救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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仮免前日、夜の一時。

「そういえば梅雨ちゃん、なんか最近はずっと剣崎君と一緒にいるよね」

「そうかしら、そんな感じする?」

「するする、出来る限り隣に居るって感じじゃん」

 

いよいよ仮免の前日の夜となった日、それぞれが明日に向けた準備を終えて後は明日を迎えるのみとなった時に女子達は女子会のような物を開いて明日は頑張ろうという事を話していた。が、そんな時に芦戸が梅雨ちゃんにそう言った。

 

「今日だって、遅くに帰ってきた剣崎を出迎えに行ってたじゃん」

「剣崎さんは新しいコスチュームでの力の調整が大変らしいので、居残りで特訓をしているらしいですものね」

「そうそう、でも梅雨ちゃんはそんな剣崎君を毎回笑顔で出迎えるんだよねっ♪」

 

葉隠も何処か乗ってきているのか口調が明るくなり始めている。本当は仮面ライダーとしての活動によって雄英を抜け出し、帰ってきた剣崎を出迎えているのだが周りからしたらそれはそれで一体なんでだろうと思い当たってしまう。そして徐々に何かを悟ったかのようにニヤついていく響香と芦戸、そして明らかに嬉しそうにしている葉隠と麗日、そして微笑ましそうにしている八百万。

 

「もしかして……二人って付き合ってたりするの!?」

「ゲロっちまいな梅雨ちゃん、早く自白した方がいいよ♪」

「それ、蛙の私に対してのギャグかしら?」

「いやそういう意図はないから」

「それよりも教えてよ梅雨ちゃん!!」

 

と周囲から期待の眼差しが飛んでくる、意外なのは八百万も興味津々と行った具合の様子である事である。お嬢様育ちの彼女にとっては同級生の恋愛事情というのは珍しかったり、興味が沸く物なのだろうか。梅雨ちゃんはこれは逃れるのは難しいのと否定したら今度は恐らく剣崎に聞きに行くんだろうな、と察してイチゴ牛乳を置きながら言うのであった。

 

「ええそうよっ。私と剣崎ちゃんは付き合ってるわよ」

『きゃあああっやっぱり!!』

「ほほうっ?」

「まあっそれはめでたい事ですわね♪」

 

テンションMAXと言った具合に喜びの声を上げる芦戸、葉隠、麗日、興味津々で根掘り葉掘り聞く気MAXな響香、純粋にめでたい事でお祝いすべきと思っている八百万と酷くバラバラな反応を示している。

 

「どっちっ!?どっちから告白したの!!?」

「梅雨ちゃんから!?それとも剣崎君から!!?」

「キスとかもうしたの!!?」

「これは全部聞かないといけませんなぁ!!」

「わ、私も宜しければお聞きしたいですわ……!!」

 

なんだかんだで興味全開な八百万に梅雨ちゃんは苦笑しながら、どこから話すべきかしらっと顎に指を当てながら考え込むのであった。

 

「告白、は私からね。それでその後にお互いにもう一回告白し合って付き合い始めたわ」

「何時から付き合ってたの!!?」

「林間合宿の前ぐらい、かしら」

「全然気付かなかったよっ!!?」

「デートとか、いやキスとかした訳!?」

「耳郎ちゃん其処まで聞いちゃうの?お家デートはしたわよ」

「彼氏としての剣崎君ってどんな感じなの!!?」

「とっても優しいわよ」

「そ、その結婚とかも考えてらっしゃいますの!?」

『ヤオモモ流石にそれは聞き過ぎ!?』

「え、えええっいけませんでしたの!?お付き合いというのは結婚を前提する物だとばかり……」

 

ここでも炸裂する八百万のお嬢様であるが故の認識の差の天然ボケ。しかしそれに対して梅雨ちゃんは少し笑うとそのまま残っていたイチゴ牛乳を飲み切ると、ソファから立ち上がるのであった。

 

「さあそろそろ寝ましょう、明日はいよいよ仮免試験なんだから」

「あっちょっと待ってよ梅雨ちゃん今の笑いって何どういう事!!?」

「もしかして、結婚とかも視野に入れちゃってるって事!?」

「待て待て待て一番気になる所なんだから逃がさないよ!!」

「蛙吹さんお待ちくださいっ是非お聞かせください!!」

「フフフッ秘密っよ♪」

 

 

「へっ…ヘっ……ヘッキショオイ!!!」

「剣崎君風邪か?体調管理は気を付けないと、明日は仮免試験なんだから」

「いやなんか急に鼻がむずむずして……」

 

一方の剣崎の部屋では出久の姿があった。新たなシュートスタイルの確立をした出久は頻繁に蹴りを主軸、又は切り札にしている飯田と剣崎の元を訪れてはコツなどを聞いて自分のスタイルの成熟に勤めている。今は剣崎の部屋で腰を上手く使う為にテニスラケットを使って、腰を上手く回す練習中である。

 

「それにしても、テニスラケットで蹴り技の練習が出来るなんて思わなかったよ」

「テニスは腕じゃなくて腰を回して打つからな、腰を回す練習にはもって来いって訳だ」

「剣崎君ってテニスやってたの?」

「昔、ソフトテニス部の助っ人やっててな」

 

明日に備えて蹴りの最終確認、出久は飯田の必殺技であるレシプロバーストをイメージしているらしいがどうにも納得出来ず、その差を腰の使い方だと断定している。そこで剣崎に色々な事を習っている最中なのである。

 

「そういえばさ剣崎君、最近随分蛙吹さんと親しいって感じするけど何かあったの?」

「あったと言うかなんと言うか……仮面ライダーである事が林間合宿前にバレてな」

「えええええっっっ!!!??バレちゃったの!!?えっでも如何して!!?」

「……さっ叫び声」

 

顔を伏せながら恥ずかしそうに答える剣崎に出久は思わずポカンっとしてしまった、一体どんな理由でバレたのかと思っていたら叫び声でバレたと剣崎は言うのである。そう言えばと林間合宿で襲いかかってきた相手を仮面ライダーである剣崎が倒したとき、確かに叫び声が剣崎の物だったと思い出した。

 

「そ、それってウェェエエイって奴……?」

「……うんそれ」

「うわぁっ……」

「止めろ俺だって恥ずかしいと思ってんだから!!!」

「まあうんえっと……今度、ご飯奢ろうか?」

「止めろ!!そんな残念な者を哀れむような目で俺を見るなぁぁぁぁ!!!!!」

 

本当に仮免前の夜がこんなのでいいのだろうか。


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