救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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滅びを呼ぶ悪、皆は一人の為に。

「人類悪、アンリ・マユ……!?」

「おう。人類の天敵、人類を滅ぼすものさ」

 

そう言いながらにこやかに笑う少年、まるで悪戯が成功した事に対して楽しそうな笑っている子供のような純粋な笑みを浮かべている。そんな彼が人類の天敵と言うのを語られても全く理解出来ないし、実感も出来ない。

 

「まあ仲良くしようぜ兄弟、俺たちはきっと仲良くなれると思うぜ?」

「……俺はしたいとは思わないな。お前は彼女に危害を加えようとした」

「カッ~キッツいねぇ、だから言ってるじゃねえか。直前でちゃんと軌道を変えるつもりだったって、あの泥は俺の思うがままに動く。それに俺だって女の子を傷つけるのは気が引けるからする気はない」

「信用ねえよ」

「ですよね~」

 

けらけらと酷く愉快そうに笑いながら少年、酷く軽い性格でもしているのか全く読めない。肩を組んできて硬い事を言わずに仲良くしようといってくるがそんな気など起きる訳がない。

 

「だけど俺はお前さんと仲良くしたいぜ、お前は俺たちの側に来る素質があるんだからよ。なぁ死柄木先輩よ」

「ああっこいつは間違いなく俺たちの側にいべき存在だ、間違いない」

「(勝手に決めてくれるぜ……)」

 

此方を見つめてくるヴィラン達、その視線は既に同一の物へと向けられるものへと変わりつつあった。つまり自分は既に雄英に通っているヒーロー志望ではなく、ヴィラン連合に加わる新たな仲間という目で見られている。大声で否定しておきたい所だが、した所で待っているのは間違いない一斉攻撃。それで自分は敗れる、それで仮面ライダーとしての力を奪われるのが最も最悪な事。冷静に考えて行動しなければ全てを失う所か、世界を滅ぼす一端を担ってしまう。

 

「人類の天敵……じゃあなんでお前はヴィラン連合と共にいる……」

「そりゃまあ……幾らなんでもいきなり滅ぼすなんて可哀想ですしぃ~?手始めに、頑張った人間に対して正しい行動すら出来ない社会をぶっ壊しそうと思ってな。俺ってば人間博愛主義なもんでネ」

「……天敵なのに博愛ってなんか可笑しくないか」

「別段可笑しくないさね。天敵だからこそ、逆に愛おしく思ってくる事だってある訳よ」

 

にこやかに、晴れやかに笑っている少年に剣崎は何も同意出来なかった。言っている言葉が理解の範疇を超えている事もあるがそれ以上に自分と彼は明らかに相容れない関係にあるのだと察する。そして再びモニターに『SONUD ONLY』という表示が映し出される。

 

『アンリ君、話は終わったかい?』

「おう大先生。もう自己紹介とか終わったからいいぜ、悪かったな時間取らしちまって」

『何気にしてはいないさ。さて黒霧、彼を僕の所まで案内してくれたまえ』

「はい承知しました。剣崎君準備はいいですか、行きますよ」

「……拒否権ないんでしょうに」

「おっ分かってるなぁ~!!!」

 

と肩をバシバシ叩いてくる少年ことアンリ・マユ。そんな彼からの激励のようで激励ではないものを受けながら剣崎はそのまま黒霧のワープにて何処かに転移させられていく、次の瞬間に剣崎は薄暗くモニターの光だけか微かに暗闇の室内を照らしている場所へと姿を現した。背後には未だ黒霧のワープゲートが残っている辺り、用が終わったらそこから帰れということなのだろうか……そう思っていると目の前から声が聞こえてきた。

 

「やぁ……剣崎 初君。こうして会う日を楽しみにしていたよ」

 

その瞬間再び全身が硬直するかのように強張りながら鳥肌が立っていく。声を掛けられただけなのに圧倒的なプレッシャーと威圧感が身体を貫いていく。モニターの微かな光の中に座りながら自分を待っていた人物は身体のあちこちからチューブを伸ばしている為か病人に身間違えそう、だがこの全身に伝わってくる感覚を味わえばそれを病人とはとても思えないだろう。オールマイトにも匹敵しそうなほどの屈強さすら感じそうなそれを纏った男は、穏やかだが此方を威圧するように声を上げる。

 

「アンタが、大先生って奴か……?」

「彼からはそう呼ばれているね、死柄木には先生と呼ばれているから間違ってはいないだろう。初めまして僕はオール・フォー・ワン」

皆は一人の為に(オール・フォー・ワン)……。どうも、剣崎 初だ」

「宜しく、確り礼儀は弁えているようだ。そういう子は好きだよ、ヴィランは荒々しいのが多く、礼儀を弁えているのは少数派だからね」

 

何処か世間話のようにしながらも此方を観察されているような感じがする、恐らく見られているのは間違いない。それにどんな意図があるのか分からないが寒気が止まらない。

 

「さてと君のヴィラン連合加入を祝してささやかな贈り物をしたいと思っているんだ」

「……入るとは言った覚えないんですけど」

「フフフッ……何、道楽の一種や気が早いと笑ってくれても構わないさ。君には強くなって貰った方が後々僕としても嬉しいからね」

「嬉しいって……どういう事ですか」

「何れ分かる日が来るさ、さあ受け取ってくれたまえ。潰れないことを祈るよ」

 

オール・フォー・ワンが手を向ける、それに思わず身構えるがそれよりも早くその指が赤い筋が走る赤い棘のようになって一気に伸びて剣崎の身体へと突き刺さった。

 

「がぁぁっっ……!!!??」

「さあ、これからこの個性は君の物だ。もっともっと高みへ昇るといい……Plus Ultraって奴だよ」

 

どくん、どくん……次第に大きくなっていく鼓動の音。その音がまるで爆音のように身体中へと響いていき身体が爆発してしまいそうな感覚が突き抜けていく。そして身体へと入ってくる異物を徹底的に壊そうとする拒絶反応、声すら上がらないほどの激痛に剣崎は声にならない物を上げながらオール・フォー・ワンの前で苦しみ続ける。

 

「フフフフフッ……さあ新たな次元へと昇るといいさ、その時君は―――もっと強くなる」

「―――ッッッッ……がああああああああっっっ!!!!」

 

 

「剣崎、ちゃんっ……?」


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