教室へと入ってきた京水曰く「自立稼動移動式新型寝袋」の正体はヒーロー科1-Aの担任を務める事になっている「相澤 消太」だった。そして相澤はクラスの全員を合理性に欠くと言いながら、体操着に着替えてグラウンドへと出ろと指示を行った。質問をしたいと言った飯田の言葉はあっさりと却下された、通常の教員とは違う独特すぎる教師……一同は何処か不安を感じつつもその指示に従ってグラウンドへと出た。そこで待っていたのは―――
『個性把握テスト』
であった。
「入学式やガイダンスはないんですか!?」
いきなりの宣告に思い描いていた高校ライフとはかけ離れている為に思わず聞かれる、がそれにも相澤はいとも簡単にんな物はないと答える。
「ヒーローに成るんならそんな悠長な物をやってる
そんな事を言いながら手に持ったソフトボールを不良そうな生徒、爆豪へと投げ渡すとそれを円から投げるように指示をする。
「中学の頃からやってるだろ、体力テスト。ああいうのは基本的に「個性」は禁止だ、だが此処では個性を使って存分にやって良い。但し円からは出るなよ、あくまでそれがソフトボール投げの測定ルールだから」
個性の使用禁止、それは当たり前のもの。個性を使えばそれは体力ではないものになるとされているがそれは文部科学省のタイマンだと、だが此処ではその禁止を破っても良い。というよりも個性使用を前提にした体力テストを行われる。
「んじゃまあ―――死ねぇッ!!!!!」
―――お前は本当に「ヒーロー」目指す気あるのか、と言いたくなるような掛け声と共に投げられるボール。それには同時に彼の手から起きた爆発の爆風が乗せられて通常の投擲ではありえない勢いが加算されて吹き飛んで行く、爆豪の個性が名前が示すかのような「爆破」。その爆破の爆風を利用してソフトボールが投げられる、一瞬にしてボールは見えなくなっていくが落ちた瞬間に相澤は持っていた端末を見せる。そこには705.2mと表示されている。
「あれがあいつの個性か……なんつぅか……見た目と言葉遣いが相まって……」
「荒々しいわねぇ、まるでヴィラァアンだわ」
「ア"ア"ンてめぇ今何つったぁ!!?」
思わず言ってしまった言葉が気に入らないのか、此方に近づきながら威圧してくるような視線を向けてくる爆豪。だが剣崎も京水も全く恐怖も何も感じない、目の前にいるのは唯の騒いでいる不良生徒にしか映っていない。
「声が大きいわねぇえん、貴方もうちょっとちゃんとしないと世間から酷いバッシング受けて人気なくすわよ?「ヒーロー」も結局は支持や人気があってこそなんだから」
「俺もそう思うな。君はただのヴィラン崩れにしか見えないな、後威嚇すれば誰も彼も従うかと思ったら大間違いだ」
「んだとぉっっっ……!!!」
「はいそこ、静かにしろ。まあ剣崎と泉の意見は解る、ぶっちゃけ俺もうるさいと思ってた」
「チッ……!!」
舌打ちをしながらそっぽを向く爆豪を見ながらこうはなりたくはないな、と心の何処かで思う。そんな中、相澤はこのテストでトータル最下位だった者は除籍処分にすると言い放つ。それによってクラス内の緊張感が一気に加速する。一瞬でもあった自分が使いたくて堪らなかった個性を100%使っていいと喜びが吹き飛ぶ程のインパクトがそこにある。誰もがそれに異議申し立てをする、だがそれを一刀両断にされる。
「理不尽無茶振り、そういうピンチを打ち破り覆す者が「ヒーロー」。これから三年間、苦難が与え続けられるのが君達のこれからだ。"
「ヒーロー」を目指す者達に投げかけられる最初の試練、個性把握テストが、始まった。
第一種目:50メートル走
「次」
淡々と記録を言いながら記録をとっていく相澤の宣告に一喜一憂が起こる中で、間もなく剣崎の番が来ようとしていた。既に飯田と京水の順番は終了しており、飯田は自らの個性を生かしたスピードを見せ付けて3秒04というクラス最高記録を叩き出す。対する京水は―――
「い、泉君君の個性は一体―――!?」
「ァアアン、やっぱりこの姿だと気分が良いわぁ……今までの自分から変身して、本当の自分を出せている気がしてぇ……」
飯田が驚愕するほどの変化―――京水の姿は大きく変わっていた。全身が黄金にも似ている黄色に変質しながらも弛んでいるかのような肌に両腕は鞭のように伸び、肩からは角のような物が突き抜けている。彼が変化した時、クラス中が思わず言葉を失うほどの超変化だった。そしてそんな彼がスタート同時に脚を伸ばした時には驚きの声が溢れた。伸ばされた脚を一気に縮める事で距離を一気に移動する京水が叩き出したのは4秒02という記録だった。
「京水ちゃんの個性って……凄い面白いな」
「アァン初ちゃんってば嬉しいぃわぁん♪ワタシの個性は「幻想」なのよ♪自分の身体を幻想的、狂気的に変えつつもその身体で色んな事が出来るの♪」
「……その個性ってマジで凄くね?」
「いやんっ照れちゃうわ、もっと言って!!」
そんなこんなをやっていると剣崎の手番が回ってきた、飯田と京水からのエールを受けてレーンに入ると妙に視線を感じる。どうやら先程のやり取りで爆豪から狙いを定められてしまったようで、凄い視線を感じる。だがそんなものは無視する、気にしなくていい。今は自分の力を示す場なのだから―――。
「スタート」
『〈
「―――『
スタートと同時に能力をラウズ、一気に時間が凝縮されていく。外の世界と自分の体内での時間の感覚が一気に矛盾する感覚、そのまま爆発的な脚力で地面を吹き飛ばさん勢いを蹴りつけて一気に加速しながら全力疾走を行う。灰色のように染まった世界を一気に駆け抜けていく、まるでアフターバーナーを点火したかのような勢いのスタートダッシュを決めた剣崎。そしてゴールを超えた所で力を解除するが余りに勢いを付けすぎたせいか、止まるのに4mほど使ってしまった。
「剣崎 初……2秒64」
「な、なんて速さ……!!!」
「いやぁああああん流石ワタシの初ちゃん~!!アァァアアンしゅごいいいいぃぃ!!!」
最高記録を更新するほどの力を見せ付ける剣崎にクラス中から注目が入る、その注目には様々な感情が込められている。羨望、興奮、嫉妬……だが、それらを気にも留めない剣崎はスタート地点に戻るとある少年が目に入る、それは以前一度だけあった事がある緑色の髪をした……少年。
「えっと確か……緑谷少年って呼ばれた……駅の場所を教えてくれた」
「う、うん。ま、また会えたね」
「ああ。君も合格したんだな、改めて剣崎 初だ」
「ぼ、僕は緑谷、緑谷 出久だよ」
握手をしながら剣崎は何処か不安げにしている彼の肩を優しく叩きながら言う。
「大丈夫だよ。君だって合格したんだ、ならその時と同じように今やれる事をやれる範囲でやれば良いんだ。そうすれば―――君の100%が出るさ」
「―――ッ!!剣崎くん……うん、僕頑張る!!」
「おう!」
そんなエールを送りそれを受け取るやり取り―――これが、とある事変を起こす始まりの二人とは、今は誰も知らなかった。