「皆無事か!?」
「ああっこっちは大丈夫だ、誰かいない奴いるか?点呼を取れ飯田」
「分かった!一組、一人ずつ僕に名前を言って行ってくれ!!」
施設の一室に集められた1組、森の中でのヴィランでの襲撃などを何とか回避、交戦しながら何とか戻ってくる事が出来たメンバーがそこに集まっていた。怪我によって床に伏せているものもいたがそれらも仮面ライダーである剣崎の力によって治癒されて、今では全快状態となっている。葉隠と響香はヴィランが操っていたガスの影響を受けてまだ意識が少しグラついてはいるが、それでも確りと安全が確認されている。そしてその場には全員いる、訳ではない。
「剣崎君がいないぞ!?誰か、剣崎を知らないか!?」
「い、いや知らねぇぞ!?あいつもしかして、ヴィランに捕まっちまってるのか!?」
「いやあいつほどの奴がそう簡単に捕まるとは思えねぇ。きっとなんとかこっちに向かってるだろ」
と動揺が広がりそうになるのを剣崎と戦った轟が彼の力を保障するようにして落ち着かせる、あれだけの力を誇る奴がそう簡単にヴィランに捕まる訳もない。ラグドールも目覚めているがまだ意識がハッキリとしていない、彼女の個性さえ使えれば即座に救援に駆けつける事が出来る。そうすれば絶対に助ける事が出来ると皆は信じている。しかし、そんな不安を吹き飛ばすかのように外から凄まじい衝撃波が伝わってくる。今外では仮面ライダーと謎の黒い怪物が戦闘を繰り広げているのである、極力施設から距離を取って戦っているのだがそれでも十分過ぎる衝撃波が迫ってきている。
「なんて衝撃だよ……」
「一体どのような戦いが繰り広げられているのでしょうか……」
思わず不安に駆られそうにもなるが、それらを掻き消すかのように飯田が声を出して安心させるように努力している。しかしその中でも顔を曇らせている二人がいた、出久と梅雨ちゃんであった。二人とも同じく仮面ライダーの正体が剣崎だと知る者。そんな二人は外から聞こえてくる音を聞くたびに不安に駆られて飛び出しそうになっている自分を抑えていた。
「(剣崎ちゃん……お願い、無事でいて……!!!)」
「(剣崎君、大丈夫だよね……君は、強いもんねっ……!?)」
確かな信頼も信用もある、それでも不安になっていく気持ちが高まっていく。特に梅雨ちゃんは周りから剣崎の心配をしすぎて不安になっていると励まされるがそんな声なんて耳に入らなくなるほどに願いを送っていた。絶対に帰って来る、剣崎は帰って来るんだと願い続けていた―――そして、一際大きな衝撃波が響き渡った時、梅雨ちゃんの身体は景色に溶けるかのようにして消えていた。
「オオオッッ!!!」
「ギュアアアアア!!!」
一合一合を交えるたびに周囲に巻き起こっていく爆風のような衝撃波、それらによって周囲の木は薙ぎ倒されていく。巨大な大槌のような物を振り下ろしながら攻撃を行う闇を纏う怪物は、仮面ライダーへとその両腕を振り下ろしていく。それらをライダーになる事で強化された怪腕で強引に反らしながら、怪物の身体へとブレイラウザーを振り切る。しかし、それでも大した傷を与える事が出来ない。それでも攻撃を続ける剣崎、諦める事無く攻撃をし続ける。
「こいつっ……!!!」
「ガアアアッッ!!!」
今までの物と同質の物のようにも感じるが、一切の言葉も喋らない上に如何にも何か違う何かを感じる。黒い泥のような闇、それらが形成している一種の傀儡人形とも言うべきなのだろうか。それに酷く酷似した何かで何処からか操られている何かのような印象を受ける。それでも正体を突き詰めるなんて事はこの現状では何の役にも立たない、兎も角倒す為の努力をするだけだ。
「らぁぁぁっっ!!!!」
渾身の一閃、それらは確かに怪物の身体を抉るかのように炸裂し膝を付かせる。しかし、それを受けてまるで何かしたのかと言いたげなように立ち上がる怪物に剣崎は寒気を覚えた。そう今ハッキリした、以前USJでオールマイトと戦った脳無に近い。あれに闇を纏わせたような怪物だと思う、だとしても何の解決にもならないまま、身体中から伸びていく鎖、それらは自由意志を持ったかのように一つ一つが此方へ攻撃を仕掛けてくる。
「なっ!?クソッ!!!」
必死にブレイラウザーを振るいながらそれを弾き、切り裂きながら防御を行っていくがそれすら無意味だとあざ笑うかのように鎖は雑草のように伸びて再び襲いかかってくる。しかも一本一本パワーもかなりあるので打ち合うだけでかなり面倒な相手。そしてそれらの対処に追われているときの事だった、振り抜かれた大槌の一撃が剣崎の腹部へと炸裂してしまった。
「―――がはっ……!!」
凄まじい速度で弾き飛ばされそのまま木へと激突する、意識がぶっ飛びそうなほどの一撃を如何にか堪えた剣崎だがそれでも身体に走る激痛が視界を歪ませている。虚ろになりかける意識に力を込めながら必死に立ち上がろうとするが、先程の一撃が響いているのか中々立つ事が出来ない……。崩れ落ちる身体に活を入れて必死に立とうとするがそれでも立てない……。
「ぐっ……!!!」
一歩、一歩と近づいてくる怪物。同時に振り上げられていく大槌、この威力では『〈
「うううっっ……」
何が起きたのか分からない、自分が潰されていない事だけは確かなようだが……だが肩を貸してくれているようなこの感覚は何なのだろうか……。
「剣崎ちゃん確りして……!!」
揺らぎ掛けていた意識を呼び覚ましたのは大切な人である彼女の声だった、瞳を開けて見ると隣には梅雨ちゃんが自分に肩を貸していた。
「梅雨、ちゃん……?何で、どうして来たんだ……!?」
「だ、だって放っておけなかったんだもん……心配で心配で……!!!」
大粒の涙を目元に蓄えながらボロボロになりながらも必死に戦っていた剣崎に問いかける、剣崎の強さは把握しているがまるで誰かが教えてくれているかのように、本能が叫んでいた。このままでは剣崎が危ないと。そう思ったとき、身体が動いていた。剣崎の元へといち早く向かわなければならないと、そんな彼女の言葉に心配を掛けてしまったかと思いつつも、不意に彼女の身体が目に映った。身体の一部が風景と同化するかのように変化している。
「梅雨ちゃん、それって……!?」
「えっ……?あ、あら何これっ!?わ、私こんな事出来ない筈なのに……あっもしかして入り口で見張りをしてた相澤先生達をすり抜けられたのってこれのお陰……!?」
どうやら彼女も気付いていなかったようだが、梅雨ちゃんの身体はまるで保護色のように周囲の景色に溶け込むかのように変化していた。これによって梅雨ちゃんは相澤達の見張りを突破して剣崎の元までやってくる事が出来たという事なのだろう。
「でも、梅雨ちゃん此処は危ない……早く、逃げて……!!」
「それなら剣崎ちゃんも一緒よ、言ったじゃない何時も一緒だって!!」
「でも、このままじゃ……!!」
じりじりと近寄ってくる怪物、未だに自分のダメージが深い事を見て此方を舐めるかのようにしつつ大槌を構え直している。非常にまずい……!!なんとかしないと、梅雨ちゃんを守りたい……仮面ライダーとしてではない。剣崎 初として、一人の男として……自分の事を好きだといってくれた彼女を、ずっと一緒に居てくれると言ってくれた彼女を守り抜きたい……!!!
―――その時、剣崎は今までにない感覚を体験する。世界の時間が止まるかのような、灰色に満ちたような世界に一人取り残されたかのような……奇妙な感覚を。全てが灰色に染まりきった中で剣崎はある物を見たそれは―――黄金の翼と剣を持った騎士が敵をなぎ払う姿だった。
「―――剣崎ちゃん、ずっと一緒にいるから!!」
「……そうか、そういうことか……」
理解、把握、熟知。今の一瞬が教えてくれた、今の自分には大切な人を守る力がある。橘から貰ったこの謎の装置、その意味を。何故これに強い力を感じたのか、何故それに『〈
「梅雨ちゃん、君は俺が守る。君と一緒にいる為に、君と笑う為に……!!」
「剣崎ちゃん……!!」
痛む身体に力が漲る。そうだ、今までだってそうだった、自分は誰かの為に力を尽くしてきた。それは助けた人が見せる笑顔が本当に美しくて好きだったからだ、人を愛しているからだ。そして今は―――大切な人の為にその力を振るって守る、その為に全力で戦う!!!剣崎はブレイラウザーから『〈
『〈
差し込むと同時に巻き起こるかのような鼓動のようなエネルギーが身体を取り巻いていく、同時に高い高揚感と確かな実感が現れてくる。これは自分に新たな力となる、そしてそれは彼女を守る絶対的な力になってくれると。その確信と自信と共にもう一枚のカードを、ラウズする。
『〈
刹那、ブレイドを金色の光が包みこんでいく。翼を広げたワシにも見えるような光がブレイドへと溶け込んでいく。それらはアーマーと溶けあうように融合し、ブレイドはその光を余す事無く自分の物へとしていく。そしてブレイドは進化を遂げていく、アーマーの一部は輝く金色になり胸部に鷲を思わせる紋章が刻み込まれていた。そして優雅且つ神々しささえ与えるマントのような翼を背中に携えながら、剣崎はその力を完全に我が物とした。その進化に応じるかのように刃の先端には金色の刃が出現する。新たなステージへと立った剣崎、ブレイド・ジャックフォームの誕生である。
「剣崎ちゃん……凄い、綺麗……」
その美麗さと洗練された勇ましさに思わず梅雨ちゃんも息を飲んだ、一歩前に出た新たな姿へとなったブレイド。そこへと向かってくる怪物は大槌を振り下ろす、背後には彼女もいる事から避けないと踏んだのだろう、確かに避ける事が出来ない―――ならば
「だぁぁっ!!!!」
避けなければ良いだけの事。剣崎が振るった一閃は大槌をまるで果物でも切ったかのような綺麗な切り口を残しながら、怪物の腕ごとそれを完全に両断してしまった。全身漲ってくる凄まじい力、それに驚きを感じつつも的確にそれを分析しながらそのままの勢いで斬撃を怪物の身体へと叩きこむ。
「グギャアアオアオア!!!」
今度の一撃を受けた怪物は苦しみ悶えるように後退りをしていく、だが剣戟を全く緩めないままその身体へと更なる斬撃を刻んでいく。黄金の刃は怪物の身体の奥までダメージを与えて行く、そして回転斬りを決めると大きく倒れこんで激痛に歪んだ叫びを上げる。
「これで、終わりだ……!!」
『〈
カードの力を取り込んでいくと全身からエネルギーを溢れだしながら背中の翼を大きく広げていく、そして剣崎の身体は重力に逆らうかのように浮き始めていく。そして剣を構えながら一気に飛翔し、怪物を翻弄しながらその上空から一気に剣を振り下ろす。
『〈
「ウェェェエエエエエエエエイッッッ!!!!!!」
気迫の裂帛と共に振り下ろされた一撃、それは怪物を頭部から切り裂きながらも全身に雷撃を流し込んで相手を完全な戦闘不能へと導いていく。剣を引き抜き梅雨ちゃんへと振り向いた時、背後では怪物が爆発を起こしながら炎上をしていた。炎を背に受けながら剣崎は変身を解除しながら笑いかけた。
「有難う梅雨ちゃん、君のお陰で勝てたよ」
「剣崎ちゃん、剣崎ちゃん……!!」
感極まった梅雨ちゃんは思わず駆け寄って抱きついた、そして彼の体温を身体全体で感じながら確かに此処に剣崎が居るという事を実感しながら涙を流して喜びを表した。
―――あ~あ、負けちまったよ……これじゃああいつに顔向け出来ねぇな……まあこの場合はしょうがないか。