救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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混濁の光、闇への誘い。

まどろみの中で揺れ続けている、どっちが上で下なのかも分からない。重い泥のような眠気が身体にへばり付いている、抗おうとするほどに眠気は毒となって身体を蝕んで意識を混濁させていく。何の光も差さない闇の中を漂い続ける意識を何かが引きあげようとしている、いや―――まるで引き寄せられているかのような……。

 

―――お前は、本当に世界を……人類を滅ぼしたいのか。

 

―――俺にはもうどうにもならない。俺はそうするように作られた。

 

 

何かが見える、光の中で二つの影が、何かを話し合っている。内容は聞き取れない、だが理解出来る。何故だ、それすらも分からない。それらは次第に姿を変えていき対峙するかのように、距離を取り始めていく。そして―――黄金の鎧、無数に刻まれた紋章と王足らしめる剣を持った者。黒き身体に刻まれた緑色の拘束具、禁断の存在。それらがぶつかり合う―――。

 

「ハァッ……!?」

 

荒々しい息を吐きながら、目を覚ます。最低最悪の目覚めとも言える、これ程までに気分の悪い目覚めなんて今までになかった。本当に最悪な気分だ、そして更にそれらを身体を縛っている鎖が加速させ、記憶が蘇ってくる。それは―――梅雨ちゃんを庇って襲いかかってきた闇へと飲まれ、最後には彼女の泣き出しそうな顔を見たものだった。

 

「よぉ起きたかよ……剣崎 初君」

「……お前は、USJに来てた……」

「死柄木弔、そう呼べ。おっと、そんな風に睨んでくれるなよ。安心しろ危害を加える気はない」

「信頼性あると思ってるのかその言葉……」

「ははっそりゃそうだよな」

 

目の前にいながら気さくに話し掛けて来る男、身体の彼方此方を手のような物で覆いながら顔を手で隠し続けている奇妙な存在。USJにて襲撃したヴィラン達のリーダー、ヴィラン連合のトップと思われる死柄木弔。そしてその周りには黒霧や梅雨ちゃんや麗日を襲っていた少女ヴィランに継ぎ接ぎだらけの男に全身タイツの男などが此方を見つめ続けている。

 

―――如何やら自分は完全にヴィランに捕まってしまったらしい。

 

「まあ兎も角、お前は俺達の手の中って事は分かるよな?」

 

不適そうだが何処か自信ありげ、優越感に浸っているかのような言葉が掛けられてくる。思わず激情に駆られそうになる自分を落ち着かせる、明らかにこの場は分が悪い。黒霧というワープを使う個性持ちまでいる、まともにやったら恐らく勝てない。此処はチャンスを窺うしかない……そう自分に言い聞かせながら何処か呆れているように、諦めているように振舞いながら答える。

 

「はぁっ……そーだな……俺は囚われの身って訳か。せめて、捕まえるなら女にして見たら如何だ。囚われの王子様なんて格好が付かない」

何言ってんだ十分ありだと思うぞ!捕まえるなら女の子の方が絵になるもんな!」

「お、おう……なんか、アンタ面白いな……」

なんだお前なめてるのか!?サンキュ、俺もお前結構面白いと思うぜ!!」

 

まるで人格がコロコロ入れ替わっているかのような言動の不確かさに呆気に取られそうになる、そういう個性なのだろうか……だとしたら生活するのが大変そうだ。

 

「おい荼毘、拘束外せ」

「あっ?良いのかよ、暴れるんじゃないのか」

「いいんだよ、これから行う事の為に立場は対等である必要があるのさ」

「……トゥワイス外してやれ」

はっ俺?嫌だし。分かったぜ今やる!!」

「……何この愉快な集団」

 

思わずそんな事を言いながら身体の拘束を解かれた剣崎は思わず身体を伸ばしてしまう、如何にも妙な気分だ。自分は捕まっているのにそうとは全く思えない、寧ろ歓迎されているといった方が正しいと言えてしまうような雰囲気だ。死柄木が言っているやる事と言うのも気になる、がそんな時に黒霧から麦茶が差し出される。

 

「どうぞ、長らく眠っていたので喉が渇いているでしょう」

「あっどうも……いやいやいや……可笑しい可笑しい……」

「いいんだよ安心して飲め、毒なんて入れてないからよ。言っただろ対等に扱うって」

「いや、一応これでもヒーロー志望だぞ俺。それがあっさりヴィランから茶手渡されて普通に受け取って飲むってアウトだろ……」

「面白いなお前」

 

ビジュアルだけならお前らの方が絶対面白い、と内心で思っている中で真横から凄まじくじっと見つめてくる少女ヴィランが激しく気になった。ひたすらに此方を見つめ続けている彼女が異様なほどに気になる、いや此方を見つめてくるのだから気になるのは当たり前なのだが。

 

「貴方の血、欲しいなぁ。ねえ頂戴、コップ一杯分ぐらい!」

「それって大体200CC寄越せって事かよ……」

「おいその辺にしとけ、今から大切な話をするんだ」

「えっ~弔君いけず~」

「いいから黙ってろ」

 

とトガと呼ばれた少女はバーテーブルに顔を押し付けながら拗ねるように黙り込み、死柄木は顔を下に向けながら溜息を吐き黒霧から出されたお茶を口にする。実は案外彼も苦労人なのかもしれない。

 

「なんか、大変そう何だな……」

「意外とな……さてと本題に入ろう、剣崎 初君、君の事は調べさせてもらったよ。全ての経歴を見た、そしてそれらを踏まえて言おう、俺達ヴィラン連合の仲間になれ」

「―――ッ!!」

「お前は心の奥底で両親を殺した奴らへの復讐を考えている、だが犯人も誰も分からない。だからその憤りをヴィランにぶつけようとしてヒーローを目指している、違うか?」

「そ、れは―――」

 

理解している、両親を失った自分の事を。悲しんだ、涙が枯れるほど悲しんだと同時に憎んだ。大好きな両親を奪った奴らの事を……。

 

「だが違う、お前が本当に憎んでいるのはこの世界のルールそのものだ。個性の有無が格差を生むこの世界だ。だから世界を変える為にお前はヒーローをやっている、その為の力をもっと有意義に使おう。だから剣崎 初―――ヴィラン連合に、入れ」

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