救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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誘う闇、姿を現す巨悪。

「だから剣崎 初―――ヴィラン連合に、入れ」

「……普通ヒーロー志望の人間を勧誘するか」

「するさ、お前は本来此方側に居べき存在なのさ」

 

死柄木は笑いながらそう語っている、無論断るつもりでいる。当然だ、自分がヒーローを目指そうとしたのはオールマイトとの約束を果たす為であり救いのヒーローになる為なのだから。ヴィランになるなんてありえない。

 

「お前の心にもあるだろう。両親の命を奪った奴への怒り、怨み、憎しみが。だがお前はそれが晴らせないと思ってるが故にそれらの全てをヒーローになる為のエネルギーへと向けている、違うか?」

「……」

 

違う、そう言いたかったのに口が動かなかった。復讐、死柄木が言っているのは自分が復讐の為に生きてきたと言っているのだ。否定、出来なかった。考えた事なんて幾らでもあった、両親を奪った奴らが憎かった、殺してやりたいすら思った事も少なくなかった。でもそれらを踏み留まらせてくれたのはオールマイトとの約束、両親の仇を討った所で何になるんだ、絶対に両親はそれを望んでいないんだと言い聞かせて自分を抑え付けて来た。

 

「復讐なんて無意味だ、なんて実際に大切な物を奪われていない奴らがのたまう戯言だ。身が焦がれるほどの怒りや憎しみを抱いた事がないから言える」

「……ッ」

「憎しみに満たされたものにとって、自分を諌める手段はそれを完遂する以外にない。だがお前は良く自分をコントロールしてるさ、ヴィランへと何れぶつける為にな」

 

剣崎は思わずその言葉に真剣に耳を傾けてしまった、この死柄木は相手の内面をよく見抜いている。確かに自分の中には誰かを救いたい、救いのヒーローになりたいという強すぎる思いの影の中で鳴りを顰めている憎しみの感情が渦巻き続けている。仮面ライダーとして活動しているとき、それらの感情をぶつけていなかった、といえば嘘になるかも知れない……。ぶつけて発散していたのかもしれないというのは否定しきれない。

 

「だが違う。お前が真に復讐すべきは両親を殺した連中ではなく不自由に、不条理になっているこの世界だ、俺達の戦いは問いそして修正だ。この世界に問い続ける、この社会が本当に正しいのか。国民一人一人にそれらを問い続けていくのさ、俺達は勝つつもりさ」

 

死柄木は立ち上がりながら手を差し伸べてくる、その眼には狂気を孕んでいるがそこにあるのは純粋さ。この社会に対する根本的な疑問、人である以上完璧であることなど不可能であるのにそれをヒーローに求め続ける国民。少し何かをミスしただけで大いに責め立てられるヒーロー達、責められるべきはヴィランでありヒーロー達は逆であるべき筈。そんな言葉に思わず心のどこかで納得を浮かべてしまった。

 

「君は、如何思ってる。今のこの社会を」

「……さぁな、俺は社会とかは如何でも良い。俺は俺がやりたい事をやるだけだ」

「はっはぁ聞いたか黒霧、こいつやっぱり大当たりだ」

「ええっ実に良い人材ですね」

 

自らのやりたい事をする、それはヴィランと全く同じ。個性を自らのしたい事に我慢せずに使用していく。それはヴィランの筆頭的な行動、そして剣崎が今まで仮面ライダーとして活動して来た事と全く同じとも言える。本質的には自分はヴィランと同義、そういう事になる……分かっていたことなのに、いざそう言われると心に来る物がある。

 

「兎も角、よく考えて見てくれ剣崎君。そうすれば君は……良い俺の右腕になれる」

「……いきなり幹部待遇なんて随分気前がいいな」

「それだけの能力があるからな、なぁ―――先生(・・)?」

「先生……?」

 

不意に口に出す先生と言う言葉に疑問を思う剣崎、死柄木は背後にあったモニターへと視線を移しながらそう問いかける。するとそのモニターは何時の間にか『SONUD ONLY』へと切り替わっていた。

 

『あぁっそうだね、彼は実にいい……流石は体育祭で優勝出来るだけの実力を持っている』

 

その言葉を聴いた時、全身に鳥肌が走った。恐ろしいまでの寒気とおぞましさ、邪悪な存在を感じ取った。声だけしか聞こえないと言うのにとんでもない存在感、目の前にイメージで立体化させられるのは世界をそのまま手に収めて握り潰してしまうかのような闇の大魔王。

 

『初めましてだね、剣崎 初君。君とは是非じっくりと話をしたいね』

「……俺は、話したいとは思わないな……」

『はははっ実に硬派だね、だけど僕は君に興味があってね。まあその前にある人物が君と話したがっている、まずはそっちが先だろうね』

「ある、人物……?」

『僕との話しはその後にしよう、それじゃあまた後で』

 

話が終わった途端に全身から噴出してくる汗の雨、圧倒的なプレッシャーの中でなんとか保っていた意識。吹雪が吹き荒れている中で、どうして寒いのかを理解できていないような感覚。おぞましさが身体を突き抜けてきた、そしてそんな自分を笑うかのように一人の人物が目の前に立ってきた。

 

「流石に大先生の声はとんでもなくおっかねぇよな、威圧感とプレッシャー半端ねぇからラスボス臭が半端ない」

「お前、は……」

「俺か?そうだな、お前を此処まで連れてきた張本人って所か」

「お前が、梅雨ちゃんに攻撃を……!!!」

 

と思わず怒りを覚えたがその男はお茶らけたように自分を諌めようとする。

 

「本気であの子にやろうとしたわけじゃねえよ。お前のことだからきっと庇うと思ってな、まあ庇われなくても直前でお前に当てる気だったけどよ」

 

顔を上げてその人物の顔を見たとき、驚いた。自分は彼を知っている、知っている顔だ。浅黒い肌の上には幾重にも刻まれている刺青、それらは時々発光するようにしながらも蠢いている。頭には赤いバンダナをした何処か軽い印象を受ける少年が、何時か自分に正義とは何かを問うってきた少年がそこにいた。

 

「お前はっあの時の……!!!!」

「ああ久しぶりだな。俺は人類の天敵……人類悪(ビースト)この世全ての悪を背負う者(アンリ・マユ)だ」

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