救いのヒーローになりたい俺の約束   作:魔女っ子アルト姫

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語られていく真実と、父の事。

「アンデッド……?それはゾンビなどの類ではないのか?」

「不死の生命体であるから死なない、いや死なないから永遠の死を得ていると言う意味では同じになるでしょうが厳密には違う。ニュアンス的にはイモータル、そう言った方が正しいかもしれない」

「地球に存在している生命の祖って言ってましたけど……」

「そうだ、アンデッドとは今地球上で繁栄している生物達の祖とも言える存在だ」

 

橘の語る剣崎がこれまで二度戦ってきた怪物の正体、アンデッドについての事。あんな怪物が生物の祖、到底信じられない。オールマイトも驚きを隠せずに言葉を失っているが、次なる話を聞こうと橘に続きを促す。

 

「橘君、ではこのアンデッド達の目的とは何なのだ?何故そんな物が活動をする?」

「バトルファイト、それに勝利することがアンデッド達の目的」

「バトル、ファイト……?」

 

バトルファイト、それは1万年に一度行われる戦いで53種のアンデッドが覇権をかけて戦う。勝者は続く1万年間、地球の支配者となるという生命の繁栄を争う戦い。嘗てのバトルファイトでは人間の祖と言われているヒューマンアンデッドが勝者となった事で人類は地球の覇者、万物の霊長となった。 今人類がこの地球上にいるのもバトルファイトで人間の祖が勝利したからこそ。

 

「そのような事が……で、ではそのアンデッドが活動を開始したと言う事は再びバトルファイトが行われようとしているという事なのか!!?」

「その可能性は否定できない、いや―――既にバトルファイトは始まっていて続き続けている」

「つ、続いてる!!?」

 

そういうと橘は懐から写真を一枚出してそれをオールマイトと剣崎へと見せる。そこは嘗て剣崎が見せられたのと同じ物で自分の父親である剣崎 一真と橘が映っている写真。他にも少しだけ笑っている青年と元気な笑みを見せている男もいた。他にも多くの人が映っているが、剣崎には父の姿に釘付けになってしまう。

 

「この写真は……橘君?」

「其処に映っているのは過去の私、嘗て私はBOARDの職員として所属しながら封印されていたアンデットと戦う戦士として活動していた。君のお父さんもその一人だ」

「なんとっ!!?」

「と、父さんが!!?」

 

橘は一度険しい顔を作ってから覚悟を決めたかのようにして、口を開いた。

 

「元々バトルファイトに参加していたアンデッド達は過去の戦いで封印されていた。それが解かれてしまいアンデッド達を再び封印する為に戦う戦士―――それがBOARDによって開発されたライダーシステム、そして仮面ライダーの正体」

「で、では君も……仮面ライダーなのか……!?」

「ええっオールマイト。剣崎君には以前見せたよな、私は仮面ライダーギャレンとしてアンデットと戦っていた」

 

ギャレン。それが橘の仮面ライダーとしての名前、それだけではなく仮面ライダーはアンデットと戦う為の戦士であった事やBOARDによって開発された物であった事など一気に情報が出てきて剣崎は混乱していた。オールマイトも動揺を隠しきれずに、汗を流している。そして剣崎は自分のこの力、ブレイドとしての力も―――アンデットと戦う為の物。

 

「それじゃあブレイドも……」

「無論、アンデットと戦うための物だ」

「驚いたな……では仮面ライダーと言うのは人間の科学で生み出された存在という事なのか?」

「ええ。ライダーシステムにはカテゴリーAと言われているアンデットの力を利用していますが、科学で生み出されたという意味にもなるでしょうね」

 

仮面ライダーは全員4人いた。ブレイド、ギャレン、カリス、レンゲル、この4人の仮面ライダーは人々をアンデットの脅威から守る為にアンデットと日夜戦い続けていた。そして今BOARDにいるグレイブなどはライダーシステムを発展させて開発したアーマーと彼らが持っている個性を掛け合わせて完成したものだと言うらしい。

 

「あ、あの橘さん。仮面ライダーがアンデッドと戦う存在だってのも分かりました、それなら俺がアンデットと戦ってカードを投げたらそれに吸い込まれて言ってのも封印だってのも連鎖的に理解しました。でも、バトルファイトが続いてるってどういう事なんですか!?」

「そうだ、恐らく一番重要な部分だ。仮面ライダーと言うのもそのバトルファイトを終わらせる為に戦っていたのではないか?」

 

橘は思わず剣崎の頭の回転の速さなどに少し驚いたが直ぐに言葉を続けた、先程言ったまだ続いていると言うその意味を伝える為に。

 

「バトルファイトには特殊なアンデッドが一体参加している、それはジョーカーと言われている。こいつが勝利すると地球上の全ての生命がリセットされてしまう。だけど―――それを必死に食い止めて世界の平和を守った男が居る、それが先代ブレイド―――剣崎 一真だ」

「父さんがっ……!?」

「剣崎少年のお父さんが、世界を……!?」

 

知りもしなかった事実、父が世界の為に戦った事。そしてそのお陰で今の世界がある、そんな当然過ぎる事実に混乱するが橘は更に続ける。

 

「剣崎はジョーカーをも救おうとした」

「ジョーカーを……ってどういう事なんですか!?」

「ジョーカーは剣崎の親友であった男だったからだ、相川 始、彼をも救おうと剣崎は戦い続けている。そして今も世界があるという事は、剣崎は今も運命と戦い続けているんだ」

「それって、つまり―――」

「剣崎 一真は生きている」

 

その時、再び剣崎の中で止まっていた筈の時間が動き始めようとしていた。

 

「父さんが、生きてる……?」

「そう―――そして初君、君は同時に世界の運命を背負う者でもあるんだ」


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