あまつかぜ 作:天津k
?月 晴れ、風はぬるい。
前の戦闘から、私は大きな金属の首輪を付けられ、戦闘に参加させられるようになった。
この首輪は遠隔操作で起爆できる爆弾で、もしも私や姉妹達が逆らえば起爆すると教えられた。
こんなのを付けて戦闘したら誘爆した時が怖いが、そんなことすら考慮などしていないのだろか……いや、別に死んだところで代わりを用意するだけということか。
さて。
戦闘に関しては、私と同じように鈍い銀色の首輪を付けられた四人でのチームを組まされた。
秋月型の三番艦、涼月さん
暁型の二番艦、響さん
睦月型の九番艦、菊月さん
そして陽炎型の九番艦、である私、天津風。
皆一様にアザがあったり、血の跡が服についている。
私の服は支給されたばかりなのと色が色だから血の色は目立たないけど、それでもすぐ汚れるのだろう。
全員、あまりよく喋る方ではなかったようだが、話しかけてみればきちんと返してくれるし、色々と教えてくれる良い娘達だ。
今回の任務についてだが、まず私達『首輪付き』は、この鎮守府に六人ほどいるらしく、そのうちの四人が私達、そしてその首輪付きは解放海域と呼ばれる、敵を倒したことで人類のモノとなった海域の先、あの暗く赤い海へと繰り出し、燃料や弾薬が尽きるギリギリまで次の敵本隊等の調査を行うとのことだ。
?月 曇り、風はなんだか重い
調査任務は何日もかけて行うから、定期的に書くことは出来なくなりそう。
初めてのきちんとした任務は一応成功で終わったようだ。
不安はあったけど、出撃中は何もされないからむしろ鎮守府に居るよりも楽しかった。
何より一人きりではなく、同じ部隊の娘達で話すことが出来るのはとても気持ちの良い経験だった。
やはり、人との会話に飢えていたのだろう。
ただ、任務を遂げた事で陽炎と面会をすることを許されたのだが、彼女とのひと時がやはり一番心地好い。
ただ、いつにも増して陽炎の顔に疲れが色濃く出ていたのが心配だ。
?月 雨、嵐みたい
昨日は、若い憲兵に襲われた。抵抗してなんとか犯されるのは防いだけど、これからどうなるのか不安だ。
今まで夜は来なかったのに急に来たと思ったら両手の鎖を束ねて掴まれて服は無理やり取られた。
そしたら若い憲兵が何人か下卑た顔で入ってきて何をしようとしているのかが分かった。
怖くて暴れたけど二人がかりで押し倒されて手も足も拘束され、どうしようもないかと思ったけど、なんとか手を抑えてる憲兵の股ぐらが顔の近くにあったから噛み付いてズボンの上から噛みちぎってから自由になった手で足を抑えているやつを殴りつけると、激昴していつもの様にリンチにしてきた。
大人しくしないと首輪を爆破すると言われたけど、アイツらに好きにされるくらいならばと別にいいと言ったら罵詈雑言を浴びせたあとに全員いなくなった。
?月
#/_
?月 雨、まだ嵐が続いている。
昨日、陽炎が血塗れで部屋に連れてこられた。
私が逆らった罰にだと、ほかの陽炎型の娘達は陽炎が庇ったから無事だったらしいけど、陽炎は呼吸も危うくて今にも死んでしまいそうだった。
私のせいで。
アイツ達は私の前に深海棲艦の青い血に濡れた黒い肉を放ると、それを食って裸で土下座をすれば陽炎を助けてやると、言ってきた。
深海棲艦の肉を食べてどうなるのかは分からないけど、陽炎が死ぬのはダメだ。
そう思って直ぐにその黒い肉塊を口に入れたけど、入れた瞬間に、体が……いやもっと奥の私の……ナニカが悲鳴をあげた。
身体中が痙攣して、喉が悲鳴をあげて戻しそうになるのを必死に耐えて、なんとか全て完食した。
口から零れた青い血を拭うことも出来ず、ビクビクと痙攣する私を見て溜飲を下げたのか、最後に私を蹴飛ばしてからアイツらが出ていった。
結局、気を失うまで、全身の神経が晒し出されたかのような痛みでのたうち回り、悲鳴をあげていた。
それから今日は、検査と称して血を沢山抜かれ、レントゲンや、変な椅子に座らせられてなにか被せられ、電気を流さたりした。
体の奥底の軋みは、治ってきている。
?月 晴れ、いい風
結局、数日間様々な検査を行った結果、最初こそおかしな反応が出ていたそうだが、軋みがなくなるのと一緒に異常も消えた。
それから、治療された陽炎が面会に来た
「入るわよ」
そう言って入ってきたのは、もうすっかり身体が治った陽炎だった。
あまりにも早い回復に少し驚いていると、陽炎が薄く笑った。
「ふふっ、ちゃんとした入渠の効果を見たことが無かったんだっけ?」
そんな彼女の笑顔に、私は罪悪感を覚えてしまう。
あのまま犯されるのは嫌だが、それでも私のせいで彼女が瀕死の重症を負ったことは事実なのだ。
それに、彼女はほかの姉妹達も守っている。
他の子娘たちの為にも、私と違って居なくなってはいけない娘なのだ。
そう考えていると、陽炎が躊躇いがちに言葉を発する。
「天津風……その、ゴメンね?」
「……え?」
「私のために深海棲艦の肉を食べさせられたんでしょう?」
そこまで聞き、愕然としてしまうと同時に、やっぱりとも思ってしまう。
あれだけの事をされても、その瞳には強い意思が宿っており、鏡で見た私のなんの意思も宿っていない空っぽのひとみとは違って、何がなんでも姉妹たちを守り通すという気持ちが伝わってくる。
見せつけられるその強さに、しかしそんな彼女の足枷にしかなれない私が惨めで、直ぐにでも折れて死んで消えたくなってしまう。
今もこうして、自分のことは気にせず此方を気にかけている。
それが、どうしようもなく苦しいのだ。
「……めて」
だからこそ、言葉に出してしまう。
「え?」
「私なんかに優しくしないで!!!!」
ハッとして陽炎を見れば、彼女は目を真ん丸に開き、驚愕の表情を浮かべているが、直ぐに柔らかい表情へと戻る。
「どうして?」
その問いかけは優しい口調で、しかし有無を言わせぬ強さもあった。
「……っゎ、私、なんかが居て、私のせいで、アナタは酷い目にあって…………っ」
先の言葉がなかなか出てこないで、視界だけかぼやけていく。
情けない、自分の心を言葉に出すことも出来無いで、惨めな自分に涙が滲む。
「わ、私なんかが……居なければ、アナタが、酷い目に合うことなて、無いかもしれないのにっ」
私さえ居なければ。
その言葉を口に出した時、頬に衝撃を感じる。そして顔を上げると陽炎がこちらを抱きしめてくる。
「天津風「自分さえ居なければ」っていう考えは辞めなさい」
抱きしめる力が強まる。
「私が姉妹みんなを守っている理由、聞いてくれる?」
少し悲しげで、普段の彼女からは感じられない弱々しい声が横から聞こえてくる。
「私、ここではそれなりに古参に入るんだけどね、あの男は前からこんな人質みたいなことをしていたの」
「その人質、天津風の前の、ね……その娘は雪風って名前の妹でね、雪風は元気で明るくて、人質にされても暗い顔は一切見せないような子だったわ」
「でも、その心の中では今のアナタと同じようなことを考えていたのかもしれない。雪風は自殺してしまったの」
「当然、悲しかった。妹が亡くなる、その苦しみは艦ではなく人の体を持って初めてのことだったわ……」
「あの苦しみをもう味わいたくない、だから貴方達のために頑張っているのよ?」
そう言って一際強く抱き締めたあと、離れていく陽炎。
「あっ!それと、あなた達に姉妹を亡くす痛みは味わって欲しくないから、私も死ぬつもりは毛頭ないから安心して、ね?……んーまあいいか」
おちゃめに笑った後、少し考える素振りをした彼女は唐突にリボンを解き始めたかと思うと、私の手に巻いてきた。
「はいこれ、お守りに持っておきなさい、貴女が足枷になっているって言っていたけど、貴方達の偵察任務のおかげで最近は今までの5割増しで任務が楽になっているのよ?今まで事前情報なんて本当になかったんだから……」
「わかっ……た……」
"役に立っている" お世辞かもしれないし、嘘かもしれない。でも、その言葉で少しだけ心が軽くなった気がした。
「よろしい!んー、まだ目が暗いけど、さっきまでよりは増しね……それじゃあリボン大切にしてよ?」
その言葉で、手に巻かれたリボンを強く握りしめて胸にだく。
陽炎がくれたリボン、絶対に無くさないようにしよう。
「分かった……一生、いえ、死んでも、絶対に大切にする」
一生懸命笑顔を浮かべ、陽炎へと宣言する。
絶対に無くさないと。大切にすると。
ただ、頷いた陽炎は少しだけ顔を引き攣らせていた。怪我が治り切っていなかったのかもしれない。
こんな状況だから、少し依存したり想いが重くても変じゃないよ……むしろこんなもんじゃないかな……と思って書きました。主人公はヤンデレじゃないので、ただひたすら重いだけです。
あと、もっと怒鳴らせて、暴れさせて、陽炎に宥められるのも書いたけど陽炎のお姉ちゃん力ならそんなことさせる暇もなく治められると思ってボツにしました(小並感)
それからそれから、陽炎と天津風のイチャイチャ、個人的にすっごく、かなり、めちゃくちゃ見たいけど無いのが悲しい……。誰か書いてください。
まだ書きたい話の前段階なだけでこの小説はほのぼの路線予定です(たぶん)。
辛い話は土台の部分だけやで!(たぶん)
もっと辛いことが主人公には来るかもだけどほのぼの路線です(たぶん)。
おかしい、天津風になって艦娘達(島風とか)とキャッキャウフフさせるつもりで書き始めたのに。