~アニア村~湯煙オーバーロード   作:塩もみシラス

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蒼の薔薇参戦?

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▽リ・エスティーゼ王国。ラナーの部屋▽

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ガガーラン

「たく。王女様はあたしら呼んでおいて待たせるってどういうつもりだよ」

ティナ

「仕方ない。王族は色々と面倒・・・」

ティア

「ガガーランは脳筋だし仕方ない」

ガガーラン

「脳筋ってのは否定はしないけどよ。王女様つっても第三だろぉ?そんなに忙しいもんかね。忙しいなら別の日に呼べばいいのによ」

クライム

「申し訳ありません。先ほどヤルダバオトの件の事後処理の話でザナック王子とレエブン侯に呼び止められてましたのでもう少し掛かるかと・・・」

ガガーラン

「そうか。なら暇だしあたしとやるか?」

クライム

「え、遠慮させてもらいます・・・」

ラキュース

「仕方ないわね。ラナーの様子を見に行ってくるからガガーラン、もう少し大人しく待っていて頂戴」

ガガーラン

「冗談だよ冗談。そこまでしなくても大人しく待つって」

ラキュース

「私もガガーランがそこまで脳筋とは思ってないわ。ただ、ヤルダバオト関係の話であれば少しでも聞いておきたいのよ。クライム案内頼めるかしら?」

クライム

「そう言う事であれば、ご案内します」

ティア

「早く戻ってくる事を期待。でないとガガーランがどうなるか保障しない」

ガガーラン

「暴れねぇって」

ティナ

「死ぬ。イビルアイの手で」

イビルアイ

「私を勝手に話に混ぜるんじゃない。殺すぞガガーラン」

ガガーラン

「ノリノリじゃねぇかよ!」

ラキュース

「はいはい。それじゃ行ってくるわね」

 ラキュースはそう言ってクライムを連れて部屋を出ていく。

ガガーラン

「暇だな。何かおもしれぇ話ないか?」

イビルアイ

「ならば、モモン様とヤルダバオトの話を!」

ガガーラン

「パス。もう耳タコだわ」

ティア

「私も」

ティナ

「同じく」

イビルアイ

「ぐぬぬ・・・」

 ヤルダバオトの一件以降、蒼の薔薇が他の冒険者にある事で尋ねられる事が増えた。

いや、急増したと言っていい。それが、アダマンタイト冒険者モモンとヤルダバオトの一戦についてだ。

 モモンの実力を聞こうとしたのか、今尚健在してると思われるヤルダバオトの力を聞こうとしたのかは分からない。が、兎に角急増したのだ。

 しかし、その戦闘を直に見たのはイビルアイのみ。聞かれるたびに喜々として話し始めるイビルアイを仲間たちは何度も見てるし聞いてるのだ。

ティア

「面白い話か不明。だけど1つあった」

ガガーラン

「一体どんな話なんだ?」

ティア

「王国と法国の国境付近・・・というよりド真ん中にある村の話」

ガガーラン

「ああ、あのちっせー村か。温泉がある以外特に何もない村な」

ティナ

「ん。温泉は悪くない。が、王国と法国の板ばさみに遭い結局どちらの国にも属さないと言った為、何か起きてもどちらの国からも助けてもらえず村として大きくなれなかった所」

ガガーラン

「道は整備されてねぇどころか荒れ放題だし、モンスターも道中よく出くわすわで温泉の為だけに行くには割りにあわねぇと思ってたが、両方の国からハブられてたのかよ」

ティナ

「ただ依頼で近くまで行く時は最高。温泉はいい。国境付近というのも気にならない」

ガガーラン

「んで、その村がどうしたって?」

ティア

「新しい温泉ができたみたい。村興しの一環らしい」

ガガーラン

「どんな温泉だよ?」

ティア

「子宝に恵まれる湯。シーケローネーの湯」

イビルアイ

「ん?シーケローネー・・・」

ティナ

「何か知ってる?」

ティア

「ちなみに、私はこれ以上知らない」

イビルアイ

「昔何かの本で見たな・・・。確かシーケ・・・ローネーの卵・・・だったかな」

ガガーラン

「なんかおっかねぇモンスターの卵か?」

イビルアイ

「んーちょっと待て・・・・・・・・・。思い出してきた。確かマジックアイテムだ、遥か大昔にあった国の」

ティア

「どのくらい昔の話?」

イビルアイ

「王国も帝国も法国すら存在してなかった頃。この辺一体を支配してた人間の国で名はアポロニア大帝国だ。多分名前くらいは聞いたことあるんじゃないか?」

ティナ

「私は知らない」

ティア

「右に同じ」

ガガーラン

「あたしはあるぜ。つっても原因不明で勝手に滅んでその後に王国とか他の国々が出来たって程度だが」

ティア

「なんかショック・・・」

ティナ

「ありえない」

ガガーラン

「なんでだよ!」

イビルアイ

「話を続けるぞ?私が読んだその本によれば、その原因がシーケローネーの卵と国王にあったらしい」

ガガーラン

「その国王さんがそのマジックアイテムで自国をぶっ壊したりしたのか?」

イビルアイ

「違うな」

ティア

「単純思考」

ティナ

「やはり脳筋」

ガガーラン

「んだとぉ!」

イビルアイ

「知らないなら知らないでいいから話を聞け!まずそのシーケローネーの卵だが、その能力は『子供を孕ませる』というものだ」

ガガーラン

「だめだ。さらに分からん。なんで子供を身篭るアイテムで国が崩壊すんだよ」

イビルアイ

「国王はなそのアイテムを軍事転用することを思いつきそれを実行したんだと」

ティナ

「まさか・・・」

ガガーラン

「分かったのか!」

ティア

「うそに決まってる」

ティナ

「当たり」

ガガーラン

「・・・」

イビルアイ

「とりあえず話を全部聞け!」

 イビルアイの言葉に少し違和感を感じたガガーラン達はイビルアイを見る。

 ただの世間話程度の話だったはずだが、イビルアイには妙な真剣さを感じふざけるのをやめる。

イビルアイ

「その軍事転用というのがな国中の女・・・、14を過ぎたばかりの子供から年寄りまでを見境なく攫い集め、シーケローネーの卵を使い子供を生ませ続けさせ、子供を軍の兵士に育てる計画だった」

 3人は苦虫を噛み潰したような面持ちになっていた。

 それも仕方ない事。なぜなら蒼の薔薇である彼女らはみな女性なのだから。

イビルアイ

「年の若い娘は体が出来上がってない者も多く流産する事も珍しくない。流産の果てに母子共に命を落とす者もいて、また老婆に至っても同じく出産に耐え切れなくなりみな命を落とした。国の子供の数だけは死んだ者の数を圧倒するほどだが、国民すべての怒りを買い王族とその国の首都は自国民によって滅ぼされシーケローネーの卵も破壊されたらしいと言うのがその本には書かれていたな」

 とり敢えず話しは終わった頃合いと見計らいガガーランは口を開く。

ガガーラン

「うへっ。そりゃ国も滅ぶわなぁ。攫われたのが自分だったと思うと吐き気がするわ」

ティナ

「ガガーランは見た目が男。だから大丈夫」

ガガーラン

「ん、よしそれは決闘の申し込みだなコラァ!」

ティア

「2人とも待つ。まだ話は終わってないたぶん」

イビルアイ

「まぁ、その話が今回の新しい温泉と繋がりがあるかどうかなんだが・・・」

ガガーラン

「ああ、そういやそういう話だったな忘れてたぜ」

ティナ

「やはりのう・・・」

イビルアイ

「そのへんにしておけ。もしシーケローネーの卵と関係してるなら真面目に笑い話ではすまん」

ティア

「国が滅んだ程のアイテム。これ私達の出番?」

ティナ

「でも依頼じゃないから、ただ働き・・・」

ガガーラン

「だけどよぉ。ソレ壊されたんじゃないのか?」

ティア

「残骸から復元したとか、ダミーだったとかも考えられる」

ガガーラン

「それもそうか・・・」

イビルアイ

「もしシーケローネーの卵がまだあったら他の国もほっとかないだろうし、軍事目的で使う者もまた出てくるだろう。私は一人だとしても調査してくるつもりだ」

ガガーラン

「そんな使い方したら、その国が勝手に滅ぶだけじゃないか?ほっとこうぜ、冒険者は国のうんぬんとは本来無関係なもんだろ?」

ティア

「甘い。国が滅ばない小規模で使うだけでも高い価値がある。例えば法国にでも渡れば他人事じゃなくなる」

 法国は人間主体の国家でそれ以外の亜人、アンデッド、悪魔…etc.を敵と見なしている。つまり、蒼の薔薇の一人イビルアイも命を狙われているのだ。

仲間の命を狙われてるのだから当然他人ごとでは終わらない。法国には神人という強者が血筋として存在してるのだから。

ティナ

「もし、人間以外にも使えるならさらに危険・・・」

イビルアイ

「その本に書かれていた事を信じるなら可能らしい。種族・動物・性別問わず」

ガガーラン

「性別?どういう事だ普通に男と女じゃないのか?」

ティア

「ガガーランは男女と言われるし、ガガーラン専用」

ティナ

「でなければ同姓でも可能という事だと思う」

イビルアイ

「後者だ。もっと言えば男と女の組み合わせでも男の方に孕ませる事も可能らしい」

(さらにもっと言えば種族が違う者同士でも可能で、アンデッドと人間も可能らしい~♪)

ティア

「つまりガガーランでも使えると」

ガガーラン

「てめぇ次の鍛錬で泣かしてやるかんな!」

イビルアイ

(つまり、それは私でもモモン様の子が産めると言う事。それなら妾の1人や2人等も要らないし、私がモモン様を独占できる。すばらしぃ~!む、待てよ。モモン様と私の子は人間?アンデッド?ハーフ?いや、それ以前に私に赤子の世話ができるのか?アレは出るのだろうか・・・?)

ティア

「本気の戦闘はいい経験になる。楽しみ(余裕の顔)」

ティナ

「2人は仲がいい。いっそ二人の子を産むと良い」

ガガーラン

「お断りだ!」

 ガガーラン達が言い合いを始めてる中イビルアイはおもむろに服の上から自分の胸を触る。

 平だった。僅かな膨らみを感じるもののとてもアレが出るようには思えなかった。

 服によって抑えられてそう感じるだけかもと思い服を脱ぐが、不安は解消されず仲間に聞いてみることにした。

イビルアイ

「なぁ、ガガーラン」

イビルアイは頬を赤くしながら、手で僅かな膨らみを両手で上げて寄せる事で胸を強調する。

ガガーラン

「どうした上半身裸で・・・」

イビルアイ

「わ、私でも乳はでるだろうか・・・?」

ガガーラン

「・・・・・・・・・は?」

 その部屋の時間が凍り付いたような気がした。

 ガガーランは意味が分からず、何を言っていいかも分からず固まった。

 その空気を打ち破ったのは盗賊の2人組だった。

ティア

「無理・・・」

ティナ

「出るような物が入ってるように見えない」

 そう言うとイビルアイに見せつけるように上の服を脱ぎ始め、イビルアイのように両手で強調して見せる。

ティア

「これくらいは無いと。粗品程度じゃ無理」

腕の上に乗るそのボリュームはイビルアイとは月とスッポンであった。

イビルアイ

「お前ら着やせするタイプか!見せびらかしおって~!誰が粗品か~~~!」

 そこに張り合うように今度はガガーランが遅れて服を脱ぎ始める。

ガガーラン

「こう見えてなぁ。あたしだって結構あるんだぜ?」

 メジャーか何かで胸囲を図れば確かに圧倒的だろう。その隆起した胸は。

ティナ

「ガガーラン・・・」

ガガーラン

「ん?」

ティア

「それはただの筋肉・・・」

 その時戦争が始まってしまった。

 アダマンタイト級の冒険者同士の争いはどれだけくだらない理由で始まろうと、最高峰の戦闘力を誇り見事と言わざるを得ない動きをみせる。

 が、すぐにその争いは終わる。

クライム

「失礼します。みなさんお待たせし・・・ま・・・?」

 再び部屋が凍り付く。今度は戻って来たラキュース達を含めて。

ラナー

「えっと。…郷に入れば郷に従えと言いますし。私も脱いだほうが、いいのかしら?」

 そう言いながら服に手をかけるラナー。言葉こそ迷いを感じるものの、その行動には迷いというか恥じらいを感じられなかった。

 が、すぐさまラキュースが反応する。

ラキュース

「脱いだらダメに決まってるでしょう!クライムは早く部屋を出て行って下さい」

クライム

「は、はい!」

 顔を・・・、いや耳まで赤くしたクライムが速足で退室していく。

その姿をラナーは真顔でクライムを目で追いながら内心ニヤついていたが、クライムが視界から消えるとすぐさまいつもの調子に戻る。

ラナー

「クライムを悩殺するチャンスだと思ったのですが、ちょっと残念・・・」

ラキュース

「そこっ!残念がらない!あと何があったのか説明を」

ガガーラン

「いや、イビルアイが・・・」

イビルアイ

「・・・・・・・・・」

イビルアイに皆の視線が集まる。

イビルアイは何をどう説明していいか分からず、頭の中はいまだ混乱していた。

イビルアイ

「ラキュース」

ラキュース

「何?」

 意を決して口を開いたイビルアイは最初の疑問から説明しようとするが・・・。

イビルアイ

「・・・・・・私でも乳はでると思うか?」

 しくじる。

ラキュース

「・・・・・・・・・は?」

イビルアイ

「すまない、今のは忘れてくれ・・・」

 人差し指を頬に当て「んー?」と状況を観察していたラナーはイビルアイの胸元を見てなんとなく状況を理解しわざとそれを口にする。

ラナー

「粗品?」

 未だ皆が凍り付いていた中発せられた言葉が、イビルアイの胸にに刺さり部屋の隅でいじけ始めた。

 皆の視線がラナーに集まる。

ラナー

「あ・・・私、口に出しちゃってました?」

 ラキュースはため息と共に肩を竦めた。


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