救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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西のイナサ、超激励。

遂にこの日がやって来た、この日の為に行われてきた林間合宿での地獄にも引けを取らない個性上昇特訓の数々に雄英にて開発してきた必殺技、それらを総動員してこの日行われる仮免試験に合格する。雄英高校1年A組は試験会場となる国立多古場競技場へとたどり着いた。

 

「うぅぅっ……緊張してきたよウチ……」

「大丈夫よ耳郎ちゃん、この日の為にやって来た努力でやれるだけの事をすればいいんだからね」

「試験って何やるんだぁ……仮免取れっかなぁ……」

「峰田、取れるかじゃない。取って来る、気持ちで負けるな」

「う、うっす!!やってくるぜ相澤先生!!」

 

と緊張している者もいるが深呼吸などをして冷静さを取り戻していく、そしてそれらに対して相澤が激励をかねた厳しい言葉を掛ける。

 

「この仮免は厳しい、だがこれに合格すればお前ら卵は晴れてひよっ子、つまりセミプロへと至る。お前ら、ヒーローになりたくて雄英に来てんだ。その為の第一歩だ、気を引き締めて踏み出せ」

『はいっ!!』

「おし皆、それじゃあいっちょ景気付けに何時もの奴やろうぜ!!」

「おおいいなっ!!」

『Plus...Ultra!!』「ULTRA!!!」

 

全員が雄英の校訓でもある言葉で景気を付けようとした時、どこから聞いた事のないような声が混ざってくる。思わず全員が振り向いてみると其処には学生帽を被っている大柄で何処か顔が濃い男が、大きく笑いながら円陣へと混ざっていた。そんな彼を諌めるかのように同じ帽子を被った男が声を掛ける。

 

「勝手に他所様の円陣に加わるのは余り良くないよ、イナサ」

「ああっしまったっ!!失礼、どうも大変、失礼、致しましたぁぁぁぁ!!!」

 

大柄な男は力強く姿勢を正すと凄まじい勢いのまま、体を大きく曲げながら地面へと頭をぶつけながら謝罪する。かなりいい音が鳴っている辺り、相当痛いであろう筈なのに顔は全く変わらずに笑っているように見えている。

 

「一度言ってみたかったンッス!!プルスウルトラ!!!自分雄英高校大好きっス!!!雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス、よろしくお願いします!!!」

「こちらこそ、宜しくお願いします。剣崎 初です、本日は宜しくお願いします」

「おおおっこれはご丁寧にどうもっす!!!体育祭優勝者とお会い出来て本当に光栄の極みっす!!!自分は夜嵐 イナサっていうっす!!!どうぞお見知りおきを!!!!」

 

皆が思わず空気に飲まれてしまっている中で唯一剣崎はマイペースを保ったまま挨拶と握手を交わす、何やら飯田のような真面目さを感じるが、それ以上に何やら漢のような凄まじい雰囲気を感じる。飯田と切島を混ぜて2倍したような男だ。挨拶を終えるとこれで失礼するといって、再び地面に頭をぶつけてそのまま一緒にきたと思われる生徒と一緒に離れていくのであった。

 

「剣崎ちゃん、さっきのイナサって人の制服……」

「ああっ士傑高校の奴だ」

 

日本においてヒーロー科の最高峰とも言われる学校が存在する。それが東の雄英、西の士傑と呼ばれる二つの高校。雄英に匹敵する程の超難関校の士傑高校、今回その生徒が仮免試験に受験するという事実に今年の試験はきっと難問だと理解する。そしてあの夜嵐 イナサという男、元々は雄英を推薦入試しトップの成績で合格したのにも関わらずそれを蹴っていると相澤が語る。もしかしたら自分達と共に勉強していたかもしれない超エリートで轟よりも優秀である男……。それに思わず全員が喉を鳴らしてしまう。そんな時である。

 

「その場で整列ぅぅぅッッ!!!!」

 

と周囲に木霊するほどの凄まじい馬鹿でかい声が周囲に広がっていく、それに仮免を受ける面々が驚いている中でそれに思わず反応してしまった者が二人ほど居た。それは―――

 

「「サーイエッサー!!!!」」

「デ、デク君!!?」

「け、剣崎ちゃん?」

 

その場にて見事なまでにきっちりと揃って並んで立っている出久と剣崎の姿であった。思わず身体が反応してしまったのだが、この声とこの言い方……ジリジリと近寄ってくる独特の威圧感。雄英メンバーの前へと現れたのは以前林間合宿にて面倒を見てくれたプロヒーローチーム『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ』の一人で、剣崎と出久の指導をした虎であった。

 

「と、虎さん!?」

「お久しぶりですっでも如何してここに!?」

「我は丁度休みと試験日が重なっていたので見に来たのだ。我の元で訓練に励み、そして成長したお前達を今日は見せて貰うつもりだ。情けない姿は認めんぞ」

「分かりました、見ててください!!」

「はい頑張ります!!」

 

と力強く返事をする二人に一瞬虎はにやりと笑いながら再び声を張り上げた。が虎は二人に痛烈なビンタを炸裂させた。

 

「なんだその軟弱な返事は!!我の問いにはイエッサーで応えろと教え込んだ筈だ、分かっておるのかっ!!!」

「「申し訳ありません、サー!!」」

 

それを受けた二人はハッとしながらも直ぐに立ち上がって謝罪して、真っ直ぐと虎を見つめなおす。

 

「良いかよく聞くがいい!!!今日この時を持って貴様らはプロヒーローへの道を正に歩み始める!!」

「「サーイエッサー!!!」」

「新たな扉を開き夢へ近づくか、己の未熟を知り更なる地獄を見るかは貴様らに掛かっている、どうだ楽しいか!!!」

「「サーイエッサー!!!」」

 

目の前でいきなり始まった海兵隊がやるかのような空間にフリーズする面々、しかし虎はそんな事お構いなしに続ける。

 

「では最後の言葉だ、我の弟子として―――見事仮免を取得して見せろ!!!」

「「サーイエッサー!!!」」

 

それが終わると虎は騒がせてすまなかったなと謝罪してから、そのまま試験会場へと歩き出して行った。剣崎と出久は虎によって気合を注入して貰ったからかかなり気合に溢れているが、周囲は合宿中何があったんだ……と思ってしまうのであった。


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