救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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完全体コスチューム、煽り耐性?

剣崎が新たなコスチュームでカウンターマイティキックでとんでもない威力を発揮した翌日、その日も仮免試験へと向けられた訓練が続けられている中で剣崎は遅れて体育館γへと姿を現した。一応相澤の許可を取っているので遅刻としてのカウントは取られないので問題はないのだが、脇には今までなかったメットのような物を抱えていた。

 

「やぁ剣崎少年!!おっそれが件の新コスチュームメットかな!?」

「はいそうです。なんでも元々は一緒に送る手筈だったらしいんですけど、なんか不具合があって一緒に送れなかったらしいです。今日からこのメットも装備してエース・ブレイドです」

「そうか、では早速装備してみたまえ!!」

 

オールマイトがやって来た剣崎に対してメットを被ってみたまえと促すので、剣崎は脇に抱えていたそれを被った。被った途端に内部に仕込まれていた様々な情報が一気に頭に飛び込んでくる、それと同時に内部が光に満ち始めて行きモニター式の視界が広がって行ったが、それらを目で捉えるのではなく視界に直接投影されるように変化して行く。網膜に直接様々な情報が映し出されているかのような物に、驚くが次第にそれにすらなれて行く自分がそこにあった。まるで身体の一部だったかのようにメットが馴染んでいくのを感じる。

 

「あれが剣崎のコスチュームの完成系、って奴ですかね」

「だろうね。しかしこうしてみると本当に猛々しいな!」

「見方を変えたらヴィランっぽい感じもしますけどね」

 

剣崎が装着したコスチュームの全体像とはかなりヴィランのような風貌となっている。漆黒の全身に浮き上がっている黄金のラインは血管のように広がっており、肩や腕から伸びている棘へと力を送っているように見える。故か酷く強靭な印象を受ける、そして頭部を覆うメット。それは何処か仮面ライダーを意識しているのか、かなり酷似しているデザインとなっている。鋭角に伸びる四本角、鋭い牙を持つ口部……そして何より徐々に赤い輝きを増していく大きな複眼のような瞳が仮面ライダーに酷似する。

 

「―――よし、完全起動完了です。エース・ブレイド完全体、此処に参上です!」

「うむっ中々カッコ良いぞ剣崎少年!!」

「見た目は置いておくとして……剣崎、お前は力加減も習得しておけよ。昨日のアレは相当だぞ、オールマイトには及ばないだろうが」

「ハハハハハッそう簡単には追いつかれないぞぉ~!!」

「はい、分かりました」

 

と返事をしながら剣崎はいち早く蹴り技の訓練を積んでいる出久の元へと走り出していく、網膜に映り込んでいる様々な情報にも目を通しながらも向かって行くと出久は"フルカウル"を発動させながら縦横無尽に跳び回りながら不安定な姿勢からの蹴りを試しては、何か違うと唸ったりこれだと閃きを繰り返したりしていた。

 

「よぉ出久、調子良さそうじゃないか」

「あっ剣崎君―――ってうわっ凄い変わったね!!?顔が隠れるだけで凄い変わったように見えるよ!!?」

「あっやっぱり?」

「うん。僕の中だと剣崎君って何時も笑顔ってイメージだから」

 

それには恐らくクラスの皆が同意見だろう、オールマイトと同じように普段から笑みを浮かべ続けて周囲を明るくする剣崎。そんな彼は戦闘時でも顔を見せて、笑顔を浮かべて周囲を安心させるという印象が強く、顔が隠れるだけでかなり印象が変わってくる。

 

「でもこのメット相当凄いぞ、俺のパワーメーターだけじゃなくてレーダー機能まで内蔵されてるからかなり便利。しかも網膜投影式」

「それ相当凄くない!?」

「多分相当凄い、俺そっち疎いから分からないけど」

 

という事で剣崎は早速このメットの性能を試す為に個性を発動させて見る、すると投影されているメーターが満ち始めて行き、今現在が最大上限の何%なのかというのが表示されている。身体能力強化を行う個性、それは身体にどの程度力を込めているというのに近いので%にするのが非常に難しい筈。それをやってしまうのだからやっぱり橘所長の研究所は凄まじいという事を改めて実感するのであった。

 

「ハァッ!!」

 

試しという事で自分の頭の中では大体20%のつもりでパンチを放ってみるとメーターには24%となっていた。どうやらかなり正確に測る事が可能らしい、そして4%ほど自分が思っているより強かったらしい。4%程度なら誤差と思うべきなのか、と考えているとエクトプラズムが分身を介して話しかけてくる。

 

「フム、中々良キ姿ヘトナッタデハナイカ。凄マジキ戦士、トイウオーラガ出テイルゾ。ソレデ今ハ何ヲシテイル?」

「有難う御座います。今はメットを使ってパワーを計ってたんですけど、自分が思ってたより誤差が出ちゃって。4%ぐらいなんですけど、それでも直すように努力すべきなのかそれともこの位なら大丈夫と思うべきなのかって」

「成程。ソウデアレバ最初カラアル程度ノ出力設定ヲ行イ、ソレニ準ジタ調整ヲスレバイイ。ソウダナ、25、50、75、100ト分ケ、最初ハソレニ慣レ安定シテソレラヲ出ス事ヲ目標トスレバヨイ」

「そっか最初から基準を作っちゃえば良かったのか……」

「基準、ソレハ威力調整ノ簡単ナマスター方法ノ一ツ。ダガイキナリ設定ニ準ジタ出力ハ難シイ、最初ハ誤差10%以内ヲ目標トセヨ」

「はい!」

 

やはり経験は圧倒的に上な先生の助言に助けられていく剣崎、それを頭に置きながら出力調整の特訓を行っていく。同時に出久のシュートスタイルの成熟の為に組み手などを行いながら出力調整のコツに付いて出久に聞いたりしながら過ごしていると、B組を引き連れたブラドキングがやってきて交代するように相澤に言うのであった。

 

「それと一つ頼みを聞いて貰っていいか、うちのクラスの一人とお前のクラスの誰かと模擬戦をして貰いたい」

「その程度なら構わない、なら剣崎を出そう。剣崎、少しこっちに来い」

 

勝手に決められてしまったが、剣崎はB組の生徒相手に模擬戦を行う事となったので会った。そんな剣崎が相手をする事になったのは物間 寧人という生徒であった。剣崎は取り敢えずメットを外しながら挨拶をする事にした。

 

「剣崎 初だ、宜しくな」

「あれあれっそんなメットを付けてるから変な顔してるのを隠してると思ってたよ。ああごめんごめん、そもそもそんなヴィランっぽいメットしているのってヒーローとして如何なのかって思っちゃってたよ!!」

 

手を差し伸べる剣崎へ開口一番に嫌味をぶつけてくる物間、此方を明らかに馬鹿にしつつ煽り目的でやっているように見える。思わず梅雨ちゃんが苛立ちを浮かべるが肝心のそれをぶつけられている剣崎は全く気にしていないようであった。

 

「そんなにヴィランっぽいかこれ?俺は気に入ってるんだけどな……まあいいや、人の感性によって受け取り方なんて変わってきちゃうもんな。世の中にはヴィランっぽいヒーローランキングってのもあるし、俺は別にいいかな。見た目で怖がられても活動でそれを覆してるギャングオルカって素晴らしいヒーローだっているもんな。そういうヒーローを目指すのも大事って事を言いたいんだろ?」

 

そんな風に自分の嫌味に対して全く怒りもせず前向きに意見として取り入れている剣崎に、思わず物間は凍りついた。どんな相手だろうが少しでも態度に不愉快そうにするはずなのに、目の前の男はそんなそぶりすら見せないのに驚いている。

 

「まあいいや、兎に角お互い頑張ろうぜ」

 

そんな事を言いながら笑顔を浮かべた剣崎はメットを被り直しながらセメントスが作ったステージへと上がって行く。物間もそれに遅れながらもステージの上ヘと上がっていくのであった。

 

「剣崎君、全然動じてない……流石!!」

「剣崎ちゃんだもの、当たり前よね」

「アァン流石初ちゃん、煽り耐性極高ね!!」


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