「梅雨ちゃん、あの別にそこまで付き添いしてくれなくでも俺は……いや、なんでもない、ありがとうね」
「ううん私がしたいからからやってることだから、気にしないで」
検査と聴取の為の入院、それらを行っている間梅雨ちゃんは毎日自分の元を訪れて世話を焼いてくれていた。果物を剥いたり、食事を手伝ったり出来る範囲で世話を焼き続けていた。それは剣崎への心配もあるだろうが、何よりも彼女の中にある不安を取り除きたかったからだろう。目の前で自分を庇って浚われたという記憶は彼女の中では大きな傷となってしまっている。出来るだけ隣にいてそれを拭いたいのだろう、それを思ってか剣崎も強く言わず、出来るだけ隣にいる事を心がけている。
「漸く退院かぁっ……なんかずっと閉じ篭ってたから身体が鈍っちまったな……」
「剣崎ちゃんはよく動く方だもんね」
「ああっ毎朝は走りこみとかが日課だったから……」
「そう言えば剣崎ちゃんは家庭訪問とかどうするの?」
雄英はヴィラン襲撃などの事態を重く受け止めており、それらから生徒を守る為に全寮制を取り入れる事を決定した。その為に今回の家庭訪問は各家庭から寮制の許可を得る為の訪問と今後の指導方針などを話し合う場として設けられている。梅雨ちゃんの家にも既に相澤とオールマイトが訪れており、許可は得られたとの事。だが剣崎は両親がいない一人暮らし、彼の場合はどうするのだろうか。
「親戚とはもうあんまり連絡とってないけど近くに住んでないからな……四国だし、今日一応午後から家に来るって話を聞いたよ」
「そう、それじゃあ急ぎましょ。先生達を待たせちゃったら悪いものね」
「ああっそうだね」
共に病院を出た二人は共に電車に乗って剣崎の家ヘと向かって行く、その際にも二人は手をつないで共に歩いて行く。こうしてみると仲の良いカップルという絵に見えるのだが実際は抱えてしまった不安を取り除き、安心感を得たいというものが大きく何処かズレている。それでもいまは構わないと剣崎は思っている、自分がそうさせてしまったのだからしたい事はして上げたいと思う。帰宅して間も無くするとインターホンがなった、玄関を開けて見ると……
「剣崎、退院おめでとう。一応フルーツは持ってきた、オールマイトが」
「やぁ剣崎少年、私が来たぞっ!」
とオールマイトが持ってきたフルーツ持ち合わせを渡してくる相澤先生と茶目っ気たっぷりにウィンクするトゥルーフォームのオールマイト、八木 俊典先生がやってきた。
「すいません、それじゃあどうぞ」
「それじゃあお邪魔します……あれ、お客様がいるのかい?それともご親戚?」
「その梅雨ちゃんがいるんです、彼女はえっと俺の世話とかを焼いてくれてて……」
「話には聞いていたが随分と過保護だな、目の前で浚われているから気持ちは分からなくも無いが」
と相澤も剣崎を助けられなかった身なので強く言えずにそのままリビングへと通されて行く。そこではお茶を準備して梅雨ちゃんが挨拶をして、3人は席に付くと彼女からお茶が出される。オールマイトは二人が交際関係にある事を知っているので思わず、将来二人が結婚したらこんな家庭を築くんだろうなぁと考えてほっこりするのであった。
「それで剣崎、ご親戚からの許可は一応電話で取っているが確認だ。お前としては全寮制に異論はないのか」
「はい、ありません。これからヒーローを目指して行くなら合理的な判断だと思ってます」
「そうか……ならそれに付いてはもういいだろう。次は……済まんが蛙吹、外して貰ってもいいか」
「ケロッ?もしかして剣崎ちゃんに関わることなの相澤先生」
「ああっ特に重要だ」
「相澤君、蛙吹少女なら大丈夫だよ」
これから話す事は剣崎の正体である仮面ライダー絡み、正体を知っている者以外は聞かない方がいいだろうという気遣いもあったのだがオールマイトがそれを宥める。梅雨ちゃんなら大丈夫だと。
「なあ剣崎少年、蛙吹少女は君が仮面ライダーという事を知っているのだろ?」
「っ!!?ちょっオールマイト相澤先生の前で!!?」
「大丈夫、相澤君も根津校長から聞いたそうだよ」
「……何時の間に」
「というか、剣崎お前バラしたのか」
「バラしたというかその……梅雨ちゃんが気付いてそれで隠せなくなったというか……」
まあバレた原因としては叫び声というなんとも情けないものなのだが……。
「まあいい。剣崎、お前はこれからも仮面ライダーとして活動していくつもりか」
「はい、今まで変わりなく」
「……ハッキリ言っておくが校長やオールマイトから如何言われようがお前の本質はヴィランと変わらん。あくまでも方向性が異なっているだけだ、それでも続けていくつもりか」
「はい」
「理由は」
即答で答えて行く剣崎にどれ程に迷いがないのかと思わず思ってしまう、そして剣崎は真っ直ぐ相澤を見つめながら言う。
「俺は救いのヒーローです、既に俺を支えとして見てくれている人が大勢います。そんな人達にとって俺は光であり支えなんです、そんな人達のためにも、そして何よりも俺がそうしたいんですよ。誰かを救い続けたいって」
「……例え俺が何を言った所で何も意味をなさんだろうな。好きにすればいい」
「有難うございます、先生」
もう話したい事が終わったからか、家庭訪問はこれぐらいにしようと相澤が立ち上がるが最後にこう言い残した。
「剣崎、USJでは世話になったな。有難う……そして、これからも気張っていけよ」
そう言い残して玄関へと向かって行く相澤に向けてオールマイトはニヤニヤと笑いながら、剣崎と梅雨ちゃんにサムズアップをしてそのまま帰って行くのであった。
「剣崎ちゃん、良かったわね」
「ああっ本当に……」
「それじゃあ、このまま家デートでもしましょうか♪」
「お、おう……な、なんか緊張するな……」