を!!」
「我の弟子に、手を出すなぁぁっ!!!」
再び羽を放とうとした怪人に虎の怪腕の一撃が突き刺さる、腕にある爪ごと粉砕する重々しい一撃は相手を木々の奥へと一気に吹き飛ばしてしまった。あれで個性が増強型ではないというのだから本当に驚きだ。
「無事か剣崎!!」
「は、はい有難うございますっ!!ってさっきの二人は!?」
「「「既に倒した!!」」」
「うわっすげ」
と胸を張る三人が指差す先には襲い掛かって来ていたはずのヴィラン二人が転がっていた。流石はプロヒーロー、抜群の連携などが取れるから奇襲さえ受けなければ負ける事なんてまずない。思わず剣崎も見事に土の牢獄に閉じ込められているタコ殴りの二人のヴィランを見て素で賞賛の声を上げてしまった。
「限界まで土は圧縮してあるから、硬度は保障できる。あいつらはこのまま放置してても大丈夫」
「正直ピクシーボブいなかったら相当苦戦してた、有難う剣崎君!」
「我が弟子として申し分なかったぞ!!」
「有難うございます……でもあの……虎さん、ぶっ飛ばしたのはまずかったんじゃないんですか……?」
「……実は反省中だ」
と虎も自分の判断ミスを悔いている。あの怪人は飛行能力を有している、それらが森の中に入っていき視界から外れている。また奇襲の機会を与えてしまったという事になってしまう。助けられた剣崎は強く言えないのだが実際はかなりやばい状況に変わりない。だがそんなときであった。
「マンダレイッ!!!剣崎君!!」
「出久、お前―――!!?」
木々の間から飛び出してきた出久、彼は洸太を救う為に飛び出して行った筈。保護出来たという事なのかとそちらを見た瞬間、思わず血の気が引いてしまった。片腕は折れているのか垂れ下がっている、いやそれよりももう片方の腕が完全にやばい。赤黒く変色している上にぐにゃぐにゃに折れ曲がるかのようになっている、剣崎は今まで個性の特訓に付き合ってきたがその時に負っていた怪我とは比例にならないほどの大怪我だ。直ぐに治療、いや、ラウズカードで回復させなければならないレベルの物だ。剣崎は歯軋りをしながら出久へと歩み寄って行った。
「出久お前そんな身体になってまで……!!!!」
「その事は後で!!マンダレイ、洸太君は無事です!!相澤先生に預けました!!」
「本当なの!?で、でも貴方その怪我!!?」
「それより大急ぎでテレパスをお願いします!!相澤先生からの伝言です!!、1組及び2組に通達!!プロヒーロー、イレイザーヘッドの名において戦闘を許可すると!!!!」
そしてもう一つ伝えるべき事があると言おうとした時、木々の陰から怪人が飛び出して剣崎を拘束したまま天高くヘと連行していく。
「しまっ……!!?」
「剣崎君!!!」
ピクシーボブは凄まじい勢いで土を隆起させて、剣崎を捕まえようとするがそれよりも早く怪人が天へと昇っていく。
「ヴィランの目的が分かりました!!ヴィランの目的はかっちゃん、いや爆豪君とそして―――剣崎君を捕らえる事なんです!!!」
「な、なんですって!!!!??」
「さあ、カリスを渡せ!!」
「剣崎君を狙って、何をする気何だ……!?」
「剣崎ちゃん!!」
「彼女に、手を出すなぁぁぁっっ!!!!」