救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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コスチューム、改良。

「でぇえいやっ!!」

「ムゥッ!!」

 

不安定な足場をセメントス先生に頼みながらそこで個性を発動させながらの高速戦闘を行っている剣崎とエクトプラズム先生、安定性と言う意味ではずば抜けている身体能力強化。故に伸ばすべきなのは個性を使用した戦闘法と選択肢、故に剣崎の場合は戦闘スタイルの向上などをメインに据えた方向性で訓練などを行っていく。

 

「(一撃一撃ガ相当重イナ、矢張リシンプルナ個性故ノ強靭サガ滲ミ出テイルナ)」

 

エクトプラズムは冷静に剣崎の強さを分析しながら上手く一撃一撃を受け流しながら、組み手を行っている。個性の身体能力強化故か、身体の軸も全くブレない重い一撃などが目立っておりかなり質のいい近接戦闘術を持っている事が把握出来る。このまま成長を順調に積んでいくのであれば、ヒーローの中でも指折りのインファイターになる事は間違いないだろう。

 

「ダガ、マダ粗サガアルナ!!」

 

剣崎は攻撃の繋ぎ方が何処かぎこちなさが残っており、エクトプラズムはその隙を突いて背後からの攻撃を仕掛けようとする。しかし、剣崎はそれを読んでいたのかのように素早く回転しながら上段回し蹴りを繰り出してエクトプラズムの腹部へと捉えて、壁へと叩きつけた。

 

「ホウ……成程、敢テ隙ヲ晒ス事デ相手ノ行動ヲ制限シカウンターヲ仕掛ケタカ」

「はい。俺の個性ってやっぱり機動性とか攻撃力とかはあるんですけど、それでも捉えきれない相手もいると思うのでそれに対する攻撃も用意して置くべきかと思って」

「正解ダ、ソレコソ選択肢ヲ持ツトイウ事ノ解デアル。加エテアノ威力ハ必殺技トシテモ良イダロウ、カウンター系ノ必殺技トイウノモ多ク存在スル」

 

エクトプラズム曰く、衝撃を発する個性を持つヒーローは攻撃を仕掛けてきた際に同時に衝撃を発してダメージを殺しながらも相手へと衝撃を送り込むという事を行う。相手の力を逆に自分の力に変換する事で威力を倍増させる事を図るヒーローは大勢いるらしい。

 

「……カウンターマイティキックって事にします。俺ネーミングセンスないですし、マイティキックって響きも気に入ってますので」

「分カリ易サ、ソレハ思考時間ノ短縮ヘト直結シテイク。故ニ正シイ付ケ方ダ」

 

必殺技の名前すらも戦いにおいて思考の時間に直結して行く、思っていた以上に奥深い物だと思わず感心してしまう。その日はそのままカウンターマイティキックの訓練に時間を当てて、精度を上げて行く事とした。徹底的にカウンターの練習と機動戦重視の戦いに織り交ぜる為の訓練などを繰り返していった結果、コスチュームの変更を検討する必要が上がってきた。

 

「剣崎ちゃん、如何だった?」

「ああ梅雨ちゃん。いい感じの必殺技が出来たんだけど、ちょっとコスチュームがあれかなって思ったよ」

「それじゃあ一緒に開発工房に行きましょう。私もちょっと相談したい事があるの」

 

その日の訓練が終わった時、梅雨ちゃんと共にコスチュームの変更などの相談をする為に開発工房へと向かっていく。その途中で飯田と麗日と合流して共に工房へと向かう事となった、飯田は脚部のラジエーターの改良、麗日は機動面を強化する為の相談をするらしい。

 

「梅雨ちゃんはどんな相談するん?」

「私はコスチュームの脚の部分の相談ね、私には個性で跳躍力があるからそれを増強して攻撃と機動力を上げたいの」

「成程。梅雨ちゃん君の個性が更に増強されれば、それは機動面と攻撃面で素晴らしい事になるな!!所で剣崎君は一体どんな相談を?」

「俺はコスチュームの取り回しやすさの相談。俺のは基本マッスルスーツみたいな役割何だけどさ、そのせいかちょっと運動性に難があるんだ。直線的な動きには相当強いんだけど、曲線的な動きが取り難いって言うの?」

「成程!!スピードが出すぎてカーブが曲がれないのだな!!」

「そういう感じ」

 

様々な環境に適応出来るようになっているマッスルスーツでもあるコスチューム、身体能力強化を更に伸ばすように作られているがその強化が逆に細やかな動きを阻害してしまっている結果となっているのでその相談をするつもりとの事。そして間も無く工房へと着こうとした時、出久が工房の扉の前に立っていたので麗日が声を掛けると出久は此方を向くがその直後―――大きな爆発が扉の内側から起きて、扉ごと出久を吹き飛ばしてしまった。

 

『――ーええええええっっっ!!!??』

 

驚愕する中、爆煙の中からパワーショベルのショベル部分を模したような物を頭に被っているパワーローダー先生が現れながら煙の中にいると思われる誰かに向けて何か言っている。慌てて其処へと駆けつけるとまるで出久を押し倒すかのように女子が出久の上に乗っていた。

 

「フフフフッ……失敗は成功の母ですよパワーローダー先生!」

「否定はしないけど、やるならまず一言言ってから返答するまで待てよお前」

「おや如何やら誰かを下敷きにしてしまったようですね、これはすいません」

 

爆発を引き起こしたのはサポート科に所属している生徒である発目 明という女子でどうやらこの工房に入り浸っている生徒らしい。そんな彼女をするかのようにパワーローダー先生にコスチューム改良の件だろうと導かれて中へと入って行くと、そこで説明を改良に付いての説明を聞くのであった。

 

「っつう訳、まあ簡単な改良ならここで出来るから直ぐに仕上げられる。大きな改良だと他に依頼する形になるから少し待って貰うって事は了解しといてくれな。分かったかい?」

「はい、説明有難うございます!!」

「くけけっやっぱり礼儀が良くて理解がいい生徒は良いね、そこの奴も見習って欲しいもんだよ」

 

と視線をずらすとそこでは提出したコスチュームの説明書を凄い勢いで速読している発目がいた。

 

「そう言えば出久は何をお願いしに来たんだ?」

「僕はパンチとかが多いからさ、その負担を軽減するサポーターとかお願い出来ないかなって思って」

「成程ね、緑谷君はパンチャーな訳ね。そう言う事なら結構簡単だからすぐにでも出来るさ、それとパンチメインなら腕に付加装備を付ける事も考えた方がいいかもな」

「付加、装備ですか?」

 

付加装備といわれてもピンと来ないのか首を傾げる出久にパワーローダーは初々しいものを見るような目でよしよしと言いながら説明する。

 

「付加装備っていうのはまあその名通りさ、何かを付加する事を目的とした装備だ。例えば高熱を発するグローブ、これはパンチに高熱を付加するというのが目的だな」

「成程……ただ腕の動きの負荷を抑えるだけが装備じゃないって事か……」

「そういう事だ。何かを腕から飛ばす個性なら、その飛距離とか回転を加える為の装備とかもだな」

「そういう事でしたらとっておきのベイビーちゃんがありますよ!!」

「うわっ!!?」

 

と何時の間にか出久の腕に発目は何やらメタリックな籠手を勝手に装着していた、全く気が付かなかった。

 

「パンチを繰り出す際に腕部のブースターが起動してパンチのスピードを飛躍的に上昇させるベイビー!!スピードが上がれば破壊力も倍増しますはい!!」

「い、いやあの取り敢えず僕はサポーターが……」

「それならとっておきのベイビーがありますよはい!!」

 

そう言って次なる発明を装着させられる出久、そんな彼を哀れに思いつつも剣崎は勝手にパワーローダー先生に相談を持ち掛ける。

 

「マッスルスーツ故の悩みって奴か、そういう奴は多いな」

「はい。だから動きやすく、小回りが利きやすくなればいいんですけど」

「ふぅん……君のコスチュームは一旦BOARDの預かりになってるのか、それなら一旦そっちに連絡する事になるから少し時間掛かるけど構わないか?」

「はい大丈夫ですって飯田ぁぁぁぁッッ!!!?」

 

と剣崎が了承を返すと凄まじい噴射音がしているのでそちらを見ると、そこには腕に付けられたブースターで天井に身体を押し付けられていると言うとんでもない状況になっている飯田の姿があった。どうやらラジエーターの改良をしたいと答えた事で発目にブースターを付けられて起動させられてあんな事に……。

 

「お、俺の個性は足なのだが……」

「でも私思うんですよ。足を冷却したいなら別の場所で加速、即ち腕で走れば良いと!!」

「いや何を言っているんだ君は!!?」

「でもそれ、普通に良い考えじゃないか?」

 

と思わず言ってしまった剣崎に注目が集まった。

 

「飯田の相談っていうのはレシプロバーストで起こるエンストを軽減する事だろ?それだったら別の場所でスピードを出せるようにするって発想自体は悪くないと思うけど」

「おおっ話が分かりますね黒いコスチュームのヒーロー科の人!!」

「剣崎 初だよ」

「それじゃあ剣さんで良いですね!!貴方は実に話が分かる人と見ました!!」

「初めてだぞその略し方……梅雨ちゃん、お願い、睨まないで」

「分かってるわよ剣崎ちゃん」

 

と発目は純粋に発想は悪くないと言う部分に対して喜んでいるのだと思う……だから大丈夫だと梅雨ちゃんに伝えるが、どうにも視線が痛い気がする……。

 

「だが、具体的にはどうやって加速するんだ?」

「いや腕にブースターはあれだけどさ、アニメのロボみたいに翼みたいにしてブースター付けるのは悪くないんじゃないかなって」

「おおっ成程!!確かに背中ならば空中での機動力の確保にも繋がる!!!」

 

と飯田のコスチューム改良に新しく案を提示したところで出久から飯田と共に足の使い方を教えて欲しいと言う願いが飛んできた。どうやら先程の発目の足が駄目なら腕で走ればいい、と言う言葉が何かのヒントになったらしい。

 

この後、パワーローダー先生に様々な相談や発目のとんでも発明が飛び出したりと様々な事が起きたりしたが無事に改良案を提示する事は無事に終了した。そして数日後に剣崎のコスチュームはBOARDから返ってきて小回りがかなり利くようになっている上に、職場体験で取られた自分のデータを参考にして作られた新コスチュームは今まで以上にパワーが出るようにもなっていた。その姿も―――全身に走り金のラインがより明確に、全身に細かく走るようになっていた。

 

「これが俺の新しいコスチューム……良しっ……!!!」

 

それを纏った剣崎は今まで以上に訓練に励みながら、更なる必殺技開発に勤しむのであった。


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