救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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理由と変化、終わらぬ戦い。

「……仮面ライダー、今のって……?」

「カードに、なんかヴィランが吸い込まれて行ったぞ……?」

「確保した、って事なのかな梅雨ちゃん……?」

「多分、そうなんじゃないかしら……」

 

イーグルがカードへと吸い込まれていく場面を見た出久達は正直言って動揺していた、倒したヴィランへカードを投げつけてその中へ封印でもするかのような行動。ヒーローの中には束縛に適した個性などを持ち、それらを最大限に活用するヒーローも実在する。シンリンカムイも樹木という個性を生かした必殺技を持っているがそれとも違う。ヴィランを完全にカードに封じ込めてしまう力、他のどれとも違う物に出久達は驚きを隠せなかった。

 

「(剣崎君、君の、仮面ライダーの個性って一体……!?)」

 

出久は思わず剣崎の得体の知れない底知れなさに少し恐怖を感じていた、今の個性社会の中でも此処まで異常な個性なんて存在しないだろう。同時に彼が本当にヒーローでいて良かったと思える、仮に彼がヴィランになっていたら、オールマイト以外に止める事の出来る人物なんていない……いや、オールマイトでも止める事が出来るのかも怪しい。

 

「取り敢えず……危機は脱した、って事で良いのか……?」

「恐らくそれでいいのだと思う……しかし、件の仮面の騎士が此処までの強豪とは思いもしなかった」

「ああっ……俺や緑谷は前に目の前で見てるが、あの時は力を抑えてたって事何だな……」

「うん……最後の一撃なんて凄かったもんね……」

 

そんな風にステインと仮面ライダーの戦闘を間近で見ている轟と出久は目を丸くしていた。同時にこの仮面ライダーの個性とは一体なんなのかと言う事を激しく疑問に思うのであった。そんな風な疑問を浮かべているとライダーは振り返りながらカードを仕舞い込む。

 

「兎も角、宿泊施設へと向かおう。早急にプロヒーローと合流すべきだ」

「そ、そうよね。早く行きましょう」

「だが剣崎を探さなくて良いのか?奴とて狙われているのだろう」

「だけどこのまま僕達が勝手に行動してもまずいと思うよ、まずはかっちゃんの安全を先生に連絡してから捜索はプッシーキャッツに任せた方がいいよ」

「それは賛成だ。プッシーキャッツは山岳救助エクスパート、それにラグドールの個性なら直ぐに剣崎を探し出せる」

 

と障子の言葉に皆が納得する中で出久と梅雨ちゃんだけが渋い顔をしていた、そう剣崎のお陰で自分達は助かっているがその代償として剣崎は自らが仮面ライダーだとバレるのがほぼ確実となってしまっているのである。今まで隠し続けてきた秘密がバレてしまう……そんな事になるのだと思って剣崎へと顔を向けるが彼は真っ直ぐに施設への道を見据えていた。彼にはそんな事を一切考えていない、考えているのは皆を無事に送り届けるという事のみ。

 

SCORPE(スコープ)

 

皆を先導しながら剣崎は一枚カードをラウズする。それによって高められた警戒心や意識、感覚が数倍に研ぎ澄まされていく。今や彼自身がレーダーと全く同じ役割をなせるようにもなっている、それによってヴィランが近くにいないかを完全に把握しながら不意撃ちに対処出来る。距離こそ其処までないが、対処の為には十分過ぎる距離だ。

 

「……おい仮面野郎」

「……何だ」

 

不意に爆豪が剣崎へと呼び掛けた。普段よりも何処か荒々しさが抜けているような印象を受けるのは仮面ライダーとの力量の差が大きい事を自覚し、自分は守られるべき存在という事を把握しているからだろうか。冷静に判断した結果、自分は派手に動かず守られるべきだと。少々苛立つ事だが彼にとってはヴィランの思い通りになる方が更に苛立たしい。自分がもっと強かったらっと強く思う。

 

「なんでてめぇはそんなにつえぇんだよ」

「ッ!?(か、かっちゃんが……相手を認めた!?)」

「……」

 

出久が爆豪の言葉に驚いた、あのとてつもなく自尊心が強く攻撃的な性格で、他者から見下される事はもちろん、何であろうが負けた気分になる事も非常に嫌っているあの爆豪(かっちゃん)が相手が自分よりも強いという事を認めてその理由を尋ねた。それだけで、出久を驚かせるには十分過ぎるものだった。剣崎もそれに驚きつつも一旦足を止めた、そして答える。

 

「……さあなんでだろうな」

「あぁっ?」

「自分が強い、なんて考えた事は無い。自分が何が出来るかで判断するようにしている。強いと思う事は大切だ、精神的な成長にも密接に関係する。だが時にそれが慢心を生み、自らを貶める」

「……ッ!」

 

それを聞いた爆豪には思い当たる事が幾つもあった、事実としては出久の事を見下し続けている彼には何処か耳が痛くなるような言葉だった。

 

「大切なのは自分が何が出来て何が出来ないことを見極め、肯定し、模索する。それだけだ」

「……そうかよ」

 

そう言うと爆豪は黙り込んで後に続いていく、確実に爆豪の中で何かが変わり始めている。出久は何か不思議な予感を感じながら先導する剣崎のあとを続いていく。そして暫く歩いていくと施設へと到着する事出来た、その入り口には相澤が待機しながら警戒をしており此方を見つけると一瞬身構えるが、即座に警戒を解いて駆け寄ってくる。

 

「お前ら無事か?」

「はい、仮面ライダーが助けてくれたんです……!!」

「違法自警者、仮面ライダー……」

 

思わず睨み付ける相澤に出久達は必死に自分達の危機を救ってくれた事、此処まで安全に連れてきてくれた事を主張する。確かに彼は正式なヒーローではない、だがそれでも自分達を必死に守ってくれたヒーローなんだと言う。それでも相澤の鋭い視線は収まらないがその鋭さの意味は、彼が違法自警者だからという訳はない。―――この仮面ライダーの正体が剣崎だから、という事にだ。

 

「……仮面ライダー、俺個人としてはお前をここで捕まえるべきだと思っている。だが、それは合理的ではない。今現在ヴィランの襲撃を受けて生徒らが怪我を負っているし、ラグドールも怪我を負って意識を失っている状態だ」

「ラ、ラグドールが!!?」

「ああ。鉄と泉が必死に助けたお陰でなんとか難を逃れたらしいが、それでも意識を失ったままだ」

 

肝試しの順番で早い順番だった鉄と京水のペア、そんな二人がヴィランの襲撃を受けた時はちょうど中間地点にてラグドールから中間地点突破の証であるお札を受け取っているときの事だった。其処に襲来して来たヴィランは真っ先にラグドールを襲った後に二人にも襲いかかった。そして必死の交戦の結果、二人も多少の傷を負った物の此処まで戻ってくることに成功している。

 

「……お前には怪我を治療する能力がある、それで以前俺も救われた。出来れば生徒達やラグドールの治療を頼めるか」

「……承知した」

 

と剣崎はOKしながら相澤に連れられて施設の中へと入っていき、怪我人達の元へと移動した。そこでは仮面ライダーとと騒がれたが、相澤が静めながら剣崎は治療を施して行った。そして最後のラグドールの治療が終了したところで入り口から凄まじい音が聞こえてきた。

 

「この音は何だ!?」

「……まさかッ!!」

 

その場を飛び出しながら外へと出て見るとそこには……全身を黒い闇でコーティングしたかのような鉄並に巨大な魔物のような怪物が其処に鎮座していた。そしてそれはまるで甲高い咆哮を上げながら敵意を剥き出しにしながらブレイドを睨み付けた。

 

「まだ、終わらないのか……!!」

 




―――さぁいよいよクライマックスだぜブレイド、その力を存分に見せてくれよ……黄金の剣をよ。

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